平面をベクトルで表す|2本の方向ベクトルから平面を作る

数学
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はじめに

前の記事では、直線をベクトルで表す方法について考えました。直線上の1点を \(\boldsymbol{p}\)、方向ベクトルを \(\boldsymbol{a}\) とすると、

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+t\boldsymbol{a}
$$

と表すことができました。これは、「点 \(P\) まで移動して、そこから1つの方向へ自由に動く」という式でした。

では、1つではなく2つの方向へ自由に動けるようにすると、何ができるのでしょうか。

1つの方向へ自由に動くと直線ができ、独立した2つの方向へ自由に動くと平面ができます。

この記事では、2本の方向ベクトルから平面がどのように作られるのかを考え、平面のベクトル方程式や媒介変数表示まで見ていきます。

▶ 前回の記事はこちら
直線をベクトルで表す|ベクトル方程式と媒介変数
はじめに前の記事では、「基底」について考えました。その中で、1本のベクトルを何倍かすると、そのベクトルと同じ方向へ自由に進めることを見てきました。では、この考え方を使って、直線そのものをベクトルで表すことはできるのでしょうか。実は、直線をベ...

1.まずは原点を通る平面を考える

最初に、原点を通る平面から考えてみましょう。2本のベクトル

$$
\boldsymbol{a}
=
\begin{pmatrix}
a_1\\
a_2\\
a_3
\end{pmatrix},
\quad
\boldsymbol{b}
=
\begin{pmatrix}
b_1\\
b_2\\
b_3
\end{pmatrix}
$$

があるとします。

前の記事では、1本のベクトル \(\boldsymbol{a}\) を実数 \(s\) 倍して \(s\boldsymbol{a}\) とすることで、\(\boldsymbol{a}\) の方向へ自由に動くことができました。

今度は、\(\boldsymbol{a}\) だけでなく \(\boldsymbol{b}\) の方向にも動けるようにしてみましょう。つまり、\(s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}\) とします。

\(s\) と \(t\) をそれぞれ自由に変えれば、\(\boldsymbol{a}\) の方向にも \(\boldsymbol{b}\) の方向にも自由に動くことができます。その結果、

$$
\boldsymbol{x}=s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

と表される点 \(\boldsymbol{x}\) は、原点を通る1枚の平面上を動きます。

2.なぜ2本のベクトルから平面ができるのか?

ここが今回の記事で最も大切なところです。

まず、\(\boldsymbol{a}\) だけを使って \(s\boldsymbol{a}\) とすると、動けるのは1つの方向だけです。そのため、できるのは直線です。

一方、\(s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}\) では、\(\boldsymbol{a}\) の方向へ \(s\) 倍、\(\boldsymbol{b}\) の方向へ \(t\) 倍だけ動くことができます。

たとえば、まず \(s\boldsymbol{a}\) だけ進み、そこから \(t\boldsymbol{b}\) だけ進むと考えてみましょう。\(\boldsymbol{a}\) と \(\boldsymbol{b}\) が異なる2つの方向を持っていれば、2つの方向を組み合わせることで平面上のさまざまな場所へ移動できます。

2本の方向ベクトルから平面を作る

図では、原点から \(\boldsymbol{a}\) と \(\boldsymbol{b}\) が伸びています。\(s\) と \(t\) を変えることで、この2本が張る平面全体を動くことができます。

これは以前の記事で考えた線形結合そのものです。\(s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}\) という線形結合によって作られるベクトル全体が、1枚の平面を作っているわけです。

平面は、2本のベクトルの線形結合によって作ることができます。

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3.ただし、2本あれば何でもよいわけではない

ここで注意したいことがあります。2本のベクトルがあれば、必ず平面を作れるわけではありません。

たとえば、\(\boldsymbol{b}=2\boldsymbol{a}\) だったとします。このとき、

$$
s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
=
s\boldsymbol{a}+2t\boldsymbol{a}
=
(s+2t)\boldsymbol{a}
$$

となります。

結局、どれだけ \(s\) と \(t\) を変えても、\(\boldsymbol{a}\) と同じ方向にしか動くことができません。これでは平面ではなく、1本の直線しか作れません。

つまり、平面を作るには、2本のベクトルが線形独立である必要があります。

線形独立なら平面、線形従属なら直線

左では、\(\boldsymbol{a}\) と \(\boldsymbol{b}\) が異なる方向を向いているため、2つの方向へ動くことができます。そのため、線形結合によって平面を作ることができます。

一方、右では \(\boldsymbol{b}\) が \(\boldsymbol{a}\) の定数倍になっています。新しい方向が増えていないため、線形結合を作っても直線のままです。

2本の方向ベクトルが線形独立なら平面を作れます。線形従属なら、新しい方向が増えないため直線のままです。

ここで、これまでの記事で考えてきた「新しい方向」という考え方が、そのまま平面につながります。

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4.原点を通らない平面はどうすればいい?

ここまでは、原点を通る平面を考えてきました。では、原点を通らない平面はどうすればよいのでしょうか。

考え方は、前の記事で直線を扱ったときとまったく同じです。平面上にある1点の位置ベクトルを

$$
\boldsymbol{p}
=
\begin{pmatrix}
p_1\\
p_2\\
p_3
\end{pmatrix}
$$

とします。そして、平面内の2つの方向を表すベクトルを \(\boldsymbol{a}\)、\(\boldsymbol{b}\) とします。

まず \(\boldsymbol{p}\) の位置まで移動し、そこから \(\boldsymbol{a}\) と \(\boldsymbol{b}\) の方向へ自由に動けば、

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

となります。これが、平面をベクトルで表す基本的な形です。

直線では \(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+t\boldsymbol{a}\) でした。平面では方向ベクトルが1本増えて、

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

となります。

つまり、直線も平面も考え方は同じです。

「出発点まで移動して、そこから自由に動ける方向を足す」

と考えればよいわけです。

5.これが平面のベクトル方程式

改めて式を見てみましょう。

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

ここで、

  • \(\boldsymbol{x}\):平面上を動く点の位置ベクトル
  • \(\boldsymbol{p}\):平面上にある1点の位置ベクトル
  • \(\boldsymbol{a},\ \boldsymbol{b}\):平面内の2本の方向ベクトル
  • \(s,\ t\):実数の媒介変数

です。この式によって、平面上のすべての点を表すことができます。

平面のベクトル方程式は、「出発点+2つの方向への移動」と考えると理解しやすくなります。

直線と並べてみると、違いはさらに分かりやすくなります。

直線: \(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+t\boldsymbol{a}\)

平面: \(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}\)

直線では媒介変数が1つ、平面では媒介変数が2つあります。この自由に変えられる数字の数が、動ける方向の数に対応しています。

6.具体的な平面をベクトル方程式で表してみる

具体例で考えてみましょう。点 \(P(1,\ 2,\ 3)\) を通り、2本の方向ベクトルが

$$
\boldsymbol{a}
=
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
1
\end{pmatrix},
\quad
\boldsymbol{b}
=
\begin{pmatrix}
0\\
1\\
1
\end{pmatrix}
$$

である平面を考えます。点 \(P\) の位置ベクトルは、

$$
\boldsymbol{p}
=
\begin{pmatrix}
1\\
2\\
3
\end{pmatrix}
$$

です。したがって、平面のベクトル方程式は、

$$
\boldsymbol{x}
=
\begin{pmatrix}
1\\
2\\
3
\end{pmatrix}
+
s
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
1
\end{pmatrix}
+
t
\begin{pmatrix}
0\\
1\\
1
\end{pmatrix}
$$

となります。

たとえば \(s=0,\ t=0\) なら \(\boldsymbol{x}=(1,\ 2,\ 3)^T\) なので、点 \(P\) そのものです。

\(s=1,\ t=0\) なら \(\boldsymbol{x}=(2,\ 2,\ 4)^T\) となります。これは、\(P\) から \(\boldsymbol{a}\) の方向へ1だけ進んだ点です。

一方、\(s=0,\ t=1\) なら \(\boldsymbol{x}=(1,\ 3,\ 4)^T\) となり、今度は \(\boldsymbol{b}\) の方向へ1だけ進んだ点になります。さらに \(s=1,\ t=1\) なら \(\boldsymbol{x}=(2,\ 3,\ 5)^T\) です。

\(s\) と \(t\) を自由に変えることで、2つの方向を組み合わせながら平面全体を動くことができます。

7.成分ごとに書くと媒介変数表示になる

では、

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

を成分ごとに見てみましょう。

$$
\boldsymbol{x}
=
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z
\end{pmatrix},
\quad
\boldsymbol{p}
=
\begin{pmatrix}
p_1\\
p_2\\
p_3
\end{pmatrix}
$$

とし、

$$
\boldsymbol{a}
=
\begin{pmatrix}
a_1\\
a_2\\
a_3
\end{pmatrix},
\quad
\boldsymbol{b}
=
\begin{pmatrix}
b_1\\
b_2\\
b_3
\end{pmatrix}
$$

とすると、

$$
\begin{pmatrix}
x\\
y\\
z
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
p_1\\
p_2\\
p_3
\end{pmatrix}
+
s
\begin{pmatrix}
a_1\\
a_2\\
a_3
\end{pmatrix}
+
t
\begin{pmatrix}
b_1\\
b_2\\
b_3
\end{pmatrix}
$$

です。成分ごとに比べれば、

$$
\begin{cases}
x=p_1+a_1s+b_1t\\
y=p_2+a_2s+b_2t\\
z=p_3+a_3s+b_3t
\end{cases}
$$

となります。これが平面の媒介変数表示です。

ベクトル方程式と媒介変数表示は別の平面を表しているわけではありません。直線のときと同じように、同じ平面をベクトルでまとめて書くか、成分ごとに書くかの違いです。

8.具体例を媒介変数表示にしてみる

先ほどの、

$$
\boldsymbol{x}
=
\begin{pmatrix}
1\\
2\\
3
\end{pmatrix}
+
s
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
1
\end{pmatrix}
+
t
\begin{pmatrix}
0\\
1\\
1
\end{pmatrix}
$$

を成分ごとに書いてみましょう。すると、

$$
\begin{cases}
x=1+s\\
y=2+t\\
z=3+s+t
\end{cases}
$$

となります。これが、この平面の媒介変数表示です。

たとえば \(s=1,\ t=0\) なら \((x,\ y,\ z)=(2,\ 2,\ 4)\)、\(s=0,\ t=1\) なら \((x,\ y,\ z)=(1,\ 3,\ 4)\) となります。さらに \(s=1,\ t=1\) なら \((x,\ y,\ z)=(2,\ 3,\ 5)\) です。

2つの媒介変数 \(s,\ t\) を自由に変えることで、平面上の位置を指定できることが分かります。

9.いつもの平面の方程式にも変換できる

3次元空間の平面は、

$$
Ax+By+Cz=D
$$

という形で表すこともできます。

先ほどの媒介変数表示

$$
\begin{cases}
x=1+s\\
y=2+t\\
z=3+s+t
\end{cases}
$$

から、この形を作ってみましょう。

1つ目と2つ目の式から、\(s=x-1,\ t=y-2\) です。これを3つ目の式に代入すると、

$$
z=3+(x-1)+(y-2)
$$

となります。整理すると \(z=x+y\) なので、

$$
x+y-z=0
$$

となります。

つまり、

$$
\boldsymbol{x}
=
\begin{pmatrix}
1\\
2\\
3
\end{pmatrix}
+
s
\begin{pmatrix}
1\\
0\\
1
\end{pmatrix}
+
t
\begin{pmatrix}
0\\
1\\
1
\end{pmatrix}
$$

というベクトル方程式と \(x+y-z=0\) という平面の方程式は、同じ平面を表しています。

10.直線と平面を並べると「次元」が見えてくる

ここまでの内容を、直線と平面で比べてみましょう。

直線は、

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+t\boldsymbol{a}
$$

でした。自由に変えられる媒介変数は \(t\) の1つなので、1つの方向へ動くことができます。

一方、平面は、

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

です。自由に変えられる媒介変数は \(s,\ t\) の2つなので、独立した2つの方向へ動くことができます。

点・直線・平面と自由度の関係

この関係を整理すると、

  • 点:自由に動ける方向が0個
  • 直線:自由に動ける方向が1個
  • 平面:自由に動ける方向が2個

となります。これは、以前の記事で扱った次元の考え方そのものです。

直線が1次元、平面が2次元なのは、「独立して自由に動ける方向の数」がそれぞれ1つ、2つだからです。

ここまで見ると、「基底の本数=空間の次元」という話ともつながってきます。

11.平面を作る2本のベクトルは1組に決まらない

直線の方向ベクトルが1つに決まらなかったように、平面を作る2本の方向ベクトルも1組に決まるわけではありません。

たとえば、\(\boldsymbol{a}\) と \(\boldsymbol{b}\) が平面を作っているとします。このとき、\(\boldsymbol{c}=\boldsymbol{a}+\boldsymbol{b}\) も同じ平面内にあるベクトルです。

そのため、条件を満たせば \(\boldsymbol{a},\ \boldsymbol{b}\) の代わりに、\(\boldsymbol{a},\ \boldsymbol{c}\) を使って同じ平面を表すこともできます。

大切なのは、どの2本を選ぶかではありません。

その2本が線形独立で、平面内の2つの独立した方向を作っていることです。

これは、以前の記事で考えた「基底は1組に決まらない」という話と同じです。

12.ここまでの話は「アフィン部分空間」につながる

ここまで、直線を

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+t\boldsymbol{a}
$$

平面を

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

と表してきました。どちらも、「ある点 \(\boldsymbol{p}\) を出発点にして、いくつかの方向へ自由に動く」という同じ構造になっています。

原点を通る場合には、\(t\boldsymbol{a}\) や \(s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}\) のような線形結合だけで表せます。一方、原点を通らない場合には、そこへ \(\boldsymbol{p}\) を足して位置をずらしています。

このように、部分空間を平行移動したものはアフィン部分空間と呼ばれます。今すぐこの言葉を覚える必要はありませんが、直線や平面のベクトル方程式は、より一般的な線形代数の考え方へそのままつながっています。

ここまで、直線や平面を「どの方向へ動けるか」という方向ベクトルを使って表してきました。

では逆に、直線や平面に垂直な方向が分かれば、そこから直線や平面を表すことはできるのでしょうか。

実は、ここで内積が登場します。次の記事では、直線や平面に垂直な法線ベクトルを使い、内積から直線・平面の方程式がどのように作られるのかを見ていきます。

▶ 法線ベクトルとは何か?|内積で直線・平面を表す
法線ベクトルとは何か?|内積で直線・平面を表す
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まとめ

平面をベクトルで表すときに必要なのは、平面上の1点と、平面内の独立した2本の方向ベクトルです。

平面上の1点の位置ベクトルを \(\boldsymbol{p}\)、2本の方向ベクトルを \(\boldsymbol{a},\ \boldsymbol{b}\) とすると、

$$
\boldsymbol{x}=\boldsymbol{p}+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}
$$

と表すことができます。これは、「出発点 \(\boldsymbol{p}\) まで移動して、そこから \(\boldsymbol{a}\) と \(\boldsymbol{b}\) の2つの方向へ自由に動く」と考えることができます。

ただし、\(\boldsymbol{a}\) と \(\boldsymbol{b}\) が線形従属だと、新しい方向が増えないため平面にはなりません。平面を作るためには、2本の方向ベクトルが線形独立である必要があります。

また、成分ごとに書けば、

$$
\begin{cases}
x=p_1+a_1s+b_1t\\
y=p_2+a_2s+b_2t\\
z=p_3+a_3s+b_3t
\end{cases}
$$

という媒介変数表示になります。ベクトル方程式と媒介変数表示は別物ではなく、同じ平面を違う形で表したものです。

直線では自由に動ける方向が1つ、平面では2つです。

「何本の独立した方向へ自由に動けるのか」

と考えると、直線・平面・次元・基底・線形独立といった、これまで学んできた内容が1つにつながって見えてきます。

▶ ベクトル方程式と媒介変数についてもっと知りたい

そう感じた人には、ベクトル方程式と媒介変数を基礎から解説してくれる本もおすすめです。

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