行列で連立方程式を解く|行基本変形と掃き出し法をわかりやすく解説

数学
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はじめに

これまで、行列や行列式、逆行列などについて考えてきました。行列が登場する代表的な場面のひとつが、連立方程式です。

たとえば、

$$
\begin{cases}
x+2y=5\\
3x+4y=11
\end{cases}
$$

という連立方程式を考えてみましょう。

中学校や高校では、代入法や加減法を使って解いてきました。しかし、連立方程式は行列を使って、

$$
\begin{pmatrix}
1&2\\
3&4
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x\\
y
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
5\\
11
\end{pmatrix}
$$

と表すこともできます。

さらに、行列に対して行基本変形という操作を繰り返すことで、連立方程式を機械的に解いていくことができます。これが掃き出し法です。

掃き出し法とは、連立方程式を行列で表し、行基本変形によって未知数を順番に消去して解を求める方法です。

この記事では、連立方程式を行列で表すところから始めて、行基本変形とは何なのか、そして掃き出し法でどのように解を求めるのかを順番に見ていきます。

1.連立方程式を行列で表す

まず、

$$
\begin{cases}
a_{11}x+a_{12}y=b_1\\
a_{21}x+a_{22}y=b_2
\end{cases}
$$

という2元連立一次方程式を考えます。

左辺の係数を並べると、

$$
A=
\begin{pmatrix}
a_{11}&a_{12}\\
a_{21}&a_{22}
\end{pmatrix}
$$

という行列ができます。

未知数と右辺も、それぞれ

$$
\boldsymbol{x}
=
\begin{pmatrix}
x\\
y
\end{pmatrix},
\quad
\boldsymbol{b}
=
\begin{pmatrix}
b_1\\
b_2
\end{pmatrix}
$$

とベクトルで表してみましょう。

すると、もとの連立方程式は、

$$
A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b}
$$

と書くことができます。

実際に行列を掛けると、

$$
\begin{pmatrix}
a_{11}&a_{12}\\
a_{21}&a_{22}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x\\
y
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a_{11}x+a_{12}y\\
a_{21}x+a_{22}y
\end{pmatrix}
$$

なので、もとの2本の方程式と同じものを表しています。

連立一次方程式は、行列を使うと \(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b}\) というひとつの式にまとめることができます。

2.係数と右辺だけを取り出す

連立方程式を解くとき、毎回 \(x\) や \(y\) を書く必要はありません。たとえば、

$$
\begin{cases}
x+2y=5\\
3x+4y=11
\end{cases}
$$

なら、係数だけを取り出した

$$
\begin{pmatrix}
1&2\\
3&4
\end{pmatrix}
$$

を係数行列といいます。

さらに、右辺まで一緒に並べた

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
3&4&11
\end{array}
\right)
$$

を拡大係数行列といいます。縦線の左側が未知数 \(x,\ y\) の係数、右側が方程式の右辺です。

つまり、

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
3&4&11
\end{array}
\right)
$$

を見るだけで、

$$
\begin{cases}
x+2y=5\\
3x+4y=11
\end{cases}
$$

という連立方程式を復元できます。これなら、未知数を毎回書かなくても、数字だけを操作して連立方程式を解くことができます。

3.行列の「行」を変形してもいいの?

ここで疑問が出てきます。なぜ行列の行を勝手に変形しても、連立方程式の解は変わらないのでしょうか。

実は、行列の行は、それぞれ連立方程式の1本の式に対応しています。先ほどの

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
3&4&11
\end{array}
\right)
$$

では、第1行が \(x+2y=5\)、第2行が \(3x+4y=11\) を表しています。

たとえば、第2式から第1式の3倍を引いてみましょう。

$$
(3x+4y)-3(x+2y)=11-15
$$

なので、

$$
-2y=-4
$$

となります。これは、中学校で学んだ加減法そのものです。

行列では、同じ操作を

$$
R_2\longrightarrow R_2-3R_1
$$

と表します。

すると、

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
3&4&11
\end{array}
\right)
\longrightarrow
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
0&-2&-4
\end{array}
\right)
$$

となります。

行基本変形は、連立方程式に対して行っていた加減法などの操作を、行列の行に対して行っているだけです。

だから、適切な行基本変形を行っても、もとの連立方程式と同じ解をもつ方程式へ変形できます。

4.行基本変形は3種類だけ

行基本変形には、次の3種類があります。

① 2つの行を入れ替える

$$
R_i\longleftrightarrow R_j
$$

これは、連立方程式の順番を入れ替えることに対応しています。たとえば、

$$
\begin{cases}
x+y=3\\
2x-y=0
\end{cases}
$$

の上下を入れ替えても、解は変わりません。

② ある行を \(0\) でない数倍する

$$
R_i\longrightarrow kR_i
\quad(k\neq0)
$$

これは、方程式の両辺を同じ \(0\) でない数倍することに対応しています。たとえば \(x+y=3\) を2倍して \(2x+2y=6\) としても、表している条件は同じです。

③ ある行に別の行の定数倍を加える

$$
R_i\longrightarrow R_i+kR_j
$$

これは、連立方程式の加減法に対応しています。掃き出し法では、この3つの操作を組み合わせて行列を簡単な形へ変えていきます。

5.掃き出し法で実際に解いてみる

では、

$$
\begin{cases}
x+2y=5\\
3x+4y=11
\end{cases}
$$

を掃き出し法で解いてみましょう。

拡大係数行列は、

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
3&4&11
\end{array}
\right)
$$

です。

まず、第2行から第1行の3倍を引きます。

$$
R_2\longrightarrow R_2-3R_1
$$

すると、

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
0&-2&-4
\end{array}
\right)
$$

となります。

次に、第2行を \(-2\) で割ります。

$$
R_2\longrightarrow-\frac12R_2
$$

すると、

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&5\\
0&1&2
\end{array}
\right)
$$

です。

さらに、第1行から第2行の2倍を引きます。

$$
R_1\longrightarrow R_1-2R_2
$$

すると、

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&0&1\\
0&1&2
\end{array}
\right)
$$

となります。これは、

$$
\begin{cases}
x=1\\
y=2
\end{cases}
$$

を表しています。したがって、解は \(x=1,\ y=2\) です。

拡大係数行列が行基本変形によって単位行列へ近づいていく図

掃き出し法では、係数行列の部分をできるだけ単位行列に近い形へ変形することで、未知数の値を読み取れるようにします。

6.「階段形」にすると解が見えてくる

掃き出し法では、いきなり単位行列まで変形しなくても、まず階段形を作ることが重要です。たとえば、

$$
\left(
\begin{array}{ccc|c}
1&2&-1&3\\
0&1&4&2\\
0&0&1&5
\end{array}
\right)
$$

のように、下へ進むにつれて先頭の \(0\) でない成分が右へ移っていく形です。

この形では、下の式から順番に未知数を求めることができます。上の行列なら、第3行からまず \(z\) が求まり、その値を第2行へ代入して \(y\)、さらに第1行から \(x\) を求めることができます。

これは、連立方程式で行ってきた消去法を行列で整理したものです。さらに行基本変形を続けて、

$$
\left(
\begin{array}{ccc|c}
1&0&0&*\\
0&1&0&*\\
0&0&1&*
\end{array}
\right)
$$

のような形まで変形すれば、解をそのまま読み取ることができます。

7.3元連立方程式でも考え方は同じ

掃き出し法の便利なところは、未知数が増えても基本的な考え方が変わらないことです。たとえば、

$$
\begin{cases}
x+y+z=6\\
2x-y+z=3\\
x+2y-z=2
\end{cases}
$$

なら、拡大係数行列は

$$
\left(
\begin{array}{ccc|c}
1&1&1&6\\
2&-1&1&3\\
1&2&-1&2
\end{array}
\right)
$$

となります。

あとは2元の場合と同じように、行基本変形によって第1列、第2列、第3列の成分を順番に整理していきます。未知数が4個、5個と増えても、原理は同じです。

代入法や加減法では式を書く量が増えて複雑になりやすいですが、行列なら係数だけに注目して同じルールで機械的に計算できるのが大きな利点です。

8.掃き出し法をすると「解がない」ことも分かる

掃き出し法は、解を求めるだけの方法ではありません。連立方程式に解が存在するかどうかも見えてきます。

たとえば、行基本変形の途中で、

$$
\left(
\begin{array}{cc|c}
1&2&3\\
0&0&1
\end{array}
\right)
$$

となったとします。

第2行は、

$$
0x+0y=1
$$

つまり \(0=1\) を表しています。これは成立しません。

したがって、このような行が現れた場合、もとの連立方程式には解がありません。

9.解が1つに決まらない場合もある

逆に、

$$
\left(
\begin{array}{ccc|c}
1&2&-1&3\\
0&1&2&1\\
0&0&0&0
\end{array}
\right)
$$

のような形になることもあります。

最後の行は \(0=0\) なので、新しい条件を何も与えていません。この場合、未知数の数に対して独立した条件が足りず、ある未知数を自由に決められることがあります。

たとえば \(z=t\) とおけば、\(x,\ y\) を \(t\) を使って表すことができます。このような変数を自由変数といいます。

掃き出し法の結果を「一意解・解なし・無数の解」の3パターンで比較する図

つまり掃き出し法を使うと、

  • 解が1つに決まる
  • 解が存在しない
  • 解が無数に存在する

という違いまで、行列の形から読み取ることができます。

10.行基本変形と線形独立のつながり

ここで、これまで扱ってきた線形独立・線形従属ともつながります。たとえば、ある行が別の行の定数倍になっていると、その2本の方程式は本質的に同じ条件しか与えていません。

行基本変形をすると、そのような重複した条件は、

$$
\begin{pmatrix}
0&0&\cdots&0
\end{pmatrix}
$$

というゼロ行として現れます。

つまり、掃き出し法は単に方程式を解いているだけではなく、どの条件が独立で、どの条件が重複しているのかも明らかにしています。この考え方は、後に「行列のランク」を考えるときにも重要になります。

▶ 線形独立・線形従属について知りたい
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11.逆行列を使って解く方法との関係

連立方程式

$$
A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b}
$$

において、\(A\) に逆行列 \(A^{-1}\) が存在するなら、両辺の左から \(A^{-1}\) を掛けることで、

$$
A^{-1}A\boldsymbol{x}
=
A^{-1}\boldsymbol{b}
$$

となります。

\(A^{-1}A=I\) なので、

$$
\boldsymbol{x}
=
A^{-1}\boldsymbol{b}
$$

です。したがって、逆行列を求めても連立方程式を解くことができます。

では、掃き出し法と逆行列はまったく別の方法なのでしょうか。実は、両者は深くつながっています。

逆行列を掃き出し法で求めるときには、

$$
(A\mid I)
$$

という行列を作り、行基本変形によって、

$$
(A\mid I)
\longrightarrow
(I\mid A^{-1})
$$

と変形します。

つまり、行基本変形は連立方程式を解くだけでなく、逆行列を求めるためにも使うことができます。

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12.クラメルの公式との違いは?

連立方程式には、以前扱ったクラメルの公式を使う方法もあります。2元連立方程式なら、

$$
x=\frac{\det A_x}{\det A},
\quad
y=\frac{\det A_y}{\det A}
$$

のように、行列式から直接解を求めることができます。

クラメルの公式は、「なぜ行列式から連立方程式の解が求まるのか」を理解するうえで非常に興味深い公式です。一方、未知数が増えると、多くの行列式を計算する必要があります。

掃き出し法では、未知数が増えても同じ行基本変形を順番に繰り返していけばよいため、より一般的に使いやすい方法です。つまり、

  • 掃き出し法:行基本変形によって解く
  • 逆行列:逆行列を使って解く
  • クラメルの公式:行列式を使って解く

という違いがあります。

方法は違っていても、どれも同じ \(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b}\) という連立一次方程式を見ているわけです。

▶ クラメルの公式について知りたい
クラメルの公式とは何か?|行列式で連立方程式を解く
クラメルの公式とは何かを、2元連立方程式と行列式の性質からわかりやすく解説します。なぜ求めたい変数の列を右辺に置き換えるのか、なぜ行列式の比で解が求まるのかを、ベクトルと図形のイメージを使って説明します。

13.掃き出し法は「行列の構造を見る方法」でもある

ここまで見ると、掃き出し法は単なる計算テクニックではないことが分かります。行基本変形によって行列を簡単な形にすると、

  • 連立方程式の解
  • 解が存在するかどうか
  • 自由変数があるかどうか
  • どの条件が独立なのか
  • 逆行列が存在するかどうか

といったことが見えてきます。

つまり、掃き出し法とは複雑な行列を、その本質が見えやすい形へ整理する方法だと考えることもできます。

複雑な行列 → 行基本変形 → 階段形 → 解や構造が見える、という概念図

この考え方は、これから「ランク」「像と核」などを学ぶときにも再び登場します。

まとめ

連立一次方程式は、行列を使って \(A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b}\) と表すことができます。さらに右辺まで含めた拡大係数行列を作れば、未知数を毎回書かなくても、係数だけを操作して連立方程式を解くことができます。

そのとき使うのが行基本変形です。行基本変形には、

  • 2つの行を入れ替える
  • ある行を \(0\) でない数倍する
  • ある行に別の行の定数倍を加える

という3つの操作があります。

これらは特別な操作ではなく、連立方程式で行ってきた式の入れ替え、両辺の定数倍、加減法を行列の形で表したものです。

行基本変形を繰り返して行列を階段形へ変えていくことで、連立方程式を機械的に解くことができます。さらに、解がない場合や、自由変数をもつ場合も行列の形から判断できます。

また、掃き出し法は逆行列や線形独立とも深くつながっています。掃き出し法は、単に連立方程式を解くための計算方法ではなく、行列がもつ構造を見えやすくする方法でもあるのです。

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