内積はなぜ「成分の掛け算」で求まるのか?|余弦定理でわかる内積の成分表示

数学
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内積は「角度」で決まるはずなのに…?

前回の記事では、内積が、

$$\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$

という式で表される理由を、「影(正射影)」のイメージから解説しました。

▶ 詳しくはこちら
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内積は、

  • ベクトルの長さ
  • ベクトル同士の角度

によって決まる計算でした。

ですが実際には、内積は次のように「成分」だけでも計算できます。

$$\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1 b_1+a_2 b_2$$

ただし、\(\vec{a}=(a_1,\ a_2),\ \vec{b}=(b_1,\ b_2)\) としています。

ここで疑問が出てきます。

「なぜ、角度で決まるはずの内積が、“成分の掛け算”だけで求まるの?」

この記事では、その理由を、

  • ベクトル
  • ピタゴラスの定理
  • 余弦定理

を使って、図解ベースで直感的に説明していきます。

まずはベクトルを成分で表す

2つのベクトルを、

$$\vec{a}=(a_1,\ a_2),\ \vec{b}=(b_1,\ b_2)$$

とします。

このとき、ベクトル \(\vec{a} – \vec{b}\) は、

$$\vec{a} – \vec{b}=(a_1 – b_1,\ a_2 – b_2)$$

となります。

図で考えてみる

ここで、\(\vec{a},\ \vec{b},\ \vec{a}-\vec{b}\) を並べると、三角形を作ることができます。

内積の成分表示とベクトルの関係の図解

この三角形を使うと、「長さ」を2通りで表せます。

まずはピタゴラスの定理で考える

ベクトルの長さは、ピタゴラスの定理から求められます。

たとえば、

$$|\vec{a}|^2 = a_1^2 + a_2^2$$

同じように、

$$|\vec{b}|^2 = b_1^2 + b_2^2$$

です。さらに、\(\vec{a} – \vec{b}=(a_1 – b_1,\ a_2 – b_2)\) なので、

$$|\vec{a}-\vec{b}|^2 = (a_1-b_1)^2 + (a_2-b_2)^2$$

となります。これを展開すると、

$$|\vec{a}-\vec{b}|^2 = a_1^2 + a_2^2 + b_1^2 + b_2^2 -2(a_1 b_1+a_2 b_2)$$

になります。

今度は余弦定理で考える

一方で、同じ三角形に余弦定理を使うと、「辺と角度」の関係から、長さを別の形でも表せます。

別の記事で解説しましたが、余弦定理を使うと、

$$|\vec{a}-\vec{b}|^2 = |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 – 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$

となります。ここで、

$$|\vec{a}|^2 = a_1^2 + a_2^2$$

$$|\vec{b}|^2 = b_1^2 + b_2^2$$

を代入すると、

$$|\vec{a}-\vec{b}|^2 = a_1^2 + a_2^2 + b_1^2 + b_2^2 – 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$

になります。

▶ 余弦定理の記事はこちら
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2つの式を比べる

ここで、先ほどの2つの式を見比べてみます。

ピタゴラスの定理から:

$$|\vec{a}-\vec{b}|^2 = a_1^2 + a_2^2 + b_1^2 + b_2^2 -2(a_1 b_1+a_2 b_2)$$

余弦定理から:

$$|\vec{a}-\vec{b}|^2 = a_1^2 + a_2^2 + b_1^2 + b_2^2 – 2|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$

左辺は同じなので、右辺も同じになります。

つまり、

$$a_1 b_1+a_2 b_2 = |\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$

となる。

ここで、内積の定義

$$\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$

を使うと、

$$\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1 b_1+a_2 b_2$$

が導けます。

\(90^\circ < \theta < 180^\circ\) のときは?

ここまでは、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の場合を考えていました。

ですが、角度が \(90^\circ\) を超える場合でも、余弦定理そのものは成り立っています。

このときは、

$$\cos\theta < 0$$ になるため、内積も負になります。

つまり、角度に応じて \(\cos\theta\) が正・\(0\)・負になり、内積も同じように変わるため、

  • 鋭角 → 正
  • 直角 → \(0\)
  • 鈍角 → 負

という性質は、成分表示でもそのまま反映されているのです。

だから、成分だけで簡単に計算できる

本来、内積を求めるには、

  • ベクトルの長さ
  • 角度 \(\theta\)

を調べる必要があります。

ですが、\(\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1 b_1+a_2 b_2\) を使えば、角度を直接求めなくても、成分だけで簡単に計算できます。

だから内積は、

  • 数学
  • 物理
  • コンピュータグラフィックス
  • AI

など、さまざまな分野で広く使われているのです。

つまり今回は、

  • ピタゴラスの定理による表し方
  • 余弦定理による表し方

という、“同じ長さを2通りで表した式”を比較することで、内積の成分表示を導いています。

まとめ

内積は、

$$\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$

という「角度」の式で定義されます。

ですが、余弦定理を使うことで、

$$\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1 b_1+a_2 b_2$$

という「成分表示」の式に変形できます。

つまり、成分表示の公式は、ただの計算テクニックではありません。

その裏には、

  • ベクトルの長さ
  • 角度
  • 余弦定理

という幾何学的な意味が隠れているのです。

教科書では「公式」として出てくる式も、「なぜそうなるのか?」から見ると、かなり違って見えてきます。

▶ 内積についてもっと知りたい

そう感じた人には、ベクトルや内積を基礎から解説してくれる本もおすすめです。

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