ChatGPTでも使われている「内積」
以前の記事では、ChatGPTのようなAIが、「意味の近さ」を判断するために、内積を使っていることを解説しました。
たとえば、
- 「猫」と「犬」は近い
- 「猫」と「自動車」は遠い
といった“意味の近さ”は、ベクトル同士の角度や内積によって計算されています。

ですが、ここで疑問が出てきます。
$$\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$
なぜ内積は、こんな式になるのでしょうか?
この記事では、
- なぜ \(\cos\theta\) が出てくるのか?
- なぜ角度で値が変わるのか?
- なぜ直角だと \(0\) になるのか?
を、「影(正射影)」のイメージから直感的に解説していきます。
そもそも内積は何を表しているのか?
内積は、単なる「掛け算」ではありません。
実は内積は、「片方のベクトルが、もう片方の方向にどれくらい伸びているか」を表しています。
その“伸び”を表しているのが、「影(正射影)」です。

図では、ベクトル \(\vec{b}\) の「影」を、ベクトル \(\vec{a}\) の方向に落としています。
つまり内積は、「長さそのもの」ではなく、“相手方向への成分”を見ているのです。
なぜ \(\cos \theta\) が出てくるのか?
まずは、\(0^\circ < \theta < 90^\circ\) の場合を考えてみます。
ベクトル \(\vec{b}\) の「影」を、ベクトル \(\vec{a}\) の方向に落とすと、次のような直角三角形ができます。

直角三角形では、
$$\cos\theta=\frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}}$$
です。
斜辺は \(|\vec{b}|\) なので、隣辺は
$$
|\vec{b}|\cos\theta
$$
になります。
そのため、\(|\vec{b}|\cos\theta\)は、「\(\vec{b}\) を \(\vec{a}\) の方向に写した長さ」になっています。
つまり内積は、
- \(\vec{a}\) の長さ
- \(\vec{b}\) の“ \(\vec{a}\) 方向成分”
を掛け合わせたものだと考えられます。
そのため、
$$\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}|\times(|\vec{b}|\cos\theta)$$
となり、整理すると、
$$\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$
になります。
\(90^\circ < \theta < 180^\circ\) のとき
では、角度が \(90^\circ\) を超えると、どうなるのでしょうか?
この場合、「影」は反対方向にはみ出します。
つまり、「相手方向へ進む」どころか、逆方向へ成分を持っている状態です。
そのため、
$$
\cos\theta < 0
$$
となり、内積も負になります。
つまり内積は、
- 鋭角 → 正
- 直角 → \(0\)
- 鈍角 → 負
という性質を持つのです。
特別な角度で考えると分かりやすい
たとえば、
- \(\theta = 0^\circ\)
なら、完全に同じ方向なので、内積は大きな値になります。
逆に、
- \(\theta = 90^\circ\)
では、影が存在しないため、
$$
\vec{a}\cdot\vec{b}=0
$$
になります。
さらに、
- \(\theta = 180^\circ\)
では、完全に逆方向になるため、内積は小さな値になります。
だから、内積にはこんな性質がある
内積を「影を測る計算」として考えると、さまざまな性質が自然に理解できます。
垂直なとき、内積は \(0\)
垂直ということは、相手方向への“影”が存在しないということです。
そのため、
$$
\vec{a}\cdot\vec{b}=0
$$
になります。
自分自身との内積は「長さの2乗」
もし、\(\vec{a}\cdot\vec{a}\) を考えると、角度は \(0^\circ\)。
つまり、\(\cos0^\circ = 1\) なので、
$$
\vec{a}\cdot\vec{a}=|\vec{a}|^2
$$
になります。
つまり内積は、ベクトルの「長さ」と深く関係しているのです。
交換法則や分配法則も成り立つ
内積では、
$$
\vec{a}\cdot\vec{b}=\vec{b}\cdot\vec{a}
$$
という交換法則や、
$$
\vec{a}\cdot(\vec{b}+\vec{c})=\vec{a}\cdot\vec{b}+\vec{a}\cdot\vec{c}
$$
という分配法則も成り立ちます。
これは、「相手方向への成分」を取り出して計算するという内積の性質と相性が良いためです。
まとめ
内積は、
- 単なる掛け算
- ただの公式
ではありません。
本質的には、「相手方向への成分(影)」を測る計算です。
だから、
- 角度が小さいほど大きくなる
- 直角で \(0\) になる
- 逆向きで負になる
という性質が自然に生まれます。
高校数学で出てくる公式も、「何を測っているのか?」から考えると、かなり違って見えてきます。
ChatGPTが「意味の近さ」を扱える背景にも、こうした内積の考え方があります。
高校数学の公式が、現代のAI技術につながっている。
そう考えると、内積が少し違って見えてきませんか?
そう感じた人には、ベクトルや内積を基礎から解説してくれる本もおすすめです。


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