ホリー・ジャクソン『夜明けまでに誰かが』感想|“弱い人間”ほど、自分を責めてしまう

おすすめ小説

「RVのパンクと貧乏は関係ないのに、ぜんぶ自分のせいだと思ってしまう。」

この考え方が、ずっと頭から離れませんでした。

『夜明けまでに誰かが』は、狙撃手に閉じ込められた若者たちのサスペンス小説です。

しかし、読後に強く残ったのは「犯人は誰か」ではありません。
“弱い立場の人間ほど、自分を責めてしまう”という苦しさでした。

閉鎖空間で暴かれていく秘密。
極限状態で露わになる本性。
そして、他人を踏みつけながらでも、自分だけ助かろうとする人間。

読み終えたあと、怒りと悲しさがずっと残る小説でした。

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こんな人におすすめ

  • 閉鎖空間でのサスペンスが気になる人
  • 「人間の本性」がむき出しになる小説が好きな人
  • ただのどんでん返しではなく、“感情”が残る小説を読みたい人

あらすじ(ネタバレなし)

春休みの旅行中、高校生のレッドたちは、人里離れた場所で乗っていたRVがパンクします。
しかも突然、何者かに狙撃され、タイヤも燃料タンクも撃ち抜かれてしまいました。

携帯は圏外。
逃げ場はない。
午前零時。

外に置かれたトランシーバーから、狙撃手の声が響きます。

「この中の誰かが秘密を抱えている。」

生き残りたければ、その秘密を暴け。

閉鎖空間に閉じ込められた6人は、疑心暗鬼の中で少しずつ本性を露わにしていく――。

感想①:「貧乏」が、人を少しずつ卑屈にしていく

この小説で一番つらかったのは、レッドの“自責”でした。

彼女は貧乏で、周囲の友人たちとの格差にずっと引け目を感じています。
だからRVがパンクした時ですら、「自分のせいだ」と思ってしまう。

本来、パンクと貧乏は関係ありません。
でもレッドは、「自分がお金を持っていないから、みんながRV旅行を選んでくれたせいで…」と無意識に結びつけてしまう。

“弱い立場の人間ほど、自分を責めてしまう”という感覚が、痛いほどリアル。

しかも彼女は、ただ弱い人ではありません。

優しすぎる人なんです。
波風を立てないようにして、自分が我慢すればいいと思ってしまう。

だからこそ、読んでいて苦しかった。

感想②:オリヴァーが、最初から最後まで本当に無理

ここまで嫌悪感を抱いたキャラクターは久しぶりでした。

オリヴァーは典型的な、「成功したら自分のおかげ、失敗したら他人のせい」にする人間です。

しかも、自分が優位に立つことしか考えていない。
自分が危険かもしれない間は「全員助ける」と言うのに、自分が安全だとわかった瞬間、レッドを切り捨てようとする。

本当に最低でした。

“悪意”というより、“無自覚な傲慢さ”が怖い。

しかも本人は、自分を有能なリーダーだと思っている。
だから余計にタチが悪い。

レッドみたいに優しくて自責しやすい人が、こういう人間に押し負けてしまう構図が本当にしんどかったです。

感想③:「秘密」より、“疑心暗鬼”が怖かった

この小説はミステリーというより、かなりサスペンス寄りです。
犯人探しというより、「誰を信用できるのか」がどんどん分からなくなっていく怖さが中心でした。

誰もが秘密を抱えている。

しかし、本当に怖いのは秘密そのものではありません。
誰かの秘密が暴かれるたびに、空気が壊れていく。

あの閉鎖空間の息苦しさが、本当に怖かった。

特に印象的だったのは、オリヴァー。

他人の秘密を「損得」でしか見ていない。
だから空気をどんどん悪化させる。

一方でレッドは、他人の秘密を知っても、すぐには切り捨てない。
その対比がかなり鮮明でした。

閉鎖空間で少しずつ空気が壊れていく感じが、めちゃくちゃ怖い。

感想④:レッドには、報われてほしい

読後に残ったのは、“驚き”よりも怒りと悲しさでした。

レッドは、何も悪いことをしていません。
なのに環境のせいで、自分を責め続けている。
しかも、周囲の人間たちは、そんな彼女に甘えたり、利用したりしている。

読んでいて、「誰かこの子を支えてあげてくれ」とずっと思っていました。

だからラストは、かなり複雑です。

完全な救いとも言い切れない。
でも、レッドを縛っていた“呪い”は少しだけ解けたようにも感じました。

「レッドの人生が報われてほしい。」

読み終わったあと、ずっとそんな気持ちが残る小説でした。

レビュー

読みやすさ:4.0
テンポがかなり良く、会話中心なので読みやすい。

没入感:4.5
秘密と疑心暗鬼の連続で、ページをめくる手が止まらない。

感情の深さ:4.5
格差、自責、支配的な人間など、感情に刺さるテーマが多い。

余韻:4.5
読後に怒りと悲しさがじわじわ残る。

独自性:4.0
ただのどんでん返し系ではなく、“人間関係の空気”を描いているのが特徴。

おすすめ度:4.3
ただの極限サスペンスではありませんでした。
“弱い立場の人間が、どれだけ自分を責めてしまうのか”を描いた物語です。

まとめ:人は、環境によって壊れてしまうのか

『夜明けまでに誰かが』で一番怖かったのは、狙撃手ではありませんでした。
人を見下し、利用し、自分だけ助かろうとする人間です。

逆に、レッドみたいに優しい人ほど、自分を責めてしまう。
その構図が、あまりにも苦しかった。

だからこの小説は、「誰が犯人か」を楽しむ小説というより、“人間の弱さ”を見つめるサスペンスなんだと思います。

そして読み終えたあと、私はずっとこう思っていました。

失敗した人を責める側の人間には、なりたくない。

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次に読むなら

浅倉秋成さんの小説『六人の嘘つきな大学生』もおすすめです。

こちらも「犯人探し」ではなく、“誰が嘘をついているのか”によって人間関係が壊れていくタイプの小説で、『夜明けまでに誰かが』の疑心暗鬼の空気が刺さった人にはかなり合うと思います。

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