「ただの短編集かな」と思って読み始めたのに――。
読み終えたあと、一番身近な人に少し優しくしたいと思いました。
『チョコレート・ピース』は、チョコレートにまつわる短い物語が並ぶ一冊です。
けれどこの小説が残すのは甘さではなく、言葉にしなかった気持ちが、あとから胸に届く感覚でした。
こんな人におすすめ
あらすじ(ネタバレなし)
さまざまなチョコレートにまつわる短い物語が、少しずつ積み重なっていく連作短編集です。
文化祭のチョコバナナ。
新婚旅行のマカデミアナッツ。
友チョコの柿ピー。
誕生日のチョコプレート。
一見すると別々に見える物語が、読み進めるほど思いがけない形でつながっていきます。
そしてその先で――。誰かが誰かを想っていたことに気づかされます。
感想①:ただの短編集だと思ったのに、途中から引き戻された
正直にいうと、前半はそこまで入り込めませんでした。
短い話が続くので、最初は「よくある連作短編集かな」と感じて、読むのをやめようと思ったくらいです。
けれどBOX2に入った瞬間、それまでの物語の見え方が変わりました。
別々に見えていた話が、ひとつの線で静かにつながっていく。
「そういうことか」と気づいた瞬間から、一気に引き戻される。
感想②:伏線よりも、その奥にある気持ちが残った
この本の面白さは、単純な伏線回収だけではないと思います。
たとえば何気なく渡されたマカデミアナッツチョコにも、その人が言葉にできなかった気持ちが入っている。
あとから別の視点で読むことで、そのとき見えなかった感情が見えてくるんです。
私はそこにいちばん心を動かされました。
見えなかった気持ちが、あとから見えてくる。
それがこの小説のいちばん好きなところでした。
感想③:チョコレートを見る目が変わる
この本を読むと、不思議なくらいチョコレートが食べたくなります。
でもそれは、ただ甘いものが食べたくなるのとは少し違いました。
チョコレートって、疲れた日の救いだったり、
ささやかなご褒美だったり、
誰かにもらった記憶を思い出すものでもあると思うんです。
私にとってチョコレートは、ただのお菓子ではありませんでした。
気持ちや記憶をしまっておく、小さな箱みたいな存在。
感想④:優しさは、ちゃんと届いているのかもしれない
この本には、誰かを思う気持ちが静かにあふれています。
大げさな言葉ではなく、ちょっとした行動の中に優しさがある。
友チョコの代わりに柿ピーを持ってきた友達の場面も、最初は少しずれているように見えるのに、あとからその優しさが伝わってくる。
読んでいて思ったのは、自分の優しさも、ちゃんと誰かに届いていてほしいということでした。
自分では渡したつもりの優しさも、誰かの中に残っていてほしい。
レビュー
読みやすさ:3.5
一話が短く、少しずつ読めるので手に取りやすい。
没入感:3.0
前半は静かですが、後半から物語のつながりで引き込まれる。
感情の深さ:4.0
派手ではないのに、気持ちの描き方がじんわり刺さる。
余韻:4.0
読み終えたあとに優しさだけが胸の奥に残る。
独自性:4.0
チョコレートを通して感情を描く視点が印象的。
まとめ:甘いだけでは終わらない一冊
『チョコレート・ピース』は、チョコレートだけの話ではありませんでした。
言葉にできなかった気持ち。
気づけなかった優しさ。
身近な人たちとの小さなすれ違い。
そういうものを、あとからそっと手渡してくれる物語でした。
読んだあと、一番身近な人を少し大事にしたくなる。
そんな小説でした。

次に読むなら
お菓子が登場する物語でもう一冊読むなら、坂木司さんの小説『和菓子のアン』もおすすめです。
『チョコレート・ピース』が気になったなら、きっとこの甘さも好きになれると思います。




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