「自分の人生」を生きている人は、どうしてこんなに眩しいんだろう。
空気を読んでしまう。
失敗を怖がってしまう。
変だと思われたくなくて、結局なにもできない。
そんなふうに「他人にどう見られるか」で生きていると、少しずつ“自分が本当にやりたいこと”がわからなくなっていきます。
そんな私には、成瀬あかりがどうしようもなく眩しくみえました。
この小説は、“変人主人公の青春小説”では終わりません。
「自分の人生を生きる」とはどういうことなのかを、真正面から突きつけてくる物語です。
こんな人におすすめ
あらすじ(ネタバレなし)
2020年の夏。
中学2年生の成瀬あかりは、閉店を控えた西武大津店に毎日通い、テレビ中継に映ると言い出します。
さらにM-1への挑戦など、周囲が「そんなの無理」と思うことを次々と実行していきました。
成瀬はいつだって変です。
でも、その行動にはいつも彼女なりの理由がある。
コロナ禍の閉塞感の中で、“自分の人生”をまっすぐ生きる成瀬の姿に、気づけば目を離せなくなります。
感想①:「やりたいこと」を、ちゃんと自分で選んでいるのが眩しい
成瀬は、とにかく他人に振り回されません。
「嫌われたくないからやめる」
「浮きたくないから目立たないようにする」
みたいな“デメリット回避”で動かない。
自分がやりたいと思ったことを、とにかくやる。
しかも、それを「痛い人」に見せないのがすごい。
行動にちゃんと意味があるからです。
西武大津店に通い続けたのも、ただ目立ちたかったからじゃない。
成瀬は、「変な人」ではなく、「自分の人生を生きている人」。
感想②:「可能性を閉じていない青春」が苦しいほど眩しい
成瀬は、小学生の頃に「200歳まで生きる」と言っていました。
大きな目標を口にしておけば、ひとつでも叶ったらすごいから。
だから、日頃から種をまいておく。
この考え方が、すごく好きです。
年齢を重ねると、「今さら無理」がどんどん増えていきます。
やる前に現実を考えてしまうし、失敗した時のダメージまで想像してしまう。
でも成瀬は違う。
「できるかどうか」より先に、「やりたいかどうか」で動いている。
自分の未来に無限の可能性を感じているのが、青春って感じがする。
「今さら無理」を増やしてきた自分には、成瀬が苦しいほど眩しくみえました。
感想③:失敗しても、人を責めないところが好き
成瀬はM-1にも挑戦します。
普通なら、
「恥をかきたくない」
「どうせ無理」
で止まってしまうことを、平然とやってしまいます。
しかも失敗しても、誰かのせいにしない。
うまくいかなくても、「じゃあ次」で終わる。
これが、本当に強い。
たぶん多くの人は、“失敗”そのものより、失敗して「もうやめよう」となることを怖れています。
一度の失敗で、自分の可能性を閉じてしまうから。
でも成瀬は閉じない。
だから、成瀬は自由に見える。
読んでいて、「失敗してもいいのかも」という気持ちになれました。
感想④:無敵に見えた成瀬が、ちゃんと揺れる
成瀬はずっと強い。
周りにどう思われても気にしない。
自分のやりたいことを貫く。
恋愛よりも、自分の人生を優先する。
だから途中まで、少し“完成されすぎている”ようにも感じていました。
でも、あることがキッカケで、成瀬は崩れます。
調子が出なくなる。
悩む。
うまくいかなくなる。
その姿を見て、急に成瀬が身近に感じられました。
“誰にも影響されない人”だと思っていた成瀬が、友人の存在にはちゃんと揺れていたのです。
ただの「最強主人公」ではなく、人とのつながりの中で揺れる存在だったからこそ、この物語は心に残る。
レビュー
読みやすさ:4.5
連作短編なのでテンポがよく、普段あまり小説を読まない人でも入りやすい。
没入感:4.0
成瀬の次の行動が気になって、気づけばどんどん読み進めてしまう。
感情の深さ:4.0
“青春の眩しさ”だけでなく、「自分はどう生きたいのか」を考えさせられる。
余韻:4.0
読み終わった後、自分の中で止まっていた何かを動かしたくなる。
独自性:4.0
「変人キャラ」で終わらず、“生き方”そのものに踏み込んでいるのが強い。
まとめ:「自分の人生」を生きる人は、こんなにも眩しい
『成瀬は天下を取りにいく』を読んでいると、何度も「自分にはこんな青春なかったな」と思います。
でも同時に、「今からでも遅くないのかもしれない」とも思えました。
空気を読んで。
失敗を恐れて。
周りに合わせて。
そうやって少しずつ閉じてしまった可能性を、成瀬は軽々と飛び越えていく。
だから眩しい。
そして、ちょっと苦しい。
でも、読み終わったあと、私も何か始めてみようと思える小説でした。

次に読むなら
「頑張れ」ではなく、“少しだけ前を向きたい”と思える物語が読みたいなら、青山美智子さんの小説『遊園地ぐるぐるめ』もおすすめです。
しんどさを抱えたままでも、人は少しずつ前を向ける。そんな優しさが残る小説です。



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