ひと粒つまめば、ほろりと甘く、時には少し切ない。短い物語が寄り添うように胸に残り、気づけば「自分の物語」にも灯をともしていく――。
『チョコレート・ピース』は、そんな「チョコレートの詰め合わせ」のような短編集です。軽いおやつのつもりで読みはじめたはずが、気づけばフルコースを食べ終えたような満足感に包まれます。
短いストーリーなのに心に残る、言葉の余韻がすごい
短編それぞれに、「あ、これ忘れられないな」と思わせる印象的な言葉が散りばめられています。
たとえば――
「転ばない人なんていない。そんな人生なんて、ない。そのたびに起き上がって、きっとそのたびに少し前進している」
「きれいに割れなくたっていいじゃん。みんなで食べれば美味しいのは変わらないよ」
どの言葉も、押しつけがましくなく、ふっと心の温度をあげてくれます。「チョコレートの後味のように、じんわりと残る」――そんな読書体験が味わえます。
ちょっとした謎解きと伏線回収がクセになる
本作が「ただの短編集」で終わらない理由がここです。
詳しくは書きませんが、BOX1の終わりに驚かされ、BOX2ではBOX1の短編それぞれが別の角度から描かれ、「あ!これ、あの時のあの人だ!」と、ストーリー同士のつながりを見せます。
まるで、チョコレートアソートの裏側に隠されたレシピを一つずつ解き明かしていくよう。後半になるほど気持ちよい回収が続きます。
読後に「こういった仕掛けの本、もっと読みたい!」と思うはずです。
「相手を想う気持ち」がすべての物語にやさしく流れている
『チョコレート・ピース』に登場するキャラクターたちは、誰も完璧ではありません。恋に不器用だったり、友達づきあいに迷ったり、仕事でつまずいたり。
それでも、誰かを思いやり、誰かに助けられ、誰かをそっと励まします。
そうやって、少しずつ人とつながりながら前に進んでいく姿が描かれています。
特に「先輩に受けた恩を後輩に返す」大人女子のカッコよさ。立ち居振る舞いだけじゃなく、「生き方そのもの」が美しい姿に心が動かされます。
「物語の甘さと苦さが、あなた自身の人生にそっと重なる
チョコバナナの屋台、
アイドルへの恋、
友チョコ交換のドタバタ、
喧嘩できるようになった夫婦、
年下恋人との別れ、
三姉妹の不器用な関係、
新しい人生を選ぼうとするショコラティエ。
人生のいろんな瞬間が、小さなチョコレートの物語として閉じ込められています。
読み進めるうちに、「あのときの私のあの気持ちも、こんな味だったかもしれない」と、自分の過去まで柔らかく甘く思い出させてくれるはず。
まとめ:「心に残る言葉・伏線回収・やさしい想い」がひと箱に
『チョコレート・ピース』は、短編の良さ、伏線の気持ちよさ、共感のあたたかさ――これらが丁寧に詰められた一冊です。
読み終えたあと、思わずチョコレートが食べたくなる。そしてきっと、誰かに優しくしたくなる。
そんな余韻をあなたも味わってみませんか?


コメント