この前の衆院選で、全トヨタ労働組合連合が、立憲民主党議員との連携を見直すという方針を立てました。
この背景には、政治的な思惑もあるように思いますが、それだけでなく、自動運転搭載のEVが普及する未来を考えると、トヨタも生き残りをかけて真っ向勝負をする必要に迫られているからだと思います。
それにも関わらず、法人税を上げて、これまで以上に大企業から税金をとって、分配する政策が推進されてしまうと、トヨタも生き残れなくなるので、連携を見直したんだと思うんですよね。
株価でみると大企業よりも中小企業の方が元気がある
「失われた10年」といわれている、日本が長引く不況で苦しんでいた2002年から2012年の間に、株価が上昇した企業がどれくらいあるかご存知ですか?
『14歳の自分に伝えたい「お金の話」』によると、実は、上場企業のうち約7割の企業が株価上昇を記録していたそうです。
しかも、そのうちの約5割の企業は、利益も株価も2倍以上伸ばしていたのです。
素晴らしい成長のように思えますよね。
では、なぜ「失われた10年」と言われているのでしょうか。
それは、成長していたのは中小企業ばかりで、ほとんどの大企業が衰退していたからです。
就職希望の上位ランキングに入る30社が名を連ねる「トピックス・コア30」を見ると、同じ10年間で24%も株価が減少しています。
いわゆる「アベノミクス」以降も、株式市場を牽引しているのは中小企業で、大企業は元気がありません。
しかも、このような状況下で、新しい時代の波が押し寄せようとしています。
アメリカではGAFAが多くの老舗企業を閉鎖に追い込んでいる
『ZERO IMPACT』を読みました。
この本によると、アメリカでは過去3年間で、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)の影響によって、1万店舗を超える小売店が閉鎖に追い込まれているそうです。
コロナ禍の影響もありますが、ビデオレンタル店や書店、玩具店など多くの小売業がGAFAに取って代わられました。
もちろん、この流れは日本にも押し寄せています。
たとえば、旅行をしようと思ったとき、ネットに接続できる環境があれば、航空券や鉄道のチケット、ホテルにレンタカーなど、旅行代理店に頼らなくても、直接予約できます。
このように、ネットが普及すればするほど仲介業者は姿を消していくことになります。
しかも、今後は、あらゆる機器がインターネットに接続され、すべての企業がインターネットのインフラ上で事業を展開せざるを得なくなります。
農業も製造業もサービス業もすべてです。仲介業者が淘汰されるだけでなく、GAFAによってさまざまな業界のシェアを根こそぎ奪われる可能性があるのです。
トヨタが焦燥感を抱いているのも、そのためです。
自動運転を搭載したEVがもたらす未来とは?
ガソリン車からEVに代われば、エンジンが不要になります。
そうなると、部品点数が大幅に減少するので、これまで自動車メーカーが培ってきた技術優位性が根底から覆されることになります。
また、自動運転の技術は、自動車メーカーではなく、グーグルやテスラなどの新興メーカーが先行しています。
さらにシェアリングカーサービスが始まると、クルマの購入者は大幅に減り、ビジネスモデルを根本から見直す必要に迫られます。
そこでトヨタは、自動車会社からモビリティーカンパニーに変わろうとしているのです。
あらゆるモノやサービスをつなげる「コネクティッド・シティ」プロジェクトを推進して、GAFAに対抗できる、新たなビジネスモデルを探究しようとしているんですよね。
このような背景があるにも関わらず、「法人税を上げて大企業からお金を取るんだ!」という政策を進めようとしたので、立憲民主党議員との連携を見直すという方針を立てたのだと思います。
また、そもそも論でいくと、日本は法人税が高い国だと言われています。
OECD(経済協力開発機構)の公開値によると、2020年度は世界6位(アジアでは1位)で、世界11位のアメリカよりも4%も法人税が高いという現実があります(※1)。
もちろん、法人税を上げても、利益が出せる大企業があればいいのですが…。(先ほども説明したように元気があるのは大企業よりも中小企業です。)
ちなみに、自動運転搭載のEVが当たり前の時代がくると、多くの雇用がなくなります。
- エンジンを積んでいないので保守点検の機会がなくなる
- 事故そのものも減るため修理の機会が激減する&保険の必要性も減る
- テスラのようにネット発注できるようになればディーラーの必要性がなくなる
といった変化が起こるからです。
さらには、宅配コストもゼロに近づき、無料でタクシーに乗れたり(広告収入で運営できる)、電車に乗る必要もなくなるかもしれません。
そのため、こうした製品やサービスが日本ではなくテスラやGAFAなどの海外企業から押し寄せてきたとしたら、私たちの雇用はどうなるのでしょうか。
もちろん、目の前にある「貧富の格差」を是正する必要もありますが、今後、日本が世界とどこで戦うつもりなのか?も含めて、政策を検討いただきたいと思います。
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