「あなたは悪くない」「あなたの考えは正しい」「あなたはすごい」…。
私たちの誰もがこういった言葉をかけてほしい、自分を認めて欲しいと願っています。
しかし、こうした承認欲求が肥大化していくと、相手を闇に引きずり込んででも承認欲求を満たしたいと思う人が現れます。
辻村深月さんの小説『闇祓』は、そんな承認欲求が肥大化した人たちが、様々なハラスメントを駆使して、次々と相手を闇に引きずり込んでいくホラー小説です。
あの人と接していると心がザラっとする…。そんな覚えがある方は、ぜひ『闇祓』を読んでください。
そんな人たちとは今すぐ距離をとろうと思えますよ。
『闇祓』の情報
おすすめ度の理由
『闇祓』のあらすじ
「うちのクラスの転校生は何かがおかしい――」
クラスになじめない転校生・要に、親切に接する委員長・澪。
しかし、そんな彼女に要は不審な態度で迫る。
唐突に「今日、家に行っていい?」と尋ねたり、家の周りに出没したり……。
ヤバい行動を繰り返す要に恐怖を覚えた澪は憧れの先輩・神原に助けを求めるが――。
身近にある名前を持たない悪意が増殖し、迫ってくる。一気読みエンタテインメント!
『闇祓』の感想
闇祓は身近に溢れている
闇祓(闇ハラ)というタイトルをみて、「闇を祓って、闇を祓って…」というオープニング曲の漫画を思い出しましたが、実は「闇祓」には、「闇を祓う」ではなく、「闇ハラスメント」という意味が込められています。
自分の事情や思いなどを一方的に相手に押しつけて、不快にさせる言動・行動のことです。
たとえば、相手を心配しているふりをして、自分の指示通りに行動しないで失敗すると、「真剣に身を守る気ないでしょ」「だから付け込まれるんだよ」「自分が楽で、悪者にならないですむことしか考えないよな」などと、徹底的に相手を否定します。
家族でも、友達でも、仕事の同僚でも、とにかく誰かに自分を認めさせたくて、誰かを自分の支配下におきたくて、ハラスメントを駆使して相手を否定していきます。
もちろん、正論だとしても、相手を否定したり、傷つけたり、支配していいわけがありません。
しかし、残念なことに、私たちの身の回りには、こうした闇祓をしている人たちが溢れています。
私の職場でも、「俺の方が仕事ができる!」「俺の言うことを聞け!」と言いたくて、同僚の仕事に対して「は?って思う」「無駄なことばかりしている」「俺ならそんな役に立たない仕事に手を出さないけどね」なんて見下して相手を闇に引きずり込もうとしている人がいます。
ところが、こうした人たちは、相手のことを思うふりをして近づいてくるので、ついつい相手をしてしまいがちです。
しかし、そうした闇祓に巻き込まれてしまうと、自分まで闇に飲み込まれてしまいます。
闇に飲み込まれてしまうのは闇を抱えているから
とはいえ、闇祓を受けている人たちにも、闇があるから彼らは近づいてくるのです。
たとえば、自信がない人には、自信満々でパワハラやセクハラをしてくる人が近づいてきます。
自分と他人を比べてランク付けしている人には、格上の人たちがマウントをとってきます。
他人の悪口ばかり言っている人は、その悪口を全部聞いて、悪口を言うことが正しいと誤解させる人が現れます。
このように、自分が抱えている闇をさらに増幅させてしまうのが闇祓です。
ちなみに、SNSではこうした闇祓が頻繁に行われています。
誰かの書いた悪意に影響されて、誰かを傷つけたくなったときは要注意です。
理解してもらう必要はないと思う勇気が必要
では、闇祓に対抗するにはどうすればいいのでしょうか。
基本的には、心がザワつくような相手とは関わりを持たないことです。
関わるしかない場合でも、自分のことを認めてほしいと思わないこと、理解してもらおうと思わないことです。
なぜなら、彼らは口だけで、相手のことをこれっぽっちも考えていないからです。
自分のことしか考えていなので、そもそも相手のことを認めようとか、理解しようなどとは思っていません。
そのため、闇祓をしようとする人が現れたときは、相手にする必要はまったくありません。
しかし、せっかくの機会なので、自分の闇に気づくチャンスと捉えてみてはどうでしょうか。
闇祓をする人は、こちらの闇を増幅しようとしてくるので、自分の弱さと向き合えるチャンスでもあります。
もちろん、闇に引きずり込まれそうになってまで考え込む必要はありませんが、少し遠くから自分を眺めてみると、直したほうが良いところに気づけるかもしれませんよ。
まとめ
今回は、辻村深月さんの小説『闇祓』のあらすじと感想を紹介してきました。
相手のことを思うふりをして、闇に引きずり込もうとする人たちの姿に恐ろしさを感じ、身体が震える物語です。
それだけでなく、ラストは4つの物語がつながっていくので、驚きも味わえるホラー小説でした。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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