朝井リョウ『何者』感想/ダサくても理想の自分に近づけるしかない!

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他人を評論家のように見下していませんか?

私も以前はそんなところがあったので、朝井リョウさんの小説『何者』を読んで、ドロドロとした苦い記憶が蘇ってきました。

それだけでなく、ダサくてもカッコ悪くても、今の自分を受け入れて頑張るしかないことに、改めて気づける物語だったんですよね。

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あらすじと内容紹介

「ダサくてカッコ悪い自分を理想の自分に近づけるしかない!」

就職活動中の二宮拓人(たくと)は、同じく就職活動中の4人と集まって就活対策をするようになりましたが、実は彼らは表で見せている顔とは別の顔をもっており…という展開が楽しめる小説です。

「大企業でも不安定な時代に就職する意味なんてあるの?」
「ブラック企業に就職するなんて可哀想」
「学生が名刺を作ってテキトーな肩書きをもつなんてカッコ悪い」

などと、強がって他人を見下している人のダサさと、そうやってバカにされても理想の自分に近づけるために行動する人の強さが描かれていたので、その対比に心が揺さぶられました。

ちなみに、この物語は、佐藤健さん、有村架純さんなど豪華キャストの共演で映画化されています。Amazonプライムでも観ることができます。

『何者』の感想(ネタバレあり)

ここからは多少のネタバレありで感想を書いていきます。

物語の核心を突くようなネタバレは避けていますが、それでも気になる方は、本書を読み終わった後に再び訪れてください。

就職活動をしていた頃のイヤな緊張感が思い出せる

就職活動を機に演劇を辞めた二宮拓人は、バンドをしていた神谷光太郎と同居していましたが、光太郎の元カノである田名部瑞月に恋心を抱いていました。

そんな瑞月に誘われた拓人は、アパートの上の階に住む就職活動中の小早川理香と宮本隆良というカップルと知り合います。

これがきっかけで、彼ら5人は理香の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まるようになりましたが、彼らの多くが表の顔とは別の顔を持っていました。

就職活動と向き合うのが怖く、心の奥底ではネガティブな感情が渦巻いていたからです。

就職活動がつらい理由は大きく二つあります。

ひとつは、単純に、誰かから拒絶される体験を何度も繰り返すのがつらいというもので、

もうひとつは、大したものではない自分を、大したもののように話し続けなくてはならないことでした。

彼らの多くは、プライドが高く、傷つくことを極端に怖れていたので、恐怖心を隠して、強がっていたんですよね。

私もそうやって強がっていた覚えがあるので、就職活動をしていた頃のイヤな緊張感が思い出せました。

他人を見下して優位に立とうとするダサさが客観的にわかる

そんな彼らが、自分を保つためにとった方法は、大きく3つありました。

ひとつは、就職活動そのものをバカにする方法です。

「自分は就職活動に興味がない、ちょっと変わった人間です」とアピールする方法です。

就職活動をしている人は、他人に流されていると決めつけて、

いつ崩れ落ちるかわからないような仕組みの上にある企業に身を委ねるって、どういう感覚なんだろうって思っちゃう。

なんて誰もが反論できない大きなテーマに紐付けて、就職活動をしている人をバカにすることで自分を保とうとします。

しかし、批判している本人は、まったく大したことをしていないので、足元はグラグラです。

二つ目は、他人が受かった企業をバカにすることで、自分を保つ方法です。

あの企業はブラック企業だとか、正社員じゃなくてメンバー社員だから受かったんだとか、大企業はもうオワコンだとか言って、他人が受かった企業をバカにして自分を保とうとします。

とはいえ、そうやって上から目線で言っている人たち自身は、バカににしている企業にさえ内定がもらえない現実があります。

三つ目は、SNSでいい顔をして、溜まった鬱憤を裏垢で吐き出す方法です。

現実がどうあれ、SNSでは良い顔をして上手くいっているように見せたいので、溜まった鬱憤を裏垢で吐き出して気持ちを調整しています。

もちろん、どれだけSNSで良い格好をしたところで、現実は何ひとつ変わらないので、無理をしてまでSNSをする必要はないんじゃないかと思いますが、

まわりの人たちから取り残されているような気がして辞められません。

こうして、虚像であっても他人を見下し、「自分は凄いんだ!」とアピールしあう人たちの姿が描かれていたので、そのダサさを客観的に眺めることができました。

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ダサくてもカッコ悪くても理想の自分に近づけるしかないと励まされる

さて、こうして他人を見下し、自分を必要以上によく見せることで、自分を保っていた彼らでしたが、徐々にその本性が明らかになっていきます。

そして、「学生なのに名刺なんて作ってカッコ悪い」「肩書きもダサい」と裏でバカにされていたある人物が、批判していた相手に向かってこう言います。

自分が笑われてることだってわかってるのに、名刺作ったりしてるのは何でだと思う?
それ以外に、私に残された道なんてないからだよ。
ダサくてカッコ悪い自分を理想の自分に近づけることしか、もう私にできることはないんだよ。

10点や20点でもいいから自分を出さないと、学生時代とは違って誰も点数をつけてくれないというんですよね。

さらに、これから目指すことをキレイな言葉を並べてアピールしても、誰からも評価してもらえないので、これまでやってきたダサい自分をみんなに見てもらうしかないと続けます。

私はこの言葉にハッとしました。

ダサくてもカッコ悪くても、今の自分を出し切らなければ、一生何も出来ないまま終わることに気づいたからです。

他人を批判することで簡単に得られる優越感にひたるダサい人間になるよりも、

他人からカッコ悪いと批判されても、理想の自分に近づけるために行動し続ける人間でありと思える物語でした。

まとめ

今回は、朝井リョウさんの小説『何者』のあらすじと感想を紹介してきました。

  • 就職活動をしていた頃のイヤな緊張感が思い出せる
  • 他人を見下して優位に立とうとするダサさが客観的にわかる
  • ダサくてもカッコ悪くても理想の自分に近づけるしかないと励まされる

以上、3つの魅力がある物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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