自分の人生の王様・女王様として生きていますか?
私は周りの環境に左右されて、自分が何がしたいのかわからなくなることがよくありますが、古内一絵さんの小説『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』を読んで、自分の人生なんだから王様として生きようと励まされました。
他人や環境ではなく、自分がどうしたいのかが大切だと気づかせてくれる物語だったからですが、それだけでなく、どのような悪意をもって接してくる人に対しても優しい言葉をかけるドラァグクイーン(女装をした男性)の姿に感動で涙がこぼれ落ちそうになる物語だったからです。
『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』の情報
おすすめ度の理由
『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』のあらすじ
大手パソコンメーカーのカスタマーサービスセンターで、オペレーターのアルバイトをしている26歳の弓月綾は、離職率が高い職場にも関わらず4年も働き続けていました。
そのため、職場では古株でしたが、スーパーバイザーと呼ばれる現場管理者への登用の打診はありませんでした。
彼女は、人と関わることを極端に怖れており、今の仕事にもまったく熱意をもっていなかったからです。
とはいえ、綾が極端に人を怖れるようになったのは、小・中学校のときに同級生にいじめられ、先生も一緒になって糾弾されたからでした。
高校・大学と自分の存在を消して過ごし、今でも他人を信じることができませんでした。
しかし、そうやって他人との関わりを怖れる一方で、「私はあなたが嫌いです。好かれたいとも思いません。」というタイトルのブログを運営し、オシャレなカフェなど、気に入らないものに対して毒を吐くことで憂さ晴らしをしていました。
しかも、多くの人にシェアされて承認欲求まで満たしていましたが、次のターゲットに選んだ漫画家・藤森裕紀に対してのレビューでは、他のレビュアーから揚げ足取りだと批判されます。
また、藤森のTwitterに対して直接毒を吐いても、相手にしてもらえなかったので、彼がお気に入りだというカフェに乗り込もうと考えました。
そのカフェは、夜遅くにひっそりと営まれている「マカン・マラン」というお店で…。という物語が楽しめる小説です。
『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』の感想
この小説では、全部で4つの物語が描かれています。
どの物語も、ドラァグクイーンであるシャールが、悩みを抱えている人たちに厳しくも温かい言葉をかける姿に心が動かされました。
たとえば、あらすじで紹介した『妬みの苺シロップ』では、ネット上で他人を見下すことで憂さ晴らしをし、承認欲求を満たしていた綾に対して、あなたが羨ましくて仕方がないと言い出します。
私は不幸だという綾に対して、その若さも、つらい治療の必要のない身体も、その長い髪も羨ましくて仕方がないと言うんですよね。
この言葉を聞いた綾は、この世の理不尽さを身に染みて知っているのは、自分よりもシャールだということに気づきます。
このように、悪意をもって接触してきた綾に対してでさえ、自分の方がつらい状況にいるにも関わらず、励まそうとするシャールの姿に心が動かされました。
他にも、『藪入りのジュンサイ冷や麦』では、料理人として自分勝手な理由で師匠を裏切り、その結果、心療内科に通うことになった香坂省吾に対して、次のような言葉をかけます。
あなたは単に、自分がなにをしたいのかが、分かっていなかっただけのことよ。
居場所なんて、どこかに無理やり見つけるものじゃないのよ。自分の足でしっかりと立っていれば、それが自ずとあなたの居場所になるの。要するに、あなたがどこに立ちたいかよ。
省吾の周りには、味よりも雰囲気を重視して金儲けに走る料理人がいましたが、そんな料理人に対しても間違っているとは言わず、いろいろな料理人がいてもいいと言い、さらに、そんな周りがどうこうではなく、自分が一番守りたいものが何かが大切だと言うんですよね。
このように、他人の奴隷に甘んじるのも、王様になるのも自分次第なんだとシャールの姿を通して励まされる物語が楽しめました。
どの物語も感動で涙がこぼれ落ちそうになる小説です。
まとめ
今回は、古内一絵さんの小説『きまぐれな夜食カフェ マカン・マラン みたび』のあらすじと感想を紹介してきました。
他人や環境ではなく、自分がどうしたいのかが大切だと気づかせてくれるだけでなく、どのような悪意をもって接してくる人に対しても優しい言葉をかけるシャールの姿に感動で涙がこぼれ落ちそうになる物語が楽しめます。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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