南杏子『ヴァイタル・サイン』感想/看護師の想像を上回る激務に衝撃を受ける物語

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看護師の仕事がどのようなものかご存じですか?

私は知り合いに看護師がいたこともあり、忙しいとは聞いていましたが、南杏子さんの小説『ヴァイタル・サイン』を読んで、想像を上回る激務に衝撃を受けました。

このような激務に耐えながらも、患者のためを思って行動する看護師に頭が下がる物語です。

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『ヴァイタル・サイン』の情報

タイトル ヴァイタル・サイン 
著者 南杏子
おすすめ度 4.0
ジャンル ヒューマンドラマ
出版 小学館 (2021/8/18)
ページ数 368ページ (単行本)

おすすめ度の理由

  • 看護師が想像以上に厳しい状況に置かれていることがわかる
  • 患者を殺してしまう看護師&介護士の気持ちが少し理解できる
  • 目の前の仕事を頑張ろうと励まされる
  • ストーリー展開が読めてしまう

『ヴァイタル・サイン』のあらすじ

21歳で看護師になり、10年が経過した堤素野子そのこは、二子玉グレース病院で働いていましたが、気持ちが沈んでいました。

教育係として面倒を見ていた4歳年下の大卒ナースである大原桃香が、看護学校を卒業した素野子を見下しており、また新しい看護助手が入ることになったので、忙しい中で二人の面倒を見る必要があったからです。

看護師の絶対的な不足、365日の不規則勤務、民間病院の経営環境の悪化、価値を増す若手労働…といった背景もあり、教育係にとって大切なことは「若い子を辞めささないで、とにかく働き続けてもらうこと」だと師長から言わていたため、厳しく注意をすることもできませんでした。

そのため、素野子は気持ちが沈んでいたわけですが、彼氏である市川翔平との楽しい日々を糧として踏ん張ろうとします。

とはいえ、日常業務をこなすことがギリギリの人員で、次々とトラブルが起こりました。

突然、ノロウィルスの患者が嘔吐をしたり、入浴補助をしている患者が怒鳴ってきたり、さらには患者の家族からも罵られます。

こんなつらい思いをしてまで、看護師として働き続けることに、一体何の意味があるのだろうと悩んでいた素野子でしたが…。という物語が楽しめる小説です。

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『ヴァイタル・サイン』の感想

この小説を読んで衝撃を受けたのは、看護師という仕事が想像を絶する激務だということです。

たとえば、入浴介助の業務では、身体の自由がきかない患者を1人ずつ順番にお風呂に入れる必要がありますが、お礼を言ってくれる患者ばかりではありませんでした。

認知症になって攻撃的になった患者に、「やめろ!人殺し!」と怒鳴られたり、場合によっては顔を叩かれたりすることもあります。

他にも、昼食の配膳や食事介助、夜になってからはナースコールの対応など、やるべきことが山ほどあります。

昼食の配膳では、認知症を患っている患者たちは順番待ちをすることができないので、「早くしろよ」と文句を言ってきたり、その対応をしている最中に、「トイレに行きたい」と言い出した患者に付き添ったりと、休憩している暇などありません。

夜勤も同じです。ナースコールが響き渡り、「トイレに行きたい」「水を飲ませて欲しい」「お腹が痛い」といった患者の容体を確認したり、「背中が痛い」「隣の患者のいびきがうるさい」とった患者の不満にも対応する必要がありました。

それだけでなく、患者の家族たちが必要以上の要求をしてきます。

治療の施しようがないのに、血尿が出ただけで、「今すぐ治療しろ!」と言ってきたり、業務に追われていると「怖い顔になっている」「そっけない」とクレームが入ったり、挙句の果てにはセクハラまがいのことをしてくるなど、ありえない要求をしてきます。

そんな激務をこなしているにも関わらず、医療の世界では、ヒエラルキーが強いので、看護師のことを見下している医師もおり、また看護師の中でも、大卒、専門学校卒、准看護師などで順位付けがされていました。

こうした日常だけでも心身ともに疲れ果てますが、それ以外にも突然の嘔吐や病状の悪化といったトラブルにも対応しないといけないため、看護師という仕事の大変さと理不尽さに心が痛みました。

ときどき、看護師や介護士が患者を殺害するニュースが流れますが、その気持ちが少し理解できるだけでなく、殺害した看護師や介護士を責めても解決できるような問題ではないことがわかる物語です。

まとめ

今回は、南杏子さんの小説『ヴァイタル・サイン』のあらすじと感想を紹介してきました。

看護師の激務に衝撃を受けるだけでなく、それでも患者のためを思って行動する姿に頭が下がる物語です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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