世間の当たり前と戦え!/西條奈加『とりどりみどり』感想

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世間の当たり前に従っていませんか?

『とりどりみどり』の主人公は、世間の当たり前をことごとく無視する姉たちに嫌気がさしていましたが、実はその姉たちに守られていたことがわかります。

世間の当たり前に従っているだけでは、誰かを守ることなどできないと気づかせてくれる物語でした。

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『とりどりみどり』のおすすめポイントとあらすじ

おすすめ度:3.6

  • 三人の姉たちに振り回される11歳の主人公が可愛らしい
  • 個性豊かな三姉妹が魅力的
  • 兄や姉たちの優しさに心が動かされる
あらすじ
廻船問屋「飛鷹屋」の次男坊・鷺之介さぎのすけは、次女と三女にさっさと伴侶を見つけて家を出て行ってほしいと思っていました。くだらないおしゃべりに長々と付き合わされたり、買物や芝居や物見遊山に引き回されたり、行儀だの作法だの口うるさく直されたりと、心休まる暇がなかったからです。しかし、嫁いで家を出ていった長女のお瀬己まで、母の形見の櫛を盗まれたからといって家に戻ってきます。鷺之介は、これは一大事だと気を引き締めますが…。

『とりどりみどり』の感想

11歳の主人公・鷺之介が、かしましい三人の姉たちに振り回される連作短編集です。

船持ちの廻船問屋「飛鷹屋」の次男坊として甘やかされて育った鷺之介でしたが、無礼で奔放、常識の欠片もない三人の姉たちに振り回されて、無駄遣いをしない、驕らない、人に不遜な態度を取らないと心に固く誓って生きようとする姿が可愛らしく、ページをめくる手が止まらなくなりました。

一方で、鷺之介から距離をとりたいと思われていた姉たちでしたが、長女のお瀬己は勝ち気で文句ばかり言っている反面、優しいところがあり、次姉のお日和はおっとりな物言いで毒ばかり吐いているだけでなく、一途なところがあり、三女のお喜路は頭がいいぶん理屈っぽくって可愛げがありませんでしたが、夢に向かって走り続けるなど、個性的な三姉妹の魅力に引き込まれました。

しかも、ラストはある事実に悩む鷺之介に対して、兄は持ち前の用心深さを発揮して、姉たちは世間の当たり前に歯向かうことで弟を守ってきたことが明らかになり、その優しさに心が動かされました。

世間の当たり前と戦い続ける姉たちに振り回される主人公の物語に興味がある方におすすめの小説です。

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