谷瑞恵『語らいサンドイッチ』はトゲトゲしい気持ちがふわっと消えていく物語

おすすめ小説

トゲトゲしい気持ちで日々の生活を送っていませんか?

私は仕事やプライベートで忙しくなると、どうしてもトゲトゲしい気持ちが出てきますが、

谷瑞恵さんの小説『語らいサンドイッチ』を読んで、そんな気持ちがふわっとどこかへ消え去りました。

恋に仕事に人間関係に悩む人たちに、ぜひ読んでほしい物語です。

おすすめ度:5.0

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こんな人におすすめ

  • トゲトゲしい気持ちがふわっと消えていく物語を読んでみたい人
  • サンドイッチをテーマにした物語に興味がある人
  • 前作『めぐり逢いサンドイッチ』が楽しめた人
  • 谷瑞恵さんの小説が好きな人

あらすじ:サンドイッチ店を経営する姉妹の物語

物語の主人公は、姉が立ち上げたサンドイッチ店「ピクニック・バスケット」で働くようになった清水蕗子(ふきこ)。

彼女は関東出身でしたが、半年前に姉の笹子に誘われて、大阪にあるこのお店を手伝うようになりました。

働き始めた当初は心に余裕がなく、思い通りにならないことや、予定通りでないことを楽しめませんでしたが、

半年経った今では、自分のことだけでなく、周りの人たちに興味が持てるようになり、誰かの力になりたいとさえ思えるようになりました。

そんな蕗子が、今回「どうにかしたい!」と思った相手は、キュウリを丸齧りしていた女子高生です。

彼女は水野知花といい、中学生のときに同じ卓球部の三戸真哉からキュウリの美味しさを教えてもらい、キュウリにハマったのですが、

久しぶりに再会した彼から、「高校生にもなってキュウリを丸齧りするなんて恥ずかしい」「そのキュウリはニセモノだ」と言われます。

しかし、そのキュウリは間違いなく、彼に紹介してもらった「新井さんのお日さまキュウリ」でした。

では、なぜ真哉は知花にそんな冷たい言葉を浴びせたかと言うと…。

という物語が楽しめる小説です。

感想①:優しい気持ちになれる物語

先ほどあらすじで、蕗子は姉のサンドイッチ店で働くようになってから他人にも優しくなったと書きましたが、

それは優しい姉の笹子と一緒に暮らすようになったからだけでなく、

取引先の人たちや常連さんたちと接するようになったことも関係していました。

一斤王子と呼ばれる食パン専門のベーカリーを経営している川端さんは、王子という呼び名が相応しいイケメンでしたが、

それを鼻にかけることなく、蕗子の悩みを聞いたり、一緒に悩んだりと、まるで蕗子に気があるかのように、優しく接します。

ウルトラマンのTシャツに麦わら帽という謎の組み合わせで通ってくる常連の小野寺さんも、

まるで父親のように、彼女の悩みを聞いたり、解決策を一緒に考えたりと優しく接してくれました。

瀧羽麻子さんの小説『女神のサラダ』でも、優しい人たちに囲まれて、トゲトゲしい感情がなくなっていく人たちの姿が描かれていましたが、

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この物語でも、優しい人たちに囲まれて暮らすと、自分まで優しい気持ちになれることがわかります。

感想②:サンドイッチを通して人とのつながりが描かれる

もちろん、蕗子が優しい気持ちになれたのも、常連さんや取り引き先のパン屋さんが優しい人だったのも、

笹子が「自分がつくるサンドイッチで来る人たちを笑顔にしたい」という思いをもって行動していたからです。

この小説ではそんな笹子の優しくて強い思いが描かれているのですが、

あらすじで紹介した『青い花火』という物語を含めて、全部で5つの短編から構成されています。

それぞれ簡単に紹介すると、

  • フィッシュソーセージサンドが大好きな保育園児と、「そんなモノを食べてはダメ」「好き嫌いはしてはいけない」と口出しをする祖母の物語
  • 懐かしのクラブハウスサンドイッチを求めるお客さんと、そのサンドイッチを気に入っていた母をもつ息子の物語
  • オレオレ詐欺のような電話をする女性が、おじいちゃんが探していた幻のジャム入りサンドイッチを探し求める物語
  • 結婚を反対する父と、父の反対を押し切って結婚しようとする娘の物語

これらの物語は、すべて笹子の作ったサンドイッチがきっかけで人間関係が修復されていき、本当に大切なものが見えてくる構成になっています。

三上延さんの小説『ビブリア古書堂の事件手帖』では、古書をテーマにした心に響くミステリーが描かれていましたが、

この物語でも、サンドイッチをテーマにした謎解き要素と、優しい気持ちになれる要素が掛け合わさった心に響く物語が楽しめました。

感想③:夢と恋に葛藤する姉妹に心揺さぶられる

さて、この物語の最大の魅力は、笹子と蕗子が、それぞれ「夢の実現」と「恋の成就」の両立に葛藤するところだと思います。

笹子はサンドイッチ店を立ち上げる前に勤めていたフランス料理店の元カレから、一緒に店を始めないか?と誘われましたが、

ある理由があってサンドイッチ店を続けていきたいと思っていました。

しかし、断れば彼との未来がなくなります。

一方の蕗子は、イケメンの川端さんに恋心のようなものを抱いていましたが、

これまでのように重いと感じられるのを恐れて一歩踏み出せずにいました。

それだけでなく、笹子が先輩シェフと結婚して、サンドイッチ店が無くなるかもしれないと恐れていたんですよね。

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この物語では、少女漫画のような恋愛ではなく、もっと優しくて現実味のある恋愛模様が描かれていたので、心にグサッと突き刺さりました。

まとめ

今回は、谷瑞恵さんの小説『語らいサンドイッチ』のあらすじと感想を紹介してきました。

恋に仕事に人間関係に、すべてに優しい気持ちになれる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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