将来どうなりたいか考えていますか?
私はこれから自分がどうなっていきたいのだろう…と悩むことがあるので、
坂木司さんの小説『アンと青春』を読んで、主人公・杏子の葛藤する姿に共感できました。
それだけでなく、杏子と立花さんの恋の行方が気になる物語でもあるんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 和菓子をテーマにした日常ミステリーに興味がある人
- 主人公の葛藤と恋愛が描かれた物語を読んでみたい人
- 前作『和菓子のアン』が楽しめた人
- 坂木司さんの小説が好きな人
あらすじ:和菓子屋でアルバイトをする主人公の物語
物語の主人公は、梅本杏子。
彼女は、前作『和菓子のアン』でみつ屋というデパ地下にある和菓子屋でアルバイトを始めましたが、
本作でもデパートを舞台に繰り広げられる謎に迫ります。

今回、杏子が気になった謎は、新春・和菓子フェアで見かけたクレームをつける男性の言葉でした。
その男性は、金沢和菓子・柿一という和菓子屋で接客をしていた男性店員にさんざん嫌気を言った挙句、
「いつまでこんな飴細工の鳥を置いておくつもりなんだか」
と言い残して去りました。
この言葉には、一体どんな意味が込められているのか…。という物語が楽しめる小説です。
感想①:和菓子が今すぐ食べたくなる短編集
この小説では、あらすじで紹介した物語を含めて5つの短編が楽しめます。
それぞれ簡単に紹介していくと、
- 女友達と京都にやって来た杏子が、お寺で上から目線で服装を非難してくる年輩の女性と出会い、みつ屋でクレームをつけてきたおばさんを思い出す物語
- みつ屋の向かいに新しく出店した洋菓子店「K」の店員に、杏子の先輩社員である立花さんが嫉妬する物語
- 娘とジュースを飲もうとしていたお母さんが、なぜか果物ジュース店で「何が入っているかわからないからダメ」と言い出す物語
- 長期休みをもらった立花さんが、杏子にメッセージを込めたお菓子を残してどこかに出かける物語
もちろん、前作同様に、どの物語にも美味しそうな和菓子が登場するので、実際に食べてみたくなるんですよね。
小川糸さんの小説『ライオンのおやつ』では、思い出のお菓子を食べてみたくなる物語が描かれていましたが、

この物語では、デパ地下にある和菓子店で、これまで食べたことのない和菓子を買ってみたくなりました。
感想②:将来を悩む主人公に共感
今回の物語は、前作に比べて杏子の葛藤が多く描かれています。
それは、杏子がみつ屋での立ち位置を気にし始めたからです。
アルバイトとしてではなく、社員になりたいのかな?と自問自答していました。
とはいえ、自分の甘さに気づき、将来どうすべきか悩んでいました。
たとえば、クレーマーに応対した話を立花さんにしたところ、クレーマーにも一部の理があるので、一度はお伺いすべきだと言われます。
この言葉で、杏子は接客を舐めていたことに気づくんですよね。
みんなが優しくしてくれるから、それにどっぷり甘えていました。
わからないことは聞きまくり、バックヤードの付き合いを店頭に持ち込もうとしていました。
いつでも、誰かが助けてくれると勘違いしていました。
バイトであることに引け目に感じているくせに、バイトだから助けてもらえるとどこかで思っていたのです。
西崎憲さんの小説『ヘディングはおもに頭で』では、自分の存在意義を追い求める主人公の姿に共感できましたが、

この物語では、杏子が自分をしっかりと見つめなおして、将来どうなりたいのかを真剣に考える姿に共感できました。
感想③:恋の行方が気になる
さて、この物語では杏子と立花さんの恋物語が描かれています。
特に今回は、みつ屋の向かいに新しく出店した洋菓子店「K」の店員・柏木さんと杏子が一緒に昼休憩をとったりするので、
その姿を見た立花さんが嫉妬するんですよね。
一方の杏子は、自分が太っており、人から好かれるなんて思ってもいないので、
立花さんの気持ちには気づかずに、友達として立花さんの悩みに寄り添おうとしました。
そんな二人の気持ちのすれ違いが描かれているので、読んでいて心が締め付けられます。
千早茜さんの小説『透明な夜の香り』では、お互い距離をとりながら惹かれあう主人公たちの恋物語が描かれていましたが、

この小説では立花さんの一方的な片思いに胸が締め付けられました。
まとめ
今回は、坂木司さんの小説『アンと青春』のあらすじと感想を紹介してきました。
杏子の葛藤と立花さんの片思いに心揺さぶられる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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