他人をあれこれ評価していませんか?
私もついつい評価してしまうことがありますが、
湊かなえさんの小説『白ゆき姫殺人事件』を読んで、悪意ある評価はしないでおこうと思いました。
こうした小さな悪意が、大きな悪意へと繋がっていくことがわかる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 小さな悪意が大きな悪意を生み出す物語に興味がある人
- 他人の不幸を喜ぶ人たちの物語を読んでみたい人
- 週刊誌記者の悪意を知りたい人
- 湊かなえさんの小説が好きな人
あらすじ:美しくて心優しい女性が殺される物語
物語は、週刊誌のフリーライターである赤星雄治のもとに、化粧品会社で働く狩野里沙子から電話がかかって来るところから始まります。
美人で優しい先輩・三木典子が雑木林で殺害されたというのです。
この事件に興味を持った赤星は、典子の同僚に取材をしたところ、
彼女と同期入社の城野美姫が怪しいことがわかります。
美姫はその名前ほど美しくもなく、平凡な女性だったので、美しい典子とよく比較されており、
また、同じ会社で働く篠山係長を典子に奪い取られたので殺したのではないか、という証言が得られたからです。
そこで赤星は、美姫の大学時代の同級生や小学校時代の親友、両親や地元住民などに取材を重ねたところ、
「美姫だったらやりかねない」という多くの証言を得ます。
さらに、美姫が中学時代に、「呪いの力」で周りにいる人たちを不幸にしたとか、
ボヤを起こして大惨事になりかけたことがあるといった証言まで得られました。
こうして赤星は、彼らの主張を脚色して「城野美姫が犯人」と言わんばかりの記事を週刊誌に載せましたが…。
という物語が楽しめます。
感想①:他人の不幸を喜ぶ人たちの恐ろしさがわかる
SNSには、他人の不幸を喜ぶ人たちが大勢いますよね。
たとえば、噂話が大好きで、話を面白くするために、内容を盛ったり、自分にとって都合の良い事実だけを書き込んだりする人たちがいます。
一方で、正義を振りかざしながらも、個人情報を晒して、相手を意図的に攻撃している人たちもいます。
漫画『いぬやしき』でも描かれていましたが、
殺人犯である獅子神皓を追い詰めるために、彼の住所を特定して晒したり、バカにしたり、彼の母親を自殺に追い込んだりと、
目に余る正義感を振りかざす人たちがいます。

こういった人たちは、攻撃した相手が苦しもうが、死のうが、心が痛みませんが、
まさに『白ゆき姫殺人事件』には、こういった人たちが多数登場するんですよね。
もちろん、SNSだけでなく、現実世界にもこういった人たちはいますが、
SNSで気軽に他人を攻撃する人たちの恐ろしさがよくわかる物語です。
感想②:売れるためには何をしても良いと考えている週刊誌の記者
もちろん、SNSだけが恐ろしいわけではありません。週刊誌も同じです。
むしろ、週刊誌は、これまで多くの人たちを死に追い詰めている恐ろしいメディアなので、よほどタチが悪いかもしれません。
伊坂幸太郎さんの小説『陽気なギャングは三つ数えろ』でもその恐ろしさが描かれていますが、
週刊誌の記者である火尻は、自分のでっち上げた記事で、ある女性を自殺に追い込んでいましたが、まったく反省していませんでした。
むしろ、人間には他人の不幸を喜ぶ習性があるので仕方がないと言い出します。
つまり、他人の不幸を求める人間がいなくならない限り、ゴシップ記事はなくならないため、でっち上げた記事を書くのも仕方がないと言っているんですよね。
この物語に登場する赤星も、そうした考えの持ち主でした。
こういった物語を読むと、改めてゴシップ記事は読まないに限ると思えます。
感想③:目に見えているものが真実とは限らない
ここまで紹介してきたように、目に見えるものがすべて真実とは限りません。
むしろ、目に見えているものは、誰かの悪意で、「白」を「黒」に変えることが出来るんですよね。
このように考えていくと、普段から接しているニュースも真実かどうか疑わしくなります。
だからこそ、自分のアタマで考えて行動していく必要があるのです。
それだけでなく、目に見える世界に惑わされないようにするためにも、数学者の岡潔さんが『数学する人生』でも言われているように、
目に見えない世界、すなわち宗教のいう基本的なことは取り入れて、ブレない哲学を持つことが幸せへの第一歩なのかもしれない…と思える物語でもありました。

まとめ
今回は、湊かなえさんの小説『白ゆき姫殺人事件』のあらすじと感想を紹介してきました。
井上真央さん主演で映画化もされている物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
コメント