一穂ミチ『スモールワールズ』感想/家族を傷つけても自分らしく生きるしかない

おすすめ小説

家族をテーマにした物語といえば、『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』など心温まる物語が思い浮かびます。

しかし、最近では傷つけあってしまう家族をテーマにした物語が増えてきているように思います。

一穂ミチさんの小説『スモールワールズ』もそのひとつですが、これまでとは一味違う結末の物語が楽しめました。

バラエティに富んだ6つの短編の魅力に惹き込まれる小説です。

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『スモールワールズ』の情報

タイトル スモールワールズ 
著者 一穂ミチ 
おすすめ度 3.5 
ジャンル ヒューマンドラマ 
出版 講談社 (2021/4/22) 
ページ数 306ページ (単行本) 
2022年本屋大賞ノミネート作品です。

おすすめポイント

  • ラストに驚きが味わえる、バラエティに富んだ6つの短編が楽しめる
  • 家族のことで悩み苦しむ主人公たちに共感できる
  • 家族を傷つけても自分らしく生きるしかないと励まされる

『スモールワールズ』のあらすじ

夫の不倫に気づかないふりをしている主婦が、親から虐待を受けている中学生に手を差し伸べる『ネオンテトラ』と、出戻ってきた豪快な性格の姉とふたたび暮らすことになった高校生の弟を描いた『魔王の帰還』。

生後10か月で突然亡くなった孫の側にいた祖母に疑いをかける『ピクニック』。兄を殺された妹が、加害者と往復書簡を交わす『花うた』。十数年ぶりに再会した娘が男の姿になって父親の前に現れる『愛を適量』。

そして、大切なことを言えないまま別れることになった先輩と後輩を描く『式日』の6つのバラエティに富んだ物語が楽しめる短編集です。

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『スモールワールズ』の感想

ラストに驚きが味わえる、バラエティに富んだ6つの短編が楽しめる

『スモールワールズ』では、伊坂幸太郎さんの小説『首折り男のための協奏曲』のように、短編同士のゆるいつながりが楽しめます。

ある短編に登場した人物が、年をとって別の短編に登場するなど、短編同士のつながりを見つける楽しさが味わえます。

しかし、6つの短編に共通しているテーマは、「家族の呪い」ともいうべきものだったので、読んでいて心が痛みました。

とはいえ、すべての短編でラストに驚きが味わえます。

しかも、読み終わったときに希望が持てる「心が温まる驚き」や、嫌な気分になる「イヤミス要素のある驚き」など、バラエティに富んだ驚きが楽しめたので、心が動かされました。

家族のことで悩み苦しむ主人公たちに共感できる

そんなバラエティに富んだ物語の主人公たちは、誰もが家族のことで悩み苦しんでいましたが、悩んでいることを隠していました。

たとえば、『ネオンテトラ』では、夫に不倫をされている主人公が、子供が欲しくてもできない現状を不満に思い、夫に内緒で親に虐待を受けている中学生に手を差し伸べ、母性本能を満たそうとする姿が描かれています。

他にも、『魔王の帰還』では、豪快な性格の姉が、突然離婚すると言って実家に帰ってきたけれど、なぜ離婚することになったのかは決して明かそうとしない姿が描かれています。

「私たちの悩みを紐解けば、そのほとんどが人間関係の悩みに行きつく」と指摘している人もいるように、物語だけでなく、現実でも多くの人が人間関係で悩み苦しんでいます。

『スモールワールズ』では、その最も身近で、一歩間違えれば「呪い」にまで発展する家族関係の悩みが取り上げられていたので、主人公たちの悩む姿に共感でき、一気に惹き込まれました。

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家族を傷つけても自分らしく生きるしかない

最近では、『毒親』という言葉が一般的になり、親の言うことを聞いて生きる必要はないという風潮が高まっています。

『スモールワールズ』では、親子関係にとどまらず、夫婦や兄妹など、家族に自由を奪われた登場人物たちの姿が描かれています。

大小はありますが、誰もが家族の呪縛から抜け出せず、また、呪縛から抜け出そうとすると、傷つけあってしまう姿を取り上げています。

家族という身近な存在だからこそ、悩みを隠していることに気づけずに、わかりあえていると勘違いし、その勘違いで相手を傷つけ、また、そうした家族の呪縛から抜け出そうとすると、さらに傷つけあってしまう姿が描かれていたので、心が痛みました。

しかし、たとえ傷つけあったとしても、自分らしく生きるしかない…というメッセージが込められているように思い、少し気が楽になりました。

本来、家族は互いを守りあうべき存在ですが、自分らしく生きるには、傷つけあうことになっても仕方ないと思える、これまでにはない視点の物語でした。

まとめ

今回は、一穂ミチさんの小説『スモールワールズ』のあらすじと感想を紹介してきました。

読み終わったときに希望が持てる「心が温まる驚き」や、嫌な気分になる「イヤミス要素のある驚き」など、バラエティに富んだ物語が楽しめる短編集です。

また、たとえ家族同士で傷つけあうことになったとしても、自分らしく生きるしかない…というメッセージに励まされる小説でもありました。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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