伊予原新『八月の銀の雪』感想/自然科学と人との出会いをテーマにした物語が楽しめる

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自然科学はお好きですか?

私は技術系の仕事をしていることもあり、自然科学は大好きですが、

伊予原新さんの小説『八月の銀の雪』は、自然科学と人との出会いをテーマにした物語が楽しめました。

とはいえ、短編によっては、自然科学と物語のつながりが弱く、肩透かしを食らったように感じたんですよね。

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おすすめ度

おすすめ度:2.5

  • 自然科学に興味が持てる
  • 短編『八月の銀の雪』が面白い
  • 一部の短編でこじつけ感が強い

作品の簡単な紹介

今回は、伊予原新さんの小説『八月の銀の雪』を紹介します。

自然科学に興味がありますか?

地球の内部に積もる鉄の雪やクジラの歌声、伝書鳩の空間認識力といった自然科学に興味がある方におすすめの物語です。

とはいえ、特に後半3篇では、自然科学と物語のつながりが弱く、無理やり組み合わせたような印象を受けました。

説明したい自然科学に合いそうな物語を作ってこじつけたように思え、肩透かしを食らったように感じたんですよね。

タイトルにもなっている『八月の銀の雪』が面白かっただけに残念ですが、全体としては主張がボヤけた物語に思えました。

あらすじ:夏になっても就職が決まらない主人公の物語

物語の主人公は、40社以上にエントリーしても、二次面接を突破したことがない堀川。

彼は、子供の頃から複数の人間に注目されると言葉が出なくなる問題を抱えており、

それが原因で一番入社したかった大手機械メーカーの一次面接で話せなくなり、落とされたのでトラウマになっていました。

それだけでなく、一年休学していた理由も言えずにいたので、何度面接を受けても落とされ続けていたんですよね。

そんな彼は、大学の近くにあるコンビニでアルバイトをしているベトナム人のグエンさんという女性を「使えない奴」だと心の中で罵っていましたが、実は彼女は…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:悩みを抱えていた主人公たちが変わっていく姿に励まされる

この小説では、あらすじで紹介した物語を含めて、5つの短編が描かれています。

あらすじで紹介した物語を除いて、それぞれ簡単に紹介していくと、

  • シングルマザーとして娘を育てていくことに限界を感じていた野村が、博物館で生物画を描く宮下さんと出会い、もう一度頑張ってみようと思う物語
  • 不動産屋で契約社員として働いていた園田が、立ち退きを迫っていたおばあさんの部屋に来るようになった伝書鳩の飼い主を探す物語
  • 彼氏にフラれて落ち込んでいた瞳子が、SNSに投稿した写真に文句をつけてきた男性と出会い、会話するようになる物語
  • 原発の保守・点検をする会社に勤めていた辰郎が、砂浜で凧をあげる滝口と出会い、子供たちと一緒に凧揚げをしようと思う物語

どの物語も、悩みを抱えていた主人公たちが、これまで接点のない人たちと出会い、前向きに変わっていく姿が描かれているんですよね。

米澤穂信さんの小説『いまさら翼と言われても』では、良い人と出会えるかどうかで、その後の人生が大きく変わることがわかる物語が描かれていましたが、

米澤穂信『いまさら翼と言われても』感想/良い人との出会いがその後の人生を大きく変える
 人に恵まれていますか?  私は人に恵まれてきたおかげで今の自分がありますが、米澤穂信さんの小説『いまさら翼と言われても』を読んで、良い人に巡り合えるかどうかでその後の人生が大きく変わることに気づきました。  どれだけ善...

この小説でも、出会いをきっかけに人生を前向きに捉えていく主人公たちの姿が描かれていたので励まされました。

感想②:自然科学に興味が湧く

先ほども紹介したように、この小説では自然科学を取り上げています。

たとえば、あらすじで紹介した物語では、地球の内部には、地殻、マントル、外核、内核があり、内核は地球の中にあるもう一つの星だと言います。

内核は、月の3分の2くらいの大きさで、液体の外核に囲まれて浮かんでいるそうです。

表面には、高さ100メートルもある鉄の結晶が森のように生い茂っており、鉄の結晶の小さなかけらが、銀色の雪のように降っているかもしれないというんですよね。

他にも、クジラの脳は人間の脳よりもニューロンが多く、外の世界に働きかける能力の代わりに、精神世界を発達させている可能性があることや、

鳩が3700キロ離れた地点から帰って来れるのは、鳩の目には、磁場の情報が視覚パターンとして映っている可能性があるといったことが明かされるので、驚きの連続です。

東野圭吾さんの小説『予知夢』では、幽霊やポルターガイスト現象を科学的に解き明かす物語が楽しめましたが、

東野圭吾『予知夢』感想/幽霊やポルターガイスト現象はすべて科学で説明できる!?
 幽霊やポルターガイスト現象を信じていますか?  私はあまり信じていませんが、東野圭吾さんの小説『予知夢』の主人公はまったく信じていませんでした。それどころか、すべての心霊現象は科学的に説明できると信じて疑わないんですよね。 ...

この小説では、これまで知らなかった自然科学がわかりやすく説明されていたので、興味が持てました。

感想③:自然科学と物語のつながりが弱い

とはいえ、自然科学と物語のつながりは弱いように思います。

あらすじで紹介した『八月の銀の雪』では、自然科学と物語のつながりが楽しめましたが、

それ以外の短編では無理やりつなげたような印象が拭いきれませんでした。

できるだけネタバレにならないように書くと、

たとえば、不動産屋で働く園田が、立ち退きを迫っていたおばあさんの部屋に来るようになった伝書鳩の飼い主を探す物語では、

長い間実家に帰っていない園田が、伝書鳩の帰省本能を知って鳩を可愛く思うようになり、たまには実家に帰ってみようかな…という物語が描かれています。

もちろん、つながってはいますが、結構な量の伝書鳩の説明を読んだ後に、「実家に帰ってみようかな?」で終わってしまうので、「え!?それだけ?」って思ってしまったんですよね。

もっと深い何かがあると期待していたのに、すごく軽い内容だったので、肩透かしを食らった感じです。

山本文緒さんの小説『自転しながら公転する』では、現実味のない物語が描かれていたので、肩透かしを食いましたが、

山本文緒『自転しながら公転する』は幸せのカタチはひとつではないことがわかる物語
世間一般で言われている幸せを追い求めていませんか? 私は、自分にあった幸せを追い求めているつもりですが、 山本文緒さんの小説『自転しながら公転する』を読んで、改めて幸せのカタチはひとつではないことがわかりました。 恋愛と結...

この小説では、長めの自然科学の説明を読んだ後の結論が「これ?」と思ってしまう物語が多かったので、残念に思いました。

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まとめ

今回は、伊予原新さんの小説『八月の銀の雪』のあらすじと感想を紹介してきました。

自然科学と人との出会いをテーマにした物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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