裁判は殺人犯を守るだけでなく彼らの武器にもなる/東野圭吾『沈黙のパレード』感想

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裁判というシステムは公平だと思いますか?

私は基本的に公平だと思っていますが、東野圭吾さんの小説『沈黙のパレード』を読んで、裁判はときに無力であるだけでなく、殺人犯にとっての武器にもなることに気づき、衝撃を受けました。

6年ぶりのガリレオシリーズとあって、期待を裏切らない面白さでしたが、それ以上にいろいろ考えさせられる物語だったんですよね。

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殺人犯が裁判を武器として使いこなす姿に恐怖を覚える

物語は、並木裕太郎と真智子の娘である佐織が行方不明になってから3年後、静岡県にあるゴミ屋敷で遺体となって発見されるところから始まります。

彼女が発見されたのは、23年前に殺害された優奈ちゃん事件の被告である蓮沼寛一の実家でした。

当時12歳だった優奈ちゃんは、夕方に近くの公園に行くといって出かけたまま帰って来なくなりました。

その後、山中で遺体となって発見され、ばらばらにされた骨に焼かれた形跡があったことから、警察は焼却炉でペットの死体を焼いたという蓮沼に目をつけましたが、彼は何ひとつ話しませんでした。

蓮沼の家にあった冷蔵庫から、優奈ちゃんの血痕と肉片も見つかりましたが、裁判でも沈黙を貫いたため、証拠不十分となって無罪になったのです。

それだけでなく、優奈ちゃん事件の裁判が終わると、蓮沼は刑事保証金と裁判費あわせて1000万円以上を請求し、手にしていたんですよね。

このとき、若手刑事として優奈ちゃん事件に関わっていた草薙俊平は、今度こそは蓮沼を逮捕しようと息巻きましたが、佐織の事件でも証拠不十分となって釈放されました。

しかも、蓮沼は、佐織の両親に対して、「あることないこと並べて俺を警察に売ったのはお前だろう」と言って、賠償金を請求すると言い出します。

このように、明らかに殺人犯であっても、決定的な証拠や自白がなければ、裁判というシステムでは罪に問えないことがわかります。

それだけでなく、殺人犯にとって金儲けの手段としても裁判が利用できる姿が描かれていたので、衝撃を受けました。

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トリックが気になってページをめくる手が止まらなくなる

この小説では、優奈ちゃん事件と佐織の事件の被告であった蓮沼が、何者かに殺害されてから本格的に物語が始まります。

容疑者は、佐織の父親である並木裕太郎とその友人である戸島修作、佐織を歌手に育てようとしていた新倉直紀に、彼氏だった高垣智也など大勢います。

しかも、彼らが協力して蓮沼を殺害したことがわかるように描かれているのですが、誰が、どうやって手を下したのかはわからないため、一気に惹き込まれました。

わかっているのは、蓮沼が増村という前科者と一緒に暮らしていたことと、彼らが住まいとしていた倉庫の管理事務所にある小さな部屋で蓮沼が窒息死していたということだけです。

睡眠薬の成分は検出されましたが、首の骨や関節に異常はなく、絞殺などの単純な方法で殺害されたわけではありませんでした。

ここにタイトルにもなっている「パレード」が関係してきて、

その後、優奈ちゃん事件と佐織の事件をつなげる「ある人物」が謎を解く鍵だと明かされるので、続きが気になってページをめくる手が止まらなくなったんですよね。

もちろん、あの人が推理にあたるので、ワクワク感も止まらなくなる物語でした。

湯川教授の優しさに心が動かされる

さて、この小説は久しぶりのガリレオシリーズとあって、教授になった湯川学の推理力に惹きつけられます。

もちろん、彼の魅力にも惹きつけられるのですが、特にラストは湯川教授の優しさに心が動かされました。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ある人物に会いに行き、真相を解き明かし、「あなた方が不利益を被る話をしたいわけではない。選択肢がある」と、真実を明らかにした上で、今後の行動をその人物に委ねます。

しかも、その理由を、

「僕には苦い経験があるんです。以前にも似たようなことがありました。愛する女性のために、すべての罪を背負おうとした男がいたんです。でも僕が真相を暴いたため、その女性は良心の呵責に耐えきれなくなり、結果的に彼の献身は水疱に帰してしまいました。同じようなことはもう繰り返したくない、という気持ちがあります」

というんですよね。

『容疑者Xの献身』を読んだ方は、グッとくること間違いなしです。

このように、久しぶりのガリレオシリーズとあって湯川教授の推理力に惹きつけられますが、それだけでなく、湯川教授の優しさにも心が動かされる物語でした。

まとめ

今回は、東野圭吾さんの小説『沈黙のパレード』を紹介してきました。

  • 殺人犯が裁判を武器として使いこなす姿に恐怖を覚える
  • トリックが気になってページをめくる手が止まらなくなる
  • 湯川教授の優しさに心が動かされる

以上、3つの魅力がある物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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