宇宙人は存在すると思いますか?
私は存在するのではないかと思っていますが、
山田宗樹さんの小説『SIGNAL シグナル』を読んで幼い頃に想いを馳せていた宇宙と地球外知的生命に再び興味が持てました。
宇宙は私たちが考えている以上に今でも謎に満ちているんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- ラストで感動できる物語が好きな人
- 地球外知的生命に興味がある人
- 科学との向き合い方をテーマに描いた物語を読んでみたい人
- 山田宗樹さんの小説が好きな人
あらすじ:地球外知的生命について興味津々の主人公の物語
物語の主人公は中学2年生の芦川翔。
彼は高校2年生の朱鷲丘(ときおか)先輩と語り合いたいことがありました。
それは、カリフォルニア大学バークレー校の研究で明らかになった「さんかく座」領域にある渦巻銀河M33から奇妙な人工電波が発せられているというもので、
人類史上初めて地球外知的生命(ETI)が確認された興奮を天文学者を母にもつ朱鷲丘先輩と共有したいと思っていたのです。
ところが、朱鷲丘先輩はとても変わった人物でした。
たとえば、彼と同級生の滝沢先輩からは、彼が本を読んでいる間は話しかけてはいけないと言われます。
そこで自習室が閉まるまで待っていた芦川でしたが、
閉まる時間になっても一向に動く気配がないので、思い切って話しかけたところ、無視して帰られてしまうんですよね。
それだけでなく、次の日は声をかけられないようにトイレで自習しはじめました。
それでも芦川は、朱鷲丘先輩に声をかけ続けたところ…。という物語が楽しめる小説です。
感想①:宇宙について興味がもてる
あらすじで、「さんかく座」領域にある渦巻銀河M33から奇妙な人工電波が発せられ、人類史上初めて地球外知的生命(ETI)が確認されたと紹介しましたが、
科学的な裏付けもあるので、読んでいてETIは本当に存在するのかもと思えてきます。
たとえば、この物語では、M33ETIからの声が聞こえる選ばれた人たちの姿が描かれています。
彼らは、いつも謎の声が聞こえており、それが間違いなくM33から届けられていると確信していました。
もちろん、多くの人たちは作り話だと言って信じませんでしたが、そう簡単に否定することはできません。
なぜなら、地球では未だ発見されていない新しい科学デバイスによるものかもしれないからです。
今、私たちが使っているスマホも200年前の人たちからすると信じられないものですよね。
相沢沙呼さんの小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』では、霊媒は本当に存在するのかもと思える物語が描かれていましたが、

この小説では、地球外知的生命は存在するのかもと信じたくなる物語が描かれていました。
感想②:科学との付き合い方がわかる
先ほど、朱鷲丘先輩はとても変わった人物だと紹介しましたが、それは徹底的に科学と向き合っていたからです。
朱鷲丘先輩は、担任を呆れさせるほど無口で、読書を邪魔されたくないばかりにトイレに引きこもり、クラスメイトの女子から「これ以上ないくらい変わっている」と言われる人物でしたが、
それは議論する価値がない会話ばかりが飛び交っていたからです。
実際、芦川が「M33ETIは自分たちの文明が消滅することを悟り、自分たちの存在した証を、宇宙のどこかにある知的生命に向けて伝えようとしたのではないか」と言うと、
朱鷲丘先輩は、君の仮説には欠点があると言って、一気に自論を語り始めます。
また、大人になって再会したときも、朱鷲丘先輩は、
理解不能な存在を、理解可能な枠に押し込めるのではなく、理解不能のまま、理解不能なものとして受け入れるべきだと言うんですよね。
これこそが科学者のあるべき姿です。
数学者である岡潔さんも、今の日本人が幸せを感じられないのは宗教的な考えを否定しているからだと言われていましたが、

この物語でも、科学者として新しい発見をするには、理解不能な存在を受け入れることがはじめの一歩だとわかります。
感想③:ラストは感動できる物語
さて、この小説では大きく二つの物語が描かれています。
物語の前半は、芦川が朱鷲丘先輩とコミュニケーションを取ろうとする姿が描かれており、
後半は、大人になった彼らがサイエンスライターと研究員という立場で再会し、芦川が謎の声が聞こえる人たちの苦悩を解消しようと奮闘する姿が描かれています。
謎の声が聞こえる人たちは、芦川がまだ中学生だった頃に、謎の人物に集められ、宇宙船の大群が地球に向けて出発した姿を脳内映像として目撃していました。
彼らは、M33ETIが地球に攻めてくるのではないかと考えて怯えたり、あるいは友好的な関係を築こうとしているのだといって議論を積み重ねてきましたが、
M33シグナルが確認されて17年経った今でも、真実は解き明かされていませんでした。
そのため、彼らは自分たちが見た映像は嘘だったのではないかと疑心暗鬼になったり、何の為に映像を見せられたのかと悩んだりしていたのです。
そんなとき、朱鷲丘先輩がM33シグナルの暗号を解いたと発表したのですが、内容はまったく教えてくれませんでした。
そこで、彼らと知り合った芦川がサイエンスライターとして、再び朱鷲丘先輩とコミュニケーションをとろうと奮闘するんですよね。
東野圭吾さんの小説『真夏の方程式』では、ある人物のために奮闘する湯川准教授の姿に感動する物語が描かれていましたが、
この小説でも、他人のために奮闘する芦川の姿とその結末に感動できました。
まとめ
今回は、山田宗樹さんの小説『SIGNAL シグナル』のあらすじと感想を紹介してきました。
宇宙に、そして地球外知的生命に興味が持てる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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