誰かに仕事を与えられるのを待っていませんか?
私も最近は惰性で仕事をしていたので、古内一絵さんの小説『二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ』を読んで反省しました。
情熱を注ぎこめる仕事がしたいのなら、誰かに期待するのではなく、自らが新しい風を起こす存在になる必要があることに気づかされたからです。
『二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ』の情報
おすすめ度の理由
『二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ』のあらすじ
惰性で仕事をしていませんか?
老舗の映画会社・銀都活劇でDVDの宣伝をしている砂原江見もその一人。
彼女は、入社以来、映画の宣伝チームで働いていましたが、部下からチーム長のポジションを乗っ取られ、数年前にDVDの宣伝チームに飛ばされました。
しかも、銀都活劇が大手IT企業資本の映画配信会社・マーベラスTVの傘下に入ることが決まったため、リストラされる可能性がありました。
このような背景があったので、江見は自分が何に惹きつけられてこの会社にいるのか、よく分からなくなっていました。
どうしてもこの作品を届けたいという情熱を燃やしていた時期は随分と遠くなり、与えられた仕事を淡々とこなすようになったからです。
しかし、新元号『令和』の時代に突入したこともあり、このままではダメだという思いが湧いてきた彼女は、90年代にミュージシャンのカジノ・ヒデキらが解説していた映画『サザンクロス』のデジタルリマスターを再販し、そのプロモーションとしてイベント上映をしようと思いつきます。
はじめは誰もがこの企画に乗ってくれませんでしたが、諦めずに挑戦していったところ…。という物語が楽しめる小説です。
『二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ』の感想
まず、この小説を読んで感じたことは、90年代と比べて今はとても働きづらい環境になったということです。
銀都活劇では、映画宣伝担当の正社員採用をやめ、作品契約というフリーランスばかりを集めて仕事をしていたので、誰もが自分の優秀さをアピールすることだけに必死になり、現場は殺伐としていました。
また、権力主義の人たちが、我が身を守るために序列確認と生贄探しに勤しんでいたことも殺伐とする要因でした。
さらに、トップも銀行などの出向組で構成されていたので、映画の宣伝も、お客様に届く方法を模索するよりも、たいして関係のない芸人やタレントを呼んで、ワイドショー向けのイベントをやる方が、結果はどうあれウケがよかったのです。
そのため、誰もが仕事に情熱を持つことなく惰性でこなしていたのですが、一方の江見は、権力に興味がなく、仕事に情熱を注ぎたいと思っていたので、そうした仕事をこなしつつも、新しい仕事を模索していました。
そして、90年代に情熱を注ぎこんで仕事をしていた先輩社員たちの姿を思い出し、あらすじでも紹介した企画を立ち上げるんですよね。
しかも、まったく仕事をしない上司や、江見からチーム長のポジションを奪った元部下、息子の中学受験のために会社を辞めた先輩などを巻き込んで、企画を実現するために次々と行動していきます。
では、なぜ彼女は誰からも指示されていないのに、多くの人を巻き込むことができたのでしょうか。
それは、彼女が他人のためではなく、自分のために働いていたからです。
誰かから与えられた仕事では情熱を注ぐのは難しいですが、本当に心からやりたいと思える仕事であれば、どんな困難も乗り越えていけるのだと気づかされます。
もちろん、昔に比べて、今は新しいことに挑戦する機会も少なく、仕事に対する不満や将来に対する不安の方が大きいかもしれません。
しかし、江見のように、それらを吹き飛ばす情熱と行動力があれば、どのような環境になっても仕事が楽しめるのだと勇気がもらえる物語でした。
まとめ
今回は、古内一絵さんの小説『二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ』のあらすじと感想を紹介してきました。
情熱を注ぎこめる仕事がしたいのなら、誰かに期待するのではなく、自らが新しい風を起こす存在になる必要があることを教えてくれる物語です。
気になった方はぜひ読んでみてください。
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