伊坂幸太郎『シーソーモンスター』感想/嫁姑問題を解決する方法を教えてくれるサスペンス

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嫁姑問題を解決する方法をご存知ですか?

私は嫁姑問題で悩まされてきたので、解決する方法があれば知りたいと思っていますが、

伊坂幸太郎さんの小説『シーソーモンスター』を読んで、その解決方法のひとつがわかりました。

もちろん、方法を知っても解決するのは簡単ではありませんが、バランスをとることが大切だとわかる物語だったんですよね。



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『シーソーモンスター』の情報

タイトル シーソーモンスター
著者 伊坂幸太郎
おすすめ度 4.5
ジャンル サスペンス
出版 中央公論新社 (2019/4/5)
ページ数 428ページ (単行本)
8組の小説家たちが原始時代から未来までのそれぞれの時代の物語を描く『螺鈿プロジェクト』の一作品です。
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おすすめ理由

  • 馬が合わない人がいるのは先祖からの因縁だという設定が面白い
  • 嫁姑問題を解決するひとつの方法がわかる
  • 続きが気になってページを捲る手が止まらなくなる
  • 『スピンモンスター』のラストがあまり印象に残らない

『シーソーモンスター』の簡単な紹介

今回は伊坂幸太郎さんの小説『シーソーモンスター』を紹介します。

バブル絶頂期に嫁姑問題で悩まされている主人公の物語『シーソーモンスター』と、

AIが人間をコントロールするようになった近未来に因縁の相手から追いかけられる主人公の物語『スピンモンスター』の2編が収録されている小説です。

これら2つの物語は、舞台となる時代は違うものの、顔を見るだけで歪みあってしまう嫁姑やライバルが登場し、

また、「争いは無くならない。だとしたら、僕たちはどうする?」を共通のテーマとして描かれています。

そのため、まったく時代が違う2つの物語が、どこか繋がっているかのような感じがして、より一層楽しめたんですよね。(ある登場人物が両方の物語に登場しているのも関係していますが)

とはいえ、個人的には『シーソーモンスター』は心が動かされましたが、一方の『スピンモンスター』はあまり印象に残りませんでした。

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『シーソーモンスター』のあらすじと感想

ここからは、『シーソーモンスター』のあらすじと感想を紹介していきます。(『スピンモンスター』については、後ほど紹介します。)

はじまり:嫁姑問題に悩まされる主人公

あらすじ

物語の主人公は、製薬会社に勤める北山直人。

彼は友人の結婚披露宴に出席するために乗った新幹線で、偶然、隣の席に座っていた塩田宮子と結婚し、今では幸せな毎日を過ごしているはずでしたが…。

同居している宮子と母のセツが顔を合わせれば喧嘩ばかりしていたので参っていました。

一方の宮子は、情報員としてコミュニケーションについてかなり訓練を積んできたので、姑とも上手くやっていける自信を持っていましたが、現実はそう甘くありませんでした。

なぜか姑と顔を合わせると、イライラして余計な一言をいってしまうのです。

そんな宮子に、セツを訪ねてやってきた生命保険会社の営業をしている石黒市夫が、海の一族と山の一族の話をしたことで…。

感想

どうしても気が合わない人がいるのは、海の一族と山の一族というご先祖から伝わる因縁だという設定が面白い物語です。

だからこそ、海の一族である宮子と、山の一族であるセツは顔を合わせれば喧嘩ばかりしていたのですが、

喧嘩の内容は、「絵本をどこに置いたのか?」とか、「孫の顔はいつ見られるのか?」など、どうでもいいことばかりだったので、そんな二人に板ばさみにされる直人が可哀想に思えました。

とはいえ、直人はそんな板ばさみにあっても、どこか楽観的なので、良い意味でつらさが伝わってこなかったんですよね。

また、宮子は元情報員(いわゆるスパイ)で、とても強いはずなのに、最大限の我慢をしてセツと接しているところにも面白みを感じます。

このように、とても変わった家族の物語が描かれていたので、一気に惹きつけられました。

犯人は義母?:何者かに命を狙われる宮子

あらすじ

北山直人は、これまで面識がなかったO病院の元院長に指名されて接待ゴルフに参加していました。

元院長は、直人の父と小学校時代の同級生で、父が神社の階段から落ちて亡くなったと言うと、「誰かの故意が関係していないか?」と言い出します。

一方で、直人からその話を聞いた宮子は、保険金を手に入れるために、セツが手をかけたのではないかと考えました。

そこで、知り合いの情報部員に義父の死について調べてもらったところ、目撃者がいたことがわかり、しかもその目撃者はセツと会った直後に交通事故で亡くなっていたことがわかります。

さらに、セツの両親も交通事故で亡くなっており、その保険金で借金の返済をしていたことがわかりました。

こうして、セツが義父を殺した犯人だと確信を深めた宮子は、彼女が出かけている隙に箪笥を調べていたところ、なぜか予定より1時間も早く帰ってきたので…。

感想

ここから物語としては、ハラハラ&ドキドキが止まらない展開をしていきます。

義母のセツが怪しいと思い、彼女の周辺を探り始めた宮子でしたが、その数日後から命を狙われるようになりました。

庭に洗濯物が落ちていたので、拾いに行こうとすると、アタマ目がけて植木鉢が落ちてきたり(このときセツは2階にいた)、交差点で信号待ちをしているときに小太りの男性に押されたり、

さらに郵便局員の格好をした男性が家にやってきてナイフで襲ってきたりと、次々と危ない目に遭います。

とはいえ、元情報員の宮子は、そんな危機も難なく乗り越えていくのですが、本当にセツが犯人なのか気になってページを捲る手が止まらなくなったんですよね。

ユニークな登場人物に加えて、物語の展開が気になる構成だったので、一気読みしてしまいました。

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誘拐〜ラスト:拉致された直人を宮子が助けに向かう

あらすじ

こうして義母のセツを疑っていた宮子でしたが、突然、直人が勤めている製薬会社から、彼の行方がわからないという連絡がきます。

何かあると思った宮子は、直人から電話がかかってきたときに、元同僚にお願いして逆探知を行い、彼の居場所を突き止めました。

ところが、突き止めた場所に着いたときには、直人は別の場所に連れて行かれたことがわかり、さらに直人を拉致した人物に車で撥ねられて左足を痛めます。

しかも、警棒で何度も殴られたので、宮子は痛みでもう無理だと諦めそうになったところ…。

感想

あまり詳しく書くとネタバレになるので、触りだけを書きますが、

ラストは思ってもいなかった方向に(でも期待していた方向に)物語が展開していったので、驚きと爽快感が味わえました。

特に、顔を合わせれば喧嘩ばかりしていたセツと宮子の二人が、ラストで折り合いをつける方法を模索するところが心に残りました。

たとえ馬が合わなくても、互いに納得できる距離感を協力して模索することが大切だというメッセージが込められているように思います。

それだけでなく、ラストの一文に感動しました。

『スピンモンスター』のあらすじと感想

では次に、『スピンモンスター』のあらすじと感想を紹介していきます。

はじまり:謎の人物から郵便配達を頼まれる主人公

あらすじ

物語の主人公は、フリーで郵便配達をしている水戸直正。

彼は小学3年生の夏休みのど真ん中に、青森へ旅行に行くために、家族と自動運転車に乗って新東北自動車道を北上していました。

しかし、サービスエリアに寄ろうとしたとき、同じ車種で色違いの車が追い越してきたので、衝突します。

これが原因で直正の両親と姉が亡くなりましたが、ぶつかってきた相手の車に乗っていた家族も、小学3年生の檜山景虎を残して亡くなりました。

その後、双方の祖父母が裁判で激しい闘いを繰り広げましたが、自動運転のプログラムにバグがあったこと、また事故現場を映していたカメラが壊れていたこともあり、曖昧に終わります。

そして現在。新幹線に乗って配達先に向かっていた直正は、トイレから出たときに、後方車両に景虎の姿を見かけたので…。

感想

物語の舞台は、自動運転車が普及し、AIが人類をコントロールするようになった近未来。

そんな近未来で、自動運転が原因で家族を失ったフリーの配達員である直正が、同じく家族を失った警察官の景虎と新幹線で再会し、逃げる側と追いかける側に分かれて闘いを繰り広げていく物語が描かれています。

眼鏡をかけた謎の人物が新幹線で直正の隣に座り、封筒を配達して欲しいと渡してきたことが始まりでした。

その封筒を開けると、中には手紙と封筒が入っており、手紙には、中尊寺という人物に封筒を渡して欲しいと書かれていました。

しかも、その手紙を直正に渡した謎の人物は、警察に追われ、新幹線を止めて逃げようとしたときに高架から落ちて亡くなるんですよね。

…というように、次の展開が気になる物語だったので、ページを捲る手が止まらなくなりました。

『シーソーモンスター』がバブル期を舞台に描かれているのに対して、『スピンモンスター』は同じテーマを近未来で扱っているところも、惹きつけられるポイントです。

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逃亡:中尊寺に連れられて逃げ惑う直正

あらすじ

謎の人物から渡された封筒を配達をするために指定された場所にやってきた直正は、そこで配達相手である中尊寺と出会います。

中尊寺は、直正に配達を依頼した人物は、人工知能『ウェレカセリ』の開発責任者である寺島テラオだと言いました。

さらに寺島は、警察から逃れるために、新幹線の緊急停止ボタンを押して、線路を走って高架から落ちて死亡したと言います。

だからこそ、配達してきた君も危ないと言われた直正は、彼と一緒に行動するようになりましたが、何のために、何から逃れているのか全くわかりませんでした。

唯一わかっていたことは、寺島が中尊寺宛に書いた「君の言う通りだった。オッペルと象。」という暗号だけです。

この暗号に込められた意味とは…。

感想

状況がわからない主人公が逃げ惑うというのは、『ゴールデンスランバー』の設定とよく似ていますが、

この物語では、近未来という点が新しく、監視カメラが至る所にあり、しかもAIが人間をコントロールしている社会でどう逃げるのか?という視点で描かれていたので、ハラハラ&ドキドキしました。

たとえば、流れてくるニュースは本当にあった出来事かわからないと言います。

人工知能『ウェレカセリ』が自分の都合の良いようにデマを流したかも知れず、一体何を信じて、何を疑えばいいのかわからなくなります。

こうしたフェイクニュースは、今でもSNSで多く流れていますが、

人工知能が加わると、より一層複雑化して真実が何かわからなくなることが、よくわかります。

もちろん、フェイクニュースを見抜くのは容易ではありませんが、対立を促すようなニュースに安易に反応しないようにしていこうと改めて思いました。

対立〜ラスト:追い詰められる中尊寺と直正

あらすじ

暗号の謎をとき、寺島テラオの意図を読み取った中尊寺と直正は、人気絵本『アイムマイマイ』の作者である、せつみやこさんのもとに向かいます。

そこで寺島が置いていったパソコンを入手した中尊寺でしたが、警察が追いかけてきて壊されてしまいました。

こうして、すべての道が防がれたように感じていた直正たちでしたが、中尊寺と寺島がともにγモコというバンドが好きだったことを思い出し…。

感想

この物語では、多くの対立が描かれています。

たとえば、車が衝突して家族を失った水戸直正 vs 檜山景虎だけでなく、人工知能肯定派の寺島テラオ vs 否定派の中尊寺敦、人工知能 vs 人間などがそうです。

とはいえ、対立がすべて悪いわけではありません。ぶつかり合わなければ進化も起きず、新しいものが生み出せないからです。

しかし、線を引いて、ここから向こうは敵だと考えると、対立は激化し、悲惨な結果に至ります。

だからこそ、対立はしても、敵味方だという線引きをしないことが、進化しながら不幸にならない秘訣だとわかりましたが…。

人間は感情に動かされる生物なので、なかなか難しい問題ですね。

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まとめ

今回は、伊坂幸太郎さんの小説『シーソーモンスター』のあらすじと感想を紹介してきました。

嫁姑問題を解決するひとつの方法を教えてくれる、驚きあるサスペンスが楽しめます。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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