古川智映子『土佐堀川』は自分の悩みがちっぽけに思えてくる物語

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悩みを抱えていませんか?

私は最近はあまり悩んでいませんが、以前はよく悩んでいました。

しかし、古川智映子さんの小説『土佐堀川』を読んで、自分の悩みがどれだけちっぽけだったのかを思い知らされたんですよね。

広岡浅子さんのようにカッコいい生き方をしていきたいと思える物語です。

おすすめ度:5.0

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こんな人におすすめ

  • 広岡浅子さんの一生に興味がある人
  • 困難に負けずに前進しつづける主人公の物語を読んでみたい人
  • 史実に基づいた小説が好きな人
  • 古川智映子さんの小説が好きな人

あらすじ:役立たずの男たちを放ってピンチに立ち向かう女性の物語

物語の舞台は幕末の日本。

京都の豪商・油小路三井家(あぶらのこうじみついけ)から両替商・加島屋(かじまや)に嫁いできた広岡浅子は、将来に不安を抱いていました。

なぜなら、商いはすべて番頭任せ。使用人ものんびりしており、何かにつけて無駄だらけ。

夫の信五郎は、謡曲や茶の湯など趣味三昧の毎日。このままでは、いずれ加島屋をたたむことになると思っていたからです。

そんな浅子の不安が的中するかのように、ひとつめの試練が訪れます。

江戸幕府が倒壊し、新たに明治政府が樹立したことで、これまで使用していた通貨(銀目)が廃止されたのです。

両替商である加島屋にとっては大損害の出来事です。

両替をすればするほど、借金は膨らみ、価値のない銀目だけが増えていきます。

新政府が保障してくれる見込みもありません。

しかも浅子は、当時は治らないと言われていた労咳(肺病)を患っていました。

彼女はこの難局をどう乗り越えるのか!?

という物語が楽しめます。

浅子の不可能を可能にする信念がすごい

先ほど紹介したように、労咳を患い、自分の命は長くないかもしれない…と考えた浅子は、

「一戦してからや!」と自分を励まし、この難局に立ち向かっていきます。

まず浅子が手をつけたのは、借金返済の弁明でした。

病気の体をおして、大阪から東京にある貿易商・毛利友信の屋敷に向かいます。

しかし、東京に着いた浅子を待ち受けていたのは厳しい現実でした。

友信は浅子に会ってさえくれません。

それでも浅子は毛利家に通い続けました。熱にうなされ、毛利家の玄関先で倒れるまで…。

こうした命がけの行動が友信の心を動かします。

ついに浅子は借金返済の延期にこぎつけることができたのです。

とはいえ、借金が減ったわけではありません。

そこで浅子が次に手をつけたのは、炭鉱事業の立ち上げでした。

今後、需要が劇的に増えるであろう石炭に目をつけたのです。

しかし、炭鉱は男社会。誰も浅子の意見に耳を傾けようとしませんでした。

それでも浅子は命がけで挑戦します。この事業に失敗したら自害するつもりで…。

こうした本気の行動が、男たちの心を動かしたんですよね。

そして借金返済の目処が立つ事業にまで成長します。誰もが不可能と思えることを可能にしたのです。

こういった物語を読んでいると、「何があっても成し遂げてみせる!」という強い意思をもって行動すれば、どんなことでも乗り越えていけることがわかります。

一番の敵は、自分の弱い心なのかもしれませんね。

問題が起きても人や環境のせいにしない

その後も浅子は、銀行や女子大学の設立、保険会社の立ち上げなど多くの新事業に挑戦していきました。

炭鉱が爆発しても、乳がんになっても、逆恨みした人間に刃物で刺されても、文句も言わずに前に進み続けます。

なぜなら、

「環境が悪い、条件が悪いいうて不満いうたかて、人間は大きゅうはならん。自分を深めるには、悪い条件の中でうんと苦労することや」

と考えていたからです。

実際、大同生命は、浅子が不運に見舞われたことがきっかけで誕生しました。

ある日、浅子は突然後ろから刃物で刺されます。

両替商時代の同業者・万屋がお金を貸してくれない浅子に逆恨みをして起こした事件でした。

ところが、ただでは転ばない浅子は、この事件をきっかけに生命保険の必要性に気づきます。

これからは医者も増えるだろうし、人間の寿命も延びていくはず。それなら生命保険の利益は大きくなるだろうと考えたのです。

「人間、何が幸いするか分かりません。こないな目に遭わなんだら、おそらく気いつかずに終わったと思いまっせ。万屋さま、さまどす」

と、刺された人間に感謝するほど、人や環境のせいにしませんでした。

つまり、現状がどうであれ、自分が変われば、すべてが変わるということです。

物事を前向きに捉え、行動していけば、想像以上の結果が出せるのかもしれませんね。

「自分のため」という狭い枠に捉われない

では、なぜ浅子は命がけで働き続けたのでしょうか。

それは、自分のためだけでなく、人のため、国のためという広い視野で物事を捉えていたからです。

当時、上流階級の女性たちは豪華なドレスを身にまとい、鹿鳴館でワルツを踊っていました。

それを知った浅子は、

生活はすべて男性に頼り、贅沢な衣装や宝石で身を飾り、深夜まで踊り狂う。それが新しい女性の生き方なのだろうか。勉学をし、しっかりと働き、世の趨勢を見極めていく。それが真の女性の自立というものではないのだろうか。

と、彼女たちの将来を憂いていました。

そこで、浅子は成瀬仁蔵(なるせ じんぞう)と共に、女子大学の創立に奔走します。

たとえ自分が借金を抱えることになっても、女性のためになると考えて…。

私たちは自分のために働きがちですが、そういった考えでは問題が起きたときに逃げ出したくなりますよね。

逃げるという選択が自分のためになるからです。

しかし、人のために働こうとすれば、次々と襲いかかってくる困難に立ち向かわなければいけません。

逃げれば誰の役にも立たないからです。

だからこそ浅子は、次々と襲いかかってくる困難に立ち向かえたんですよね。

そんな彼女の姿を通して、少しでも誰かの役に立てる自分に成長していきたいと思える物語でした。

まとめ

今回は自分の悩みがちっぽけに思える古川智映子さんの小説『土佐堀川』を紹介してきました。

広岡浅子という偉大な女性の一生を通して、自分の生き方を見直したくなる物語なので、

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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