町田そのこ『星を掬う』感想/誰かの悪意を引きずって人生をおろそかにしてはいけない

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誰かの悪意を引きずって人生をおろそかにしていませんか?

私は他人の悪意とは戦い続けてきたように思いますが、町田そのこさんの小説『星をすくう』を読んで、改めて誰かの悪意を引きずって人生をおろそかにしてはいけないと励まされました。

親であれ、夫や妻であれ、子であれ、自分の人生を犠牲にしてまで従う必要はないと心から思える物語です。

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『星を掬う』の情報

タイトル 星を掬う 
著者 町田そのこ
おすすめ度 5.0
ジャンル ヒューマンドラマ
出版 中央公論新社 (2021/10/18)
ページ数 328ページ (単行本)
2022年本屋大賞ノミネート作品です。

おすすめ度の理由

  • 想像を絶する親子・夫婦関係に心が締め付けられる
  • 自分の人生は他の誰にも支配させてはダメだと励まされる
  • ラストは感動で涙がこぼれ落ちそうになる

『星を掬う』のあらすじ

芳野よしの千鶴ちづるは、元夫の野々原弥一やいちに、ありったけの金を持ち去られ、少しでも歯向かうと殴られる日々を過ごしていました。

去年、夜逃げのように逃げ出しましたが、見つかってしまい、大きな青あざができるほど殴られました。

パン工場の夜勤に就いていたので、食べ物の心配はしなくても大丈夫でしたが、弥一が来るようになってからはご飯に回すお金がなく、パンしか食べていませんでした。

そのため、何とかしてお金を手に入れたいと思った千鶴は、賞金目当てで「あなたの思い出、売ってみませんか?」というラジオ番組の企画に申し込み、見事準優勝になります。

ところが、この放送がきっかけで、幼い頃に捨てられた母・聖子と同居している芹沢恵真えまという女性が会いたいと連絡をしてきました。

「母と1か月間、楽しい旅をしたけれど、突然、祖母と父が現れて、家に連れて帰られ、その日から母が家に現れたことは一度もなかった」という千鶴が投稿した夏の思い出を聞いて、その母が聖子だとピンときたというのです。

こうして、恵真と会うことになった千鶴でしたが、彼女は聖子を本当の母のように慕っていたので、母に捨てられたせいで人生が滅茶苦茶になったと恨んでいた千鶴は、彼女に敵意をいだきます。

しかし、恵真は千鶴にどれだけなじられようと、千鶴がDVを受けていることを指摘し、このままでは未来がないので一緒に暮らそうと言いました。

さらに、聖子が若年性認知症を患っているので、あの夏の意味を知りたいのなら、早く会わないと時間がないと言います。

そこで千鶴は、恵真と聖子、そして九十九彩子という娘に捨てられた40歳前後の女性と同居することにしますが、22年ぶりに母と再会すると…。という物語が楽しめる小説です。

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『星を掬う』の感想

この小説では、歪んだ人間関係を築いた親子・夫婦の物語が描かれています。

とはいえ、特別なものではなく、私のまわりにも似たような関係を築いている人が実際にいるので、心に突き刺さりました。

たとえば、千鶴は、母の聖子に捨てられたせいで、今のみじめな自分がいるのだと信じ込んでいました。

そのため、母と再会したときも、「よく見なよ。これが、あんたが捨てた娘の、なれの果てよ!」と言ったり、同居しようと誘ってくれた恵真にも、「施しを与えてるのって、気分がいいですか?」などと、ひどい言葉をかけますが、その場にいた医者の結城から、

「君がさっき恵真に言ったことは、弱者の暴力だ。傷ついていたら誰に何をいってもいいわけじゃない。自分の痛みにばかり声高で、周りの痛みなんて気にもしないなんて、恥ずかしいと思えよ」

と言われます。

親のせいで、子どものせいで自分の人生がこんな風になってしまった…というのは、10代のガキのセリフで、現在進行形で負の関係が続いていないのであれば、自分の人生は自分で責任をとれと言うのです。

私のまわりにも、50歳を超えても、自分の問題を棚に上げて、私の問題だと指摘してくる人がいたので、この言葉は心に突き刺さりました。

改めて、その人に「ガキじゃないんだから自分の人生は自分で責任をもて」と言ってやりたくなります。

また、聖子が千鶴を捨てた理由にも衝撃を受けました。

ネタバレになるのであまり詳しくは書きませんが、母から支配されてきた聖子は、母のロボットとして行動していましたが、母の死をきっかけに、初めて自分の人生を歩みはじめます。

このときの決意が、次の言葉で表現されています。

「私の人生は、最後まで私が支配するの。誰にも縛らせたりしない」

親であれ、夫や妻であれ、子どもであれ、誰かの悪意を引きずって自分の人生を犠牲にしてはダメだという想いに心が動かされました。

私のまわりにも両親からロボットのようにコントロールされてきた女性がおり、悩み苦しんでいる姿をみてきたので、自分の人生を生きる大切さを身に染みてわかっています。

しかも、彼女の両親は彼女だけでなく、孫までコントロールしようとしていたのですが、その姿がもう一人の登場人物である九十九彩子の義母たちの姿と重なって驚きました。

彩子が娘に捨てられたのは、娘の美保を産んだときに酷い妊娠中毒症になってしまい、身体が動かなくなったので、義母が美保の世話をしたことが始まりでした。

その日から、義母は美保をまるで自分の娘のように育てはじめ、彩子が手出しできないようにします。

こうして居場所を失った彩子は外に働きに出るようになり、どんどん仕事にのめり込んでいきましたが、美保の誕生日に家に帰ると、彩子には黙って、夫とその両親、美保の4人で温泉旅行に出かけていました。

さすがに腹を立てた彩子は、親子三人でやり直したいと夫に訴えましたが、不満なら君が出ていけと言われます。

さらに、娘からも出ていけと言われたので、仕方なく出ていった彩子でしたが、その後、美保がたどった末路は悲惨でした。

こちらもネタバレになるので詳しくは書きませんが、美保をオモチャのように扱い、自分の思い通りにならないと簡単に捨ててしまう夫と、その両親の姿に怒りが湧きますが、その姿が先ほど紹介した私の知り合いの女性の両親と重なり、恐ろしさを感じました。

このように、他人を支配しようとする人たちの姿を客観的に眺めることができるので、その一つひとつに心が動かされ、自分の人生は誰にも奪わせてはいけないという想いが湧き上がってきます。

それだけでなく、ラストは感動で涙がこぼれ落ちそうになる小説です。

まとめ

今回は、町田そのこさんの小説『星を掬う』のあらすじと感想を紹介してきました。

親であれ、夫や妻であれ、子であれ、誰かの悪意を引きずって人生をおろそかにしてはいけないことがわかる、感動で涙がこぼれ落ちそうになる物語が楽しめる小説です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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