知念実希人『傷痕のメッセージ』感想/遺体に刻まれた暗号が心の傷を癒すミステリー

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友情と親子の絆をテーマにしたミステリーはお好きですか?

私は友情をテーマにした物語も、親子の絆をテーマにした物語も、ミステリーも大好きなので、知念実希人さんの小説『傷痕のメッセージ』は一気読みしてしまいました。

ある程度、結末が予想できましたが、それでも感動できたんですよね。

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『傷痕のメッセージ』の情報

タイトル 傷痕のメッセージ
著者 知念実希人
おすすめ度 4.5
ジャンル 医療ミステリー
出版 KADOKAWA (2021/3/12)
ページ数 352ページ (単行本)
本作『傷痕のメッセージ』と『祈りのカルテ』がつながるスピンオフ短編がついています。

おすすめ理由

  • 女性医師たちの友情と親子の絆に感動する
  • 気になる謎が次々と提示されるのでページをめくる手が止まらなくなる
  • 展開が早く、謎を解く楽しさが味わえる
  • 早い段階で結末が読めてしまう

『傷痕のメッセージ』の簡単な紹介

今回は、知念実希人さんの小説『傷痕のメッセージ』を紹介します。

父とのギクシャクしていた関係で悩んでいた主人公の女性医師が、亡くなった父の胃に刻まれた暗号の謎を解き明かそうとするミステリー小説です。

ミステリーによくある異なるタイプの二人が協力して謎を解き明かしていく…というお決まりのパターンがベースになっていますが、

そこに一癖ある刑事も加わって事件の謎に迫るので、物語の幅が広がり、一気に惹きつけられました。

また、展開が早く、気になる謎が次々と提示されたので、謎を解く気持ちよさも味わえたんですよね。

ちなみに、早い段階である程度結末が予想できましたが、犯人については、まんまと騙されてしまいました。

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『傷痕のメッセージ』のあらすじと感想

ここからは、『傷痕のメッセージ』のあらすじと感想を紹介していきます。

はじまり:父の遺体から謎の暗号が見つかる

あらすじ

物語の主人公は、純正医科大学附属病院で働く水城千早。

彼女は、つい先日まで外科医として忙しい毎日を過ごしていましたが、一週間前から病理診断室に出向することになったので、ため息ばかりついていました。

大雑把な性格の千早にとって、顕微鏡を覗く毎日が嫌で仕方なかったからです。

しかも、ほとんど面識のない同級生の刀祢紫織(とうや しおり)が指導医だったので、付き合い方がわからず、ストレスも溜まっていました。

そんな悩みを抱えていた千早に、さらなる悲劇が押し寄せます。入院していた父の穣(みのる)が癌で亡くなったのです。

しかも、穣の遺言に従って解剖したところ、胃に暗号が刻まれていたので…。

感想

穣の胃に暗号が刻まれていた…とわかるところから物語が始まります。

普通に考えるとありえない設定ですが、穣が胃に暗号を刻んだ理由が明らかになると、ある程度納得できるものだったので、大きな違和感は感じませんでした。(=インパクトだけを重視した物語ではありませんでした)

しかも、物語の中盤で、暗号の謎が明らかになるので、想像していた以上に展開が早く、物語に一気に惹きこまれたんですよね。

ちなみに、穣が亡くなる直前、ギクシャクしていた親子関係を改善するために歩み寄ろうとした千早に対して、「たんに血が繋がっているからといって、親子になれるわけじゃない」と言った理由がこの物語最大の謎になっています。

私はこの謎については、早い段階でわかってしまいましたが…。

謎解き:異なるタイプの女性医師が協力して暗号の謎に迫る

あらすじ

穣の胃に暗号が刻まれていたことがわかった紫織は、解剖医として彼の意志を掬い上げようと行動していきいます。

まず、穣が特定の人物にだけメッセージを伝えることを望んでいたと察した紫織は、胃に暗号が刻まれていたことは、その場にいた医師三人だけの秘密にしようとしました。

しかし、穣が亡くなってすぐに彼の後輩だという桜井刑事が病理診断室にやってきて、「解剖しておかしなことはなかったか?」と聞いてきます。

明らかに怪しげな人物ですが、桜井刑事は28年前に起こった「千羽鶴」と名乗る犯人が次々と少女を殺していった連続殺人事件で穣と共に行動しており、しかもその事件がキッカケで穣が刑事を辞めたことを教えてくれました。

一方の千早は、元刑事だと父が教えてくれなかったこと、また父の胃に刻まれた暗号の最後に「ムスメニイウナ」と書かれていたことを気にして行動できずにいました。

そんな千早に対して、紫織は「穣さんの遺志を掬い上げる義務がある」と言って、千早を励ましながら暗号を解読しようとするんですよね。しかし、千早の実家が何者かに燃やされて…。

感想

何事も大雑把で感情的な千早と、無口で感情を表に出さない紫織が、穣の意志を掬い上げようと協力していく姿に胸が熱くなります。

特に、寝癖もなおさず、間延びした口調で話していた紫織が、解剖するときには、化粧をして髪をセットし、ダークスーツを身に纏い、

「全力で執刀させていただき、学ばせていただきます」と言って、まるで撫でるような見事な手つきで解剖を進めていく変わりっぷりに一気に惹きつけられました。

さらに、胡散臭さ全開の桜井刑事が物語を盛り上げます。

私は知らなかったのですが、桜井刑事は、『天久シリーズ』『神酒クリニックシリーズ』『螺旋の手術室』にも登場している刑事だと知り、これらの物語も読んでみたくなりました。

最初は、本気で桜井刑事が犯人かも…と思っていただけに、驚きました。

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過去とのつながり~ラストへ:28年前の事件が今再び蘇る

あらすじ

千早の父・穣が亡くなってすぐに、北野聡美という若い女性が殺されます。

しかも、現場からは、28年前に「千羽鶴」が残したものと同様の折り紙が見つかっており、警察は28年ぶりに犯人が動き出したのではないかと躍起になりました。

そんな中、桜井刑事は、穣が亡くなってすぐに犯人が動き出したことから、穣と犯人との間に何らかの繋がりがあったのではと推測して捜査を始めます。

一方、千早と紫織は、千早の実家が放火されて殺されそうになったことから、穣の胃に刻まれた暗号は、犯人にとって解き明かされては困るものではないかと推測しました。

そこで、千早は父の過去から、紫織は穣の遺体から暗号の謎に迫っていきます。

こうして穣の胃に刻まれた暗号を解き明かした千早と紫織でしたが、見つかったのは…。

感想

穣の胃に刻まれた暗号を解いてわかったのは、28年前の事件に穣が関わっていた可能性が高い…ということでした。

ここから千早と紫織、桜井刑事それぞれが28年前の少女連続殺人事件と今回の殺人事件、そして穣と犯人の関係に迫っていきます。

3人の視点で物語が語られるので、事件を多角的に眺めることができ、しかも少しずつ謎が解き明かされていくので、続きが気になってページをめくる手が止まらなくなりました。

そしてラストは、千早と紫織の友情と、千早親子の絆に感動できる物語だったんですよね。千早を取り巻く人たちの優しさと温かさに心が動かされました。

まとめ

今回は、知念実希人さんの小説『傷痕のメッセージ』のあらすじと感想を紹介してきました。

亡くなった父の胃に暗号が刻まれていたというインパクトがある幕開けでしたが、そのインパクトに負けないくらい展開が早く、次々と気になる謎が提示されたので、惹きつけられました。

また、ラストでは友情と親子の絆に感動できる物語でもありました。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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