村山早紀『桜風堂ものがたり』は本を大切にしたくなる物語

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私は読書が大好きで毎日のように本を読んでいますが、村山早紀さんの小説『桜風堂ものがたり』を読んで、これまで以上に本を大切にしたくなりました。

著者だけでなく、書店員さんや本に関わっている多くの人たちの思いを知ることができたので、これまで以上に本に愛着が湧いたんですよね。

おすすめ度:4.5

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こんな人におすすめ

  • 本を大切にしたくなる物語を読んでみたい人
  • 正義という名の悪意を振りかざす人たちの物語に興味がある人
  • ちょっとした奇跡が楽しめる物語が好きな人
  • 村山早紀さんの小説が好きな人

あらすじ:他人と関わらずに生きていこうとする書店員の物語

物語の主人公は、書店員の月原一整。

彼は星野百貨店の六階にある銀河堂書店に勤めていましたが、あるトラウマを抱えていたので、同僚たちと距離をとって生きていました。

それでも、店長からは「思わぬ宝物を探してきて当てるのがうまい天才だ」と言われるほど、書店員としては評価されていました。

ところが、万引きを繰り返していた中学生を追いかけたことで、世間から批判されるようになります。

その中学生が走って逃げ出し、車にはねられたからです。

彼は幸いにも無事でしたが、「車にはねられるまで追いかける必要はないだろう」とSNSで批判されるようになりました。

それだけでなく、直接書店にやってきて嫌味を言う人が現れたり、電話やハガキで「辞めさせろ」といった批判が後を絶たなくなります。

そこで一整は、自ら銀河堂書店を辞めることにしました。

同僚たちは引き止めてくれましたが、書店を取り巻く環境が厳しいことを知っていた一整は、共倒れになることを恐れて辞めることにしたのです。

とはいえ、次の当てがあるわけではありません。

一整は学生時代から書店員としてのアルバイト漬けだったので、他の仕事をしたことがありませんでした。

こうして一整は、人生を終わらせようとしますが、ちょっとした奇跡が起こって…。

という物語が楽しめる小説です。

感想①:正義という名の悪意を振りかざす人たち

あらすじでも紹介しましたが、万引きをした中学生を追いかけた一整を批判する人たちが大勢あらわれました。

はじめは、万引きをした中学生に批判の矛先が向けられていたのですが、

彼が「いじめられて仕方なく万引きをしていた」ことが明らかになると、その批判が一整と銀河堂書店に向けられるようになったのです。

「万引きは悪いことだったかもしれない。でも、中学生を車道に飛び出したくなるほど追いかけなくてもよかったんじゃないか」

と言い出す人が増えてきたんですよね。

こうして一整は、銀河堂書店を辞めることになりましたが、

この話を聞いて思い出したのは、漫画『進撃の巨人』で、エルヴィン団長が次々と仲間を切り捨てていく姿を見たときのアルミンのセリフです。

結果を知った後で選択するのは誰にでもできる。後で「こうすべきだった」って言うことは簡単だ。

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後から問題を指摘するのは、誰にでもできるし、何の意味もないと言っているんですよね。

それともうひとつ。『トップの教養』で紹介されていたソクラテスの話です。

ソクラテスは、「国が脅威を受けたときはみんな武器を持って戦え」と主張した結果、冤罪で裁判にかけられ、死刑判決を下されました。

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ソクラテスの死後、教養のない人たちのせいで死に追いやられた師匠の仇をうつために、弟子のプラトン、アリストテレスが学問の大前提を築いたのですが、

このように築き上げられてきた学問を誰もが学べるようになった今でも、SNS上には優しさのない正義の批判を繰り返す人たちが大勢います。

そんな人たちは正義を振りかざしながらも、心の中にある悪意を吐き出しているように思いますが、

彼らのせいで一整のような善意ある人たちが葬りさられている現実に気づくことができる物語です。

感想②:批判する人もいれば助けてくれる人もいる

そんな絶体絶命に追いやられた一整に救いの手が差し伸べられます。

まず一人目は、かつてアパートの隣に住んでいた船乗りの老人で、寝込んでいた一整の夢に現れて、こんな優しい言葉をかけました。

「なあ、この俺があんたのことを気に入っていたんだからさ、兄ちゃんは幸せになっていいんだよ。あんたを待っている幸せが、この世のどこかに、お宝みたいに埋まっている。あんたは優しいいい奴だから、きっと神様がそうしてくれている。そいつを探しに行くんだよ」

伊坂幸太郎さんの小説『首折り男のための協奏曲』でも、理不尽な目にあった人たちが救われていく姿が描かれていましたが、

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理不尽な目にあうことってありますよね。 そんなとき、どうすることも出来なくて、落ち込んでしまいがちですが、 伊坂幸太郎さんの小説『首折り男のための協奏曲』を読んで、しばらく耐えれば救われるかも!?と思えるようになりました。 タイトルの...

この物語でも、理不尽な目にあっても、いつか誰かが救ってくれる…そんな希望が湧いてきます。

さて、船乗りの老人のおかげで元気を取り戻した一整は、一度も会ったことのないネット上で仲良くしていた桜風堂の店主に会い行こうと思い立ちました。

これがきっかけで、過去のトラウマを乗り越えて、再び書店員として働けるようになるんですよね。

どれだけ批判されても腐らずに自分らしく生きていけば、いつかは助けてくれる人が現れると思わせてくれる物語です。

感想③:多くの人たちの想いが詰まった本を大切にしたくなる

こうして桜風堂の店主になった一整でしたが、

それだけでなく、彼が心から売りたいと思っていた小説『四月の魚』が多くの書店員さんの助けもあり、奇跡的に売れるようになりした。

手作りのPOPやオリジナルの帯、ポスターを用意して応援してくれたのです。

三上延さんの小説『ビブリア古書堂の事件手帖』を読んだときは、

多くの人たちの手から手へ渡ってきた古書を大切にしたくなりましたが、

この物語を読んで、本が出版されるまでの「多くの人たちの想いや苦労」を知ることができたので、今まで以上に本を大切にしたくなりました。

それだけでなく、今すぐ本屋さんに行って、書店員さんのおすすめ本を読んでみたくなりました。

まとめ

今回は、村山早紀さんの小説『桜風堂ものがたり』のあらすじと感想を紹介してきました。

これまで以上に本に愛着が湧き、本を大切にしたくなる物語です。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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