家族の問題と向き合っていますか?
私は真正面から向き合ってきたので、結婚してしばらくはツラい日々が続きましたが、
その問題を乗り越えたおかげで、今では楽しい毎日が過ごせています。
しかし、東野圭吾さんの小説『赤い指』で描かれている家族は違いました。問題から目をそらし続けていたんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 加賀恭一郎シリーズが好きな人
- 問題に向き合わない家族に興味がある人
- 叫びたくなるような結末の物語が好きな人
- 東野圭吾さんの小説が好きな人
あらすじ:問題だらけの家庭で育った子供が殺人に手を染める物語
照明器具メーカーに勤める前原昭夫は、年老いた母の政恵と妻の八重子、息子の直巳と4人で暮していました。
しかし、八重子は義母である政恵のことを嫌っており、何ひとつ世話をせずに冷徹に接していましたが、
その一方で、息子の直巳には、腫れ物に触るかのように接し、ご機嫌取りをしていました。
そんな家族の問題に、昭夫は目をそらし続けていたのです。
このような家庭環境で、まともな子供が育つはずがありません。
直巳もその例外から漏れることなく、クソガキとして成長していきます。
そして直巳は、とうとう殺人を犯しました。
近所に住む少女にフィギュアを見せた後、彼女がすぐに帰りたいと言い出したことに腹を立てて殺してしまったのです。
もちろん、直巳は反省などしていません。
そんなどうしようもないクソガキを、八重子は庇い、正当化しようとしました。
さらに、昭夫はこれらの問題をすべて解決する悪魔のような方法を実行しようと言い出すんですよね。
その方法とは…。という物語が楽しめるミステリーです。
感想①:問題から目を背ける人たちの気持ち悪さが描かれている
あらすじでも紹介しましたが、八重子は息子の直巳に、腫れ物に触るかのように接し、ご機嫌取りをしていました。
その結果、真巳は少しでも嫌なことがあると、喚いたり、叫んだりするようになりましたが、
八重子はそれでも甘やかせ続けました。
こうして真巳は、知り合った少女が思うように行動しなかったという理由だけで殺人に手を染めたのですが、
少女を殺した後も、少女が悪いんだと言い、八重子もそうだと言って自らの行いをまったく反省しませんでした。
一方、父である昭夫は警察に行くべきだと言いますが、家族の問題から目を背け続けてきたことを妻に責められると、
すべての責任を認知症になった母の政恵に押し付けようと言い出します。
和田竜さんの小説『忍びの国』でも、自分の利益しか考えずに、敵だけでなく、味方も殺し続けた主人公・無門の腹立たしい姿が描かれていますが、

この物語でも、問題から目を背け続ける家族の姿が描かれているので、読んでいて気持ちが悪くなりました。
感想②:加賀恭一郎と父の関係が気になる
一方で、この事件の捜査にあたっていた加賀恭一郎も、家族との問題を抱えていました。
加賀の父は癌に侵されており、いつ亡くなってもおかしくない状況でしたが、彼は病院に見舞いに行きませんでした。
そのことを加賀の親戚で、一緒にこの事件を捜査することになった松宮に指摘されますが、
加賀は決して病室に入ろうとはしませんでした。
なぜなら、加賀の母が20年ほど前に家から突然出ていったのは、家庭を顧みない父のせいだと考えていたからです。
一方、ビートたけしさんの小説『アナログ』では、病室で過ごす母のことを思いやる主人公の想いが克明に描かれていましたが、

実は加賀恭一郎も病室には入らなくても、父との強いつながりを持っていたんですよね。
そのつながりとは…。ぜひ実際に読んで、彼らの絆に涙してください。
感想③:叫びたくなるような結末
さて、この物語では、叫びたくなるような結末が用意されています。
『容疑者Xの献身』のラストでも、驚きと残酷な結末に心が握り潰されそうになりましたが、
あのどうすればいいのかわからない感情が、この物語でも味わえます。

それだけでなく、加賀恭一郎の優しさが心に染みます。
一方で、この物語を盛り上げているのは、前原家と加賀親子のギャップにあるように思います。
スティーヴンスンの小説『ジーキル博士とハイド氏』では、一人の人物が持つ正義と悪のギャップに惹きつけられましたが、

この物語でも、前原一家と加賀親子が似たような家庭問題を抱えながらも、
その向き合い方と結末に大きなギャップがあるので、惹きつけられたのだと思います。
どちらにしても、最後までページをめくる手が止まらなくなる物語でした。
まとめ
今回は、東野圭吾さんの小説『赤い指』のあらすじと感想を紹介してきました。
これまでの加賀恭一郎シリーズとは一味違うミステリーが楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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