2022年に発売された小説【19冊】のおすすめをご紹介

エンタメまとめ

「2022年に発売されたおすすめの小説を紹介してほしい」という要望が届いたので、個人的におすすめの小説【10冊】をランキング形式で紹介します。

とはいえ、趣味嗜好は人それぞれ違うので、ランキングから漏れた小説も、ジャンル別に紹介します。

幅広いジャンルの小説を、「あらすじ」や「感想」、「おすすめ度」と共に紹介していくので、本選びの参考になれば嬉しいです。

2022年に初出版された小説のみを対象にしています。
(2022年に単行本から文庫化された小説は対象外です)
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【2022年発売】おすすめ小説10冊をランキング形式でご紹介

では早速、2022年に発売されたおすすめの小説【10冊】をランキング形式で紹介します。

第1位 安壇美緒『ラブカは静かに弓を持つ』

おすすめ度:4.5

  • 個人レッスンでも著作権料を徴収しようとする著作権団体に怒りが湧く
  • スパイの仕事と音楽を楽しみたい気持ちの板挟みに合う主人公に心が痛む
  • 人を信頼する大切さが感動と共に伝わってくる
あらすじ
中学一年生のとき、チェロ教室の帰りに「ある事件」に遭遇したたちばなたつるは、その日から、悪夢に悩まされていました。チェロに触れることさえできずにいましたが、上司の塩坪に呼び出されて、ミカサ音楽教室に潜入捜査を命じられます。映画音楽などの著作権料を支払わずに、個人レッスンをしているので、その証拠を集めろというのです。こうして橘は、身分を偽って、ミカサ音楽教室に潜り込み、若葉という講師にチェロを教わるようになりますが…。

個人レッスンでも著作権料を徴収するために、全日本音楽著作権連盟に所属する主人公が、ミカサ音楽教室にスパイとして潜り込む物語です。

はじめは割り切ってスパイをしていた主人公が、講師とその仲間たちの優しさや音楽の素晴らしさに触れて、「スパイとしての仕事」と「チェロを楽しみたい気持ち」の板挟みに合う姿に、心が揺さぶられました。

また、ラストは「無数の信頼の上に人間関係は構築される」という、人を信頼する大切さが感動と共に伝わってきたので、涙がこぼれ落ちそうになりました。

第2位 宇佐美まこと『月の光の届く距離』

おすすめ度:4.5

  • 親子関係に苦しんできた人たちの過去をミステリーにした物語に引き込まれる
  • 売春をする少女たちの目的がお金ではないことに驚く
  • 傷ついた子どもを親のように愛そうとする人たちの姿に心が動かされる
あらすじ
平凡な女子高生の柳田美優は、軽い気持ちで付き合った同級生と深く考えずに体を重ねた結果、子どもを身籠ります。しかし、そのことを知った交際相手からは捨てられ、両親からも責められて、家を追い出されました。美優は、子どもを産んで一人で育てていこうと決意しますが、厳しい現実に打ちのめされて、ビルの屋上から飛び降りようとします。そこに「何か食べ物を持ってない?」と尋ねてきた、5歳くらいの女の子が現れたことがきっかけとなって…。

母親に捨てられたり、傷つけられたりするなど、親の愛情を知らずに育った人たちの過去を、ミステリー仕立てにした物語です。

親に恵まれなかった彼らが、優しい人たちに助けられて大人になり、その恩に報いるためにも、親に恵まれない子どもたちを、本当の親のように愛そうとする姿に心が動かされました。

また、売春をする少女たちが、お金よりも、一時の優しさや、嘘でもいいので愛情欲しさに体を売っていることにも驚き、心が痛みました。

第3位 早見和真『八月の母』

おすすめ度:4.0

  • 娘に虐待を繰り返す母の姿に恐怖を覚える
  • 不幸な少女に次々と襲いかかる悲劇に心がかき乱される
  • 自分の人生は他の誰のものでもない、自分だけのものだとわかる
あらすじ
母に虐待されて育った越智エリカは、この街からいつか出ていきたいと願っていました。ところが、彼女に近づいてくる誰もが、彼女をさらなる不幸へと追いやります。それは、スナックを経営する母・美智子の影響によるものでした。しかし、エリカも最愛の娘を授かると…。
愛媛県伊予市で実際に起きた、17歳集団暴行死事件をモチーフにした衝撃の物語。

娘に虐待を繰り返してきた母が、自分の幸せのために娘を縛り付け、またその娘が自分の娘に同じことを繰り返す姿を取り上げた物語です。

不幸な少女に「これでもか!」というほど、次々と悲劇が襲いかかってくるので、心がかき乱されましたが、その一方で、自ら不幸に飛び込むかのように振る舞う少女たちの姿に衝撃を受けました。

たとえどれだけ世話になったとしても、自分の人生はその人のものではなく、自分だけのものだと、深く心に刻み込まれました。

第4位 西條奈加『六つの村を超えて髭をなびかせる者』

おすすめ度:4.0

  • アイヌの人たちが受けてきた民族差別に心が痛む
  • 賄賂のイメージが強い田沼意次がとった意外な政策に驚く
  • アイヌの本当の姿を世に広めるために人生をかけた最上徳内の半生に感動する
あらすじ
老中・田沼たぬま意次おきつぐが実権を握る江戸中期。幕府は南下を進めるロシアに対抗するために、蝦夷えぞ地開発に乗り出しました。このとき、算額の才能を発揮して「音羽おとわ塾」で頭角を現していた最上徳内は、師匠・本多利明の後押しもあって、蝦夷地見聞隊に参加します。はじめは、見知らぬ土地へ行けることを喜んでいた徳内でしたが、アイヌの人たちと出会い、現状を目の当たりにしたことで…。

松前藩から民族差別を受けるアイヌの人たちを解放するために、人生をかけて行動する最上徳内の半生を取り上げた歴史小説です。

算額の才能があるだけでも羨ましいのに、その才能を捨ててまで、人生をかけて「アイヌの真実を世に広めたい!」と奮闘する最上徳内の半生に、感動と嫉妬する物語でした。

歴史小説としても面白く、賄賂のイメージが強い田沼意次がとった意外な政策にも驚かされました。

第5位 伊与原新『オオルリ流星群』

おすすめ度:4.0

  • 未来に希望がもてなくなった主人公が天文台作りを手伝う展開が熱い
  • 天文学の画期的な研究手法に驚かされる
  • 特別だと思っている人たちも必死になって手足を動かしていることがわかる
あらすじ
父から受け継いだ薬局を経営する45歳の種村久志ひさしは、近所にできたドラッグストアの影響で、経営は悪化の一途を辿っていましたが、何も行動する気が起きませんでした。そんな久志の前に高校時代の同級生・山際慧子けいこが現れます。彼女は国立天文台の研究員をクビになり、自ら天文台を作るために、この町に戻ってきたと言いました。この話を聞いた同級生たちは、高校時代にみんなで協力して作った巨大なタペストリーを思い出し、自主的に手伝い始めますが…。

40歳を過ぎたあたりから、「このままでいいのかなぁ…」と不安に思っていた主人公たちが、天文台作りの手伝いを通して、第二の人生を歩む意義を見出していく物語です。

特別だと思っていた人たちも、実は悩み苦しみながら手足を動かし、アイデアを捻り出して、必死になって一歩ずつ前に進んでいる姿に、今を精一杯頑張ろうと励まされました。

また、天文学の画期的な研究手法に驚かされ、興味が湧きました。

第6位 小野寺史宜『いえ』

おすすめ度:4.0

  • 怒りの矛先がない悲劇に心が痛む
  • スーパーで働く大変さが伝わってくる
  • 人間関係がうまくいかない時は相手の意思を尊重しようと思える
あらすじ
スーパーで働く三上すぐるは、大学3年生の妹・若緒わかおのことばかり気にするようになりました。仲は特に良くも悪くもなく、普通でしたが、若緒の恋人で、傑の友人でもある城山大河が、ドライブ中に事故を起こし、その後遺症で左足を引きずるようになったからです。その後、大河は家に謝りに来ましたが、父と母が正反対の態度を取り、ギクシャクするようになりました。さらに、傑は仕事先のスーパーでも、パートさんとの関係を悩むようになり…。

妹の左足に怪我を負わせた友人に対して、モヤモヤした気持ちを抑えきれなくなった主人公が、仕事でもプライベートでも人間関係で悩む物語です。

傷つき、ぼろぼろになった主人公が、相手の意思を尊重してこなかったことに気づき、苦手意識があった人たちの懐に飛び込み、相手の意思を知り、それを尊重して関係を改善していく姿に心が揺さぶられました。

お仕事小説としても面白く、スーパーで働く(パートさんと良い関係を築く)大変さも伝わってきました。

第7位 坂木司『楽園ジューシー』

おすすめ度:4.0

  • もみくちゃにされて変わっていく主人公を応援したくなる
  • いいイメージがある沖縄にも多くの問題があることに気づかされる
  • 「ここではないどこか」に行っても幸せにはなれないことがわかる
あらすじ
太っていて、色白で、天然パーマで、5カ国のミックスとして生まれた松田英太は、小中学生の頃にいじめられていました。心の傷は深く、大学生になった今でも、卑屈になって友達ができませんでした。そんな英太の心の拠り所は、中学2年生のときに、同じく居場所がなかった2人と共に過ごした思い出です。嫌なことがあるたびに、「3人で沖縄に行こう!」という約束に思いを馳せていました。ところが、意図せず沖縄のホテルでアルバイトをすることになり…。

ウジウジと過去にしがみつく主人公が、ホテルジューシーで「濃い」人たちと関わり、少しずつ自分が出せるように変わっていく物語です。

ミックスって外国人ぽくってカッコいい/カッコ悪い…といった外側からくる評価にこだわるのはやめて、自分の内側にある本当にやりたいこと、楽しいことに目を向けようと後押しされました。

また、南国で住みやすそうなイメージがある沖縄にも、家父長制といった古いしきたりや基地問題があり、単純に「ここではないどこか」に行っても幸せにはなれないことに気づかされました。

第8位 伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』

おすすめ度:3.5

  • 失恋した社会人一年生と、元いじめられっ子スパイのつながりが気になる
  • ラストにすべてがつながっていく展開に驚き、クスッと笑える
あらすじ
「松嶋君って、エンジン積んでないよね」と言われて、彼女に振られた社会人一年生の松嶋は、夜遅くまで残業をしていたときに、マグカップをひっくり返して、ミニカーのように手で押して走らせる憧れの先輩社員の姿を目撃します。一方、父からも仲間からも暴力を振るわれて逃げ出してきた少年は、エージェント・ハルトという秘密情報局員に助けられ、一緒に仕事をしないか?と誘われました。彼ら二人の仕事が知らないところでつながっていく物語。

自ら行動を起こすのが苦手な社会人一年生、暴力を振るう父と仲間から逃げ出した少年、嫌なことばかりが続く先輩社員、誰にでも謝ってばかりいる課長など、さまざまな人たちの仕事が知らないところでつながっていく物語です。

誰にでも謝ってばかりいる情けない課長も、実は…というように、物事には絶対はなく、立場によって物事の見え方は変わるというメッセージに共感できました。

また、人生で大変なことはあるけれど、大抵のことは、元に戻せる、やり直せるというメッセージに励まされ、ラストですべてがつながっていく展開に驚き、クスッと笑えました。

第9位 白木健嗣『ヘパイストスの侍女』

おすすめ度:3.5

  • 最先端の自動運転技術やAI技術が盛り込まれた物語に引き込まれる
  • ラストに驚きが味わえ、何よりも心が大切だというメッセージに共感できる
あらすじ
パワハラで多くの部下を自殺に追い込んだ、あかつき自動車 先進技術課長の門倉隆之は、自動運転車WAVEの実証実験中に、車が急停止したせいで、トラックに追突衝突されて亡くなります。事件は交通事故として処理されるはずでしたが、サイバー攻撃で意図的に事故を起こしたという脅迫メールが届いたことで、警視庁 捜査一課とサイバー犯罪対策課の刑事が捜査に乗り出しました。とはいえ、手がかりが掴めめず、捜査の行方は全知全能のAIに委ねられ…。

自動運転車へのサイバー攻撃で起きた事件の全貌を明らかにすべく、殺人事件やサイバー犯罪を取り締まる警視庁の刑事たちと、自動運転車を開発する技術者たちが奮闘するミステリーです。

パワハラ上司や、その被害に遭って辛酸を舐めることになった優秀な研究者の姿に心が揺さぶられるだけでなく、最先端の自動運転技術やAI技術が盛り込まれたストーリーに引き込まれ、ページをめくる手がとまらなくなりました。

また、ラストの展開に驚かされ、どれほど技術が進歩しても、何よりも心が大切だというメッセージに共感できました。

第10位 一穂ミチ『砂嵐に星屑』

おすすめ度:3.5

  • 華やかに見えるテレビ業界の裏側を取り上げた物語に引き込まれる
  • 弱い自分&嫌な自分を認めて前に進もうと励まされる
あらすじ
過去に社内不倫をした40代の独身女性アナウンサーが、亡くなった不倫相手の幽霊を何度も目撃する『資料室の幽霊』。報道デスクで働く50代の男性が、「娘との関係」と「同期の早期退職」に悩む『泥舟のモラトリアム』。20代の女性が、好きになった相手がゲイだとわかっても好きになるのをとめられない『嵐のランデブー』など、4人の主人公が、弱い自分&嫌な自分に傷つきながらも、認め、愛していく短編集。

悩みと向き合って思いっきり傷ついた後に、弱い自分&嫌な自分を認めて前に進もうとする人たちの姿に、励まされる短編集です。

「ツイッター眺めるばっかりの頭でっかちから、ちょっとは大人になったということやね」といった言葉が心に突き刺さり、安全地帯から誰かを批判するのはやめて、今すぐ動き出したくなりました。

また、華やかに見えるテレビ業界にも裏があり、どのような場所にいようと、自分を認め、愛していくことが、前を向いて生きる力になるのだと気づかされました。

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2022年発売の小説をジャンル別にご紹介

引き続き、2022年に発売された小説をジャンル別に紹介します。ジャンルは次のように分類しています。

  • ミステリー
  • ヒューマンドラマ

ミステリー

南原詠『特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来』

おすすめ度:3.5

  • 特許を巡る争いをミステリーにした物語に引き込まれる
  • VTuberという職業と彼らが使っている撮影システムに興味が湧く
あらすじ
事業化するつもりのない製品の特許を取得し、特許侵害だと他の企業にぶつけて金をせびってきた弁理士の大鳳未来は、「特許侵害を警告された企業を守る」ことを専門とする正反対の特許法律事務所を立ち上げました。そんな彼女に、1ヶ月で2億円稼いだこともある人気VTuberの天ノ川トリィを守って欲しいという依頼が来ます。トリィが使っている撮影システムが、特許を侵害していると測量機器メーカーが警告してきたのです。しかし、その背後には…。

凄腕弁理士の大鳳未来が、特許侵害を警告されたVTuberを守るために、驚きの手を使って相手をねじ伏せていくミステリーです。

特許を巡る争いをミステリーにした、これまでにない物語に引き込まれるだけでなく、VTuberという職業や、彼らが使っている撮影システム(測量用の3Dレーザースキャナーで人体をトラッキングし、データは独自の無線方式でサーバーに高速転送する…など)にも興味が湧きました。

テンポよく新たな謎が提示されていくので、続きが気になって一気読みしました。

塩田武士『朱色の化身』

おすすめ度:3.0

  • 多くの人たちの証言で物語が進んでいく構成が面白い
  • 行方がわからなくなった女性の悲惨な過去に心が痛む
あらすじ
ライターの大路亨は、元新聞記者の父から、一世を風靡したゲームの開発者である辻珠緒に会わせてほしいと依頼されます。しかし珠緒は、亨が記事を書いてしばらくしてから、行方がわからなくなっていました。そこで、亨は珠緒と関係のある人たちに取材を申し込み、行方を尋ねます。珠緒の元夫や大学時代の旧友、銀行勤めをしていたときの同僚など、多くの人たちに取材を重ねるうちに、亨は珠緒という女性に興味を持ちはじめました。なぜなら、彼女は…。

ライターの主人公が、行方がわからなくなったゲームの開発者を探すために、多くの人たちに取材を重ね、彼女の過去を明らかにしていく物語です。

多くの人たちの証言で、珠緒という女性の人物像が浮き彫りになっていく構成が面白く、また彼女の悲惨な過去に心が痛みました。

「ゲーム障害」「家柄の格差」「銀行総合職」「就職差別」「親友の逮捕」など、時代の構造を浮き彫りにする社会問題が盛り込まれたストーリーに引き込まれ、最後まで一気に読みました。

本城雅人『にごりの月に誘われ』

おすすめ度:3.5

  • 隠したい過去を公表しようとするカリスマ経営者の目的が気になる
  • ラストに二転三転する展開が面白い
あらすじ
IT企業の会長・釜田芳人よしとから、ゴーストライターとして自叙伝の執筆を依頼された上坂すぐるは、当初、断ろうと考えていました。11年ほど前に依頼された著作の報酬2000万円が未払いのままだったからです。それでも依頼を引き受けたのは、釜田が間もなく絶命することがわかり、自叙伝がヒットすると確信したからでした。ところが、取材をはじめると、驚きのエピソードが次々と飛び出します。上坂は、何か裏があるのではないかと疑い始めますが…。

余命3ヶ月もないIT企業の会長から、自叙伝の執筆を依頼されたフリーライターが、愛人との関係や警察沙汰になった話など、隠したいはずの過去を次々と聞かされ、何か裏があるのではないか?と疑うミステリーです。

出来上がった仮の自叙伝、フリーライター、IT企業の若手経営者という3つの視点が切り替わりながら物語の核心に迫っていく展開に、続きが気になってページをめくる手が止まらなくなりました。

ラストの二転三転する展開も面白く、タイトルに込められた意味もオシャレで心に残りました。

ヒューマンドラマ

浅田次郎『母の待つ里』

おすすめ度:3.0

  • 寂しさのあまり故郷を求める人たちの姿に心が動かされる
  • 「快適さ」や「便利さ」で幸せかどうかは決まらないことがわかる
あらすじ
大企業の社長・松永徹は、四十数年ぶりに里帰りをしました。野心のかけらもありませんでしたが、時代の後押しもあり、役員になり、今では社長にまでなりました。そんな彼を郷里で出迎えたのは、顔も名前も知らない母でした。なぜなら…。
還暦世代の3人が、故郷に里帰りをする感動の物語。

一人暮らしを通してきた大企業の社長、退職と共に妻に離婚を言い渡された男性、母に先立たれて一人になった女医という還暦世代の3人が、故郷を求めて「母の待つ里」へと向かう物語です。

都会で何不自由なく暮らしてきた彼らが、ふとした瞬間に寂しさを覚え、自然豊かな故郷に思いを馳せ、いくつになっても自分のことを本気で思ってくれる母なる人を求める姿に、心が動かされました。

また、作中に登場する「ユナイテッド・ホームタウン・サービス」が新しく、今後こうしたサービスを求める人たちが本当に出てくるかもしれないと思えました。

寺地はるな『タイムマシンに乗れないぼくたち』

おすすめ度:3.5

  • まわりと違うだけで傷つけられる人たちの姿に心が痛む
  • 誰もが適切な距離感で孤独と付き合う必要があるとわかる
あらすじ
他人に同調するのが苦手な20代の女性が、殺し屋という設定で退屈な毎日をやり過ごす『コードネームは保留』。転校してから誰とも口を聞かなくなった小学生が、博物館に癒しを求める『タイムマシンに乗れないぼくたち』。保育園に通う姪を迎えに行くことになった未婚女性が、美しいメロディに耳を傾ける『口笛』。亡くなった夫が書いた小説のヒロインが、日常生活に入り込む『夢の女』など、孤独に傷つく人たちの日常を取り上げた短編集。

まわりと話し方が違っていたり、結婚していなかったり、群れるのが苦手な人たちが、孤独に傷つく日常を取り上げた短編集です。

「幸せ」のカタチは、一つではないはずなのに、まわりと違うだけで距離を取られ、不幸だと決めつけられ、傷つけられる人たちの姿に心が痛みました。

一方で、本当は誰もが孤独で、それぞれの苦しみがあり、痛みがあり、喜びが、願いがあることに気づくことができ、適切な距離感で孤独と付き合っていく必要があることがわかりました。

村山早紀『風の港』

おすすめ度:3.5

  • 新たな旅立ちのきっかけとなる空港に行きたくなる
  • 上手くいかないときは、良い風が吹くまでじっと待とうと励まされる
あらすじ
友人に恋人を奪われ、漫画家としての夢も破れた主人公が、空港で似顔絵画家の老紳士と出会う『旅立ちの白い翼』。空港にある小さな書店で働く女性が、不思議な出来事を体験する『それぞれの空』。幼なじみのベテラン女優と新人賞受賞作家が空港の本屋で33年ぶりに再会する『夜間飛行』。年老いた奇術師がこれまでの人生を振り返る『花を撒く魔女』。4人の主人公が、空港という旅立ちの場所で、ちょっとした奇跡と出会う短編集。

悩みを抱える主人公たちが、空港という新たな旅立ちの場所で、ちょっとした奇跡と出会い、前を向いて歩んでいく姿に心が温まる短編集です。

「にっちもさっちもいかないときは風を待っていてもいいんですよ、きっと。静かに、諦めずに。良い風が吹くその日まで。」といった言葉が心に沁みました。

また、主人公たちのように、未来に飛び立てる日が来ることを信じて、今を懸命に生きようと励まされました。

瀬尾まいこ『夏の体温』

おすすめ度:3.5

  • 心が痛み、癒され、笑えて、感動できる物語が楽しめる
  • 悩みを抱えながらも他人に優しく接する人たちの温かさに心がほぐされる
あらすじ
小学三年生の瑛介は、ぶつけてもいないのに足にあざができるようになったので、県立病院に検査入院しました。その結果、血小板が少ないことがわかりましたが、経過観察のため、1ヶ月以上入院生活を続けています。とはいえ、病院での生活は退屈でした。低身長の検査入院をする幼児ばかりが入院してきたので、話があわなかったからです。そんな瑛介の前に、同学年の壮太が現れます。瑛介は大喜びしますが、壮太の入院はたったの3日間だったので…。

退屈な入院生活に嫌気がさしている小学生の前に、遊びの天才が現れる物語と、極悪人を主人公にした小説を書くために、腹黒と呼ばれる男子大学生に取材をする女子大生の物語、引っ越しを繰り返してきたせいで友だちができない中学生の物語、という3つの短編が楽しめる小説です。

どの物語も大きな出来事は起きませんが、悩みを抱えながらも他人に優しく接する人たちの温かさに、凝り固まった心がほぐされていくように感じました。

また、病を抱える子どもたちの姿に心が痛み、それでも今を楽しもうとする姿にパワーをもらえ、腹黒い男子大学生と彼に取材をする女子大生のやり取りに笑い、ラストはジーンとする展開に心が動かされました。

南杏子『アルツ村』

おすすめ度:3.5

  • アルツ村に隠された秘密が気になって一気読みしてしまう
  • 若者の人生を犠牲にしないためにも、認知症患者への対策が必要だと痛感する
あらすじ
夫の暴力から逃れるために、幼い娘を連れて夜逃げをした明日香は、行く当てもなく北海道を車で走っていると、突如、煽ってくる若者たちに追いかけられます。何とか逃れようと山奥に向かった彼女は、高齢者ばかりが暮らす村にたどり着きました。そこはアルツ村と呼ばれる認知症患者ばかりが暮らす村で、一見平和に見えましたが、実は裏では…。

夜逃げをした主人公が、たどり着いた山奥の村に身を隠しながら、認知症患者ばかりが暮らす、その村に隠された秘密に迫る物語です。

認知症患者だとしても、老人ホームに入るのは難しく、家族が自宅で介護をするなんて不可能な現実に衝撃を受けましたが、その皺寄せを若者に押し付け、彼らの未来ある人生を犠牲にして生きながらえる老人たちの姿に、心がかき乱されました。

一方で、認知症になっても、患者自身が自由と尊厳を持って暮らしていける可能性があるという示唆に、希望がもてました。

髙森美由紀『羊毛フェルトの比重』

おすすめ度:3.0

  • 他人に流されてきた主人公が、自分を取り戻していく姿に心が動かされる
  • 他人の気持ちや世間の当たり前よりも自分を大切にしたくなる
あらすじ
手芸店で働く30歳の根状ねじょうつむぎは、仕事を押し付けてくる先輩や自分勝手な彼氏に疲れ切っていました。それでも、私にも悪いところがあると考えて、問題から目を背け、自分にふたをして毎日をやり過ごしてきましたが、ある日、趣味のぬいぐるみづくりにケチをつけられ、さらにいくつかの出来事が重なったので…。

両親の喧嘩をみて育った主人公が、他人と言い争うことを極端に嫌うようになり、自分に「ふた」をして生きてきましたが、ある出来事をきっかけに変わろうとする物語です。

お金や仕事、他人の気持ち、世間の当たり前に振り回されてきた彼女が、ある少年との出会いをきっかけに、自分を取り戻し、新たな一歩を踏み出す姿に心が動かされました。

自分勝手な彼氏や、意地悪な先輩と向き合っていく彼女の姿をみて、これまで以上に自分を大切にしたくなりました。

まとめ

今回は、2022年に発売された小説【19冊】のおすすめを紹介しました。

どれも魅力的な小説ばかりなので、未読のものがあれば、この機会にぜひ読んでください。

今後も追記していくので、ときどきチェックしてもらえると嬉しいです。

「この小説もおすすめ!」など、お気軽にコメントください。
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