「2022年に発売されたおすすめの小説を紹介してほしい」という要望が届いたので、個人的におすすめの小説【10冊】をランキング形式で紹介します。
とはいえ、趣味嗜好は人それぞれ違うので、ランキングから漏れた小説も、ジャンル別に紹介します。
幅広いジャンルの小説を、「あらすじ」や「感想」、「おすすめ度」と共に紹介していくので、本選びの参考になれば嬉しいです。
【2022年発売】おすすめ小説10冊をランキング形式でご紹介
では早速、2022年に発売されたおすすめの小説【10冊】をランキング形式で紹介します。
第1位 安壇美緒『ラブカは静かに弓を持つ』
おすすめ度:
個人レッスンでも著作権料を徴収するために、全日本音楽著作権連盟に所属する主人公が、ミカサ音楽教室にスパイとして潜り込む物語です。
はじめは割り切ってスパイをしていた主人公が、講師とその仲間たちの優しさや音楽の素晴らしさに触れて、「スパイとしての仕事」と「チェロを楽しみたい気持ち」の板挟みに合う姿に、心が揺さぶられました。
また、ラストは「無数の信頼の上に人間関係は構築される」という、人を信頼する大切さが感動と共に伝わってきたので、涙がこぼれ落ちそうになりました。
第2位 宇佐美まこと『月の光の届く距離』
おすすめ度:
母親に捨てられたり、傷つけられたりするなど、親の愛情を知らずに育った人たちの過去を、ミステリー仕立てにした物語です。
親に恵まれなかった彼らが、優しい人たちに助けられて大人になり、その恩に報いるためにも、親に恵まれない子どもたちを、本当の親のように愛そうとする姿に心が動かされました。
また、売春をする少女たちが、お金よりも、一時の優しさや、嘘でもいいので愛情欲しさに体を売っていることにも驚き、心が痛みました。
第3位 早見和真『八月の母』
おすすめ度:
愛媛県伊予市で実際に起きた、17歳集団暴行死事件をモチーフにした衝撃の物語。
娘に虐待を繰り返してきた母が、自分の幸せのために娘を縛り付け、またその娘が自分の娘に同じことを繰り返す姿を取り上げた物語です。
不幸な少女に「これでもか!」というほど、次々と悲劇が襲いかかってくるので、心がかき乱されましたが、その一方で、自ら不幸に飛び込むかのように振る舞う少女たちの姿に衝撃を受けました。
たとえどれだけ世話になったとしても、自分の人生はその人のものではなく、自分だけのものだと、深く心に刻み込まれました。
第4位 西條奈加『六つの村を超えて髭をなびかせる者』
おすすめ度:
松前藩から民族差別を受けるアイヌの人たちを解放するために、人生をかけて行動する最上徳内の半生を取り上げた歴史小説です。
算額の才能があるだけでも羨ましいのに、その才能を捨ててまで、人生をかけて「アイヌの真実を世に広めたい!」と奮闘する最上徳内の半生に、感動と嫉妬する物語でした。
歴史小説としても面白く、賄賂のイメージが強い田沼意次がとった意外な政策にも驚かされました。
第5位 伊与原新『オオルリ流星群』
おすすめ度:
40歳を過ぎたあたりから、「このままでいいのかなぁ…」と不安に思っていた主人公たちが、天文台作りの手伝いを通して、第二の人生を歩む意義を見出していく物語です。
特別だと思っていた人たちも、実は悩み苦しみながら手足を動かし、アイデアを捻り出して、必死になって一歩ずつ前に進んでいる姿に、今を精一杯頑張ろうと励まされました。
また、天文学の画期的な研究手法に驚かされ、興味が湧きました。
第6位 小野寺史宜『いえ』
おすすめ度:
妹の左足に怪我を負わせた友人に対して、モヤモヤした気持ちを抑えきれなくなった主人公が、仕事でもプライベートでも人間関係で悩む物語です。
傷つき、ぼろぼろになった主人公が、相手の意思を尊重してこなかったことに気づき、苦手意識があった人たちの懐に飛び込み、相手の意思を知り、それを尊重して関係を改善していく姿に心が揺さぶられました。
お仕事小説としても面白く、スーパーで働く(パートさんと良い関係を築く)大変さも伝わってきました。
第7位 坂木司『楽園ジューシー』
おすすめ度:
ウジウジと過去にしがみつく主人公が、ホテルジューシーで「濃い」人たちと関わり、少しずつ自分が出せるように変わっていく物語です。
ミックスって外国人ぽくってカッコいい/カッコ悪い…といった外側からくる評価にこだわるのはやめて、自分の内側にある本当にやりたいこと、楽しいことに目を向けようと後押しされました。
また、南国で住みやすそうなイメージがある沖縄にも、家父長制といった古いしきたりや基地問題があり、単純に「ここではないどこか」に行っても幸せにはなれないことに気づかされました。
第8位 伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』
おすすめ度:
自ら行動を起こすのが苦手な社会人一年生、暴力を振るう父と仲間から逃げ出した少年、嫌なことばかりが続く先輩社員、誰にでも謝ってばかりいる課長など、さまざまな人たちの仕事が知らないところでつながっていく物語です。
誰にでも謝ってばかりいる情けない課長も、実は…というように、物事には絶対はなく、立場によって物事の見え方は変わるというメッセージに共感できました。
また、人生で大変なことはあるけれど、大抵のことは、元に戻せる、やり直せるというメッセージに励まされ、ラストですべてがつながっていく展開に驚き、クスッと笑えました。
第9位 白木健嗣『ヘパイストスの侍女』
おすすめ度:
自動運転車へのサイバー攻撃で起きた事件の全貌を明らかにすべく、殺人事件やサイバー犯罪を取り締まる警視庁の刑事たちと、自動運転車を開発する技術者たちが奮闘するミステリーです。
パワハラ上司や、その被害に遭って辛酸を舐めることになった優秀な研究者の姿に心が揺さぶられるだけでなく、最先端の自動運転技術やAI技術が盛り込まれたストーリーに引き込まれ、ページをめくる手がとまらなくなりました。
また、ラストの展開に驚かされ、どれほど技術が進歩しても、何よりも心が大切だというメッセージに共感できました。
第10位 一穂ミチ『砂嵐に星屑』
おすすめ度:
悩みと向き合って思いっきり傷ついた後に、弱い自分&嫌な自分を認めて前に進もうとする人たちの姿に、励まされる短編集です。
「ツイッター眺めるばっかりの頭でっかちから、ちょっとは大人になったということやね」といった言葉が心に突き刺さり、安全地帯から誰かを批判するのはやめて、今すぐ動き出したくなりました。
また、華やかに見えるテレビ業界にも裏があり、どのような場所にいようと、自分を認め、愛していくことが、前を向いて生きる力になるのだと気づかされました。
2022年発売の小説をジャンル別にご紹介
引き続き、2022年に発売された小説をジャンル別に紹介します。ジャンルは次のように分類しています。
ミステリー
南原詠『特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来』
おすすめ度:
凄腕弁理士の大鳳未来が、特許侵害を警告されたVTuberを守るために、驚きの手を使って相手をねじ伏せていくミステリーです。
特許を巡る争いをミステリーにした、これまでにない物語に引き込まれるだけでなく、VTuberという職業や、彼らが使っている撮影システム(測量用の3Dレーザースキャナーで人体をトラッキングし、データは独自の無線方式でサーバーに高速転送する…など)にも興味が湧きました。
テンポよく新たな謎が提示されていくので、続きが気になって一気読みしました。
塩田武士『朱色の化身』
おすすめ度:
ライターの主人公が、行方がわからなくなったゲームの開発者を探すために、多くの人たちに取材を重ね、彼女の過去を明らかにしていく物語です。
多くの人たちの証言で、珠緒という女性の人物像が浮き彫りになっていく構成が面白く、また彼女の悲惨な過去に心が痛みました。
「ゲーム障害」「家柄の格差」「銀行総合職」「就職差別」「親友の逮捕」など、時代の構造を浮き彫りにする社会問題が盛り込まれたストーリーに引き込まれ、最後まで一気に読みました。
本城雅人『にごりの月に誘われ』
おすすめ度:
余命3ヶ月もないIT企業の会長から、自叙伝の執筆を依頼されたフリーライターが、愛人との関係や警察沙汰になった話など、隠したいはずの過去を次々と聞かされ、何か裏があるのではないか?と疑うミステリーです。
出来上がった仮の自叙伝、フリーライター、IT企業の若手経営者という3つの視点が切り替わりながら物語の核心に迫っていく展開に、続きが気になってページをめくる手が止まらなくなりました。
ラストの二転三転する展開も面白く、タイトルに込められた意味もオシャレで心に残りました。
ヒューマンドラマ
浅田次郎『母の待つ里』
おすすめ度:
還暦世代の3人が、故郷に里帰りをする感動の物語。
一人暮らしを通してきた大企業の社長、退職と共に妻に離婚を言い渡された男性、母に先立たれて一人になった女医という還暦世代の3人が、故郷を求めて「母の待つ里」へと向かう物語です。
都会で何不自由なく暮らしてきた彼らが、ふとした瞬間に寂しさを覚え、自然豊かな故郷に思いを馳せ、いくつになっても自分のことを本気で思ってくれる母なる人を求める姿に、心が動かされました。
また、作中に登場する「ユナイテッド・ホームタウン・サービス」が新しく、今後こうしたサービスを求める人たちが本当に出てくるかもしれないと思えました。
寺地はるな『タイムマシンに乗れないぼくたち』
おすすめ度:
まわりと話し方が違っていたり、結婚していなかったり、群れるのが苦手な人たちが、孤独に傷つく日常を取り上げた短編集です。
「幸せ」のカタチは、一つではないはずなのに、まわりと違うだけで距離を取られ、不幸だと決めつけられ、傷つけられる人たちの姿に心が痛みました。
一方で、本当は誰もが孤独で、それぞれの苦しみがあり、痛みがあり、喜びが、願いがあることに気づくことができ、適切な距離感で孤独と付き合っていく必要があることがわかりました。
村山早紀『風の港』
おすすめ度:
悩みを抱える主人公たちが、空港という新たな旅立ちの場所で、ちょっとした奇跡と出会い、前を向いて歩んでいく姿に心が温まる短編集です。
「にっちもさっちもいかないときは風を待っていてもいいんですよ、きっと。静かに、諦めずに。良い風が吹くその日まで。」といった言葉が心に沁みました。
また、主人公たちのように、未来に飛び立てる日が来ることを信じて、今を懸命に生きようと励まされました。
瀬尾まいこ『夏の体温』
おすすめ度:
退屈な入院生活に嫌気がさしている小学生の前に、遊びの天才が現れる物語と、極悪人を主人公にした小説を書くために、腹黒と呼ばれる男子大学生に取材をする女子大生の物語、引っ越しを繰り返してきたせいで友だちができない中学生の物語、という3つの短編が楽しめる小説です。
どの物語も大きな出来事は起きませんが、悩みを抱えながらも他人に優しく接する人たちの温かさに、凝り固まった心がほぐされていくように感じました。
また、病を抱える子どもたちの姿に心が痛み、それでも今を楽しもうとする姿にパワーをもらえ、腹黒い男子大学生と彼に取材をする女子大生のやり取りに笑い、ラストはジーンとする展開に心が動かされました。
南杏子『アルツ村』
おすすめ度:
夜逃げをした主人公が、たどり着いた山奥の村に身を隠しながら、認知症患者ばかりが暮らす、その村に隠された秘密に迫る物語です。
認知症患者だとしても、老人ホームに入るのは難しく、家族が自宅で介護をするなんて不可能な現実に衝撃を受けましたが、その皺寄せを若者に押し付け、彼らの未来ある人生を犠牲にして生きながらえる老人たちの姿に、心がかき乱されました。
一方で、認知症になっても、患者自身が自由と尊厳を持って暮らしていける可能性があるという示唆に、希望がもてました。
髙森美由紀『羊毛フェルトの比重』
おすすめ度:
両親の喧嘩をみて育った主人公が、他人と言い争うことを極端に嫌うようになり、自分に「ふた」をして生きてきましたが、ある出来事をきっかけに変わろうとする物語です。
お金や仕事、他人の気持ち、世間の当たり前に振り回されてきた彼女が、ある少年との出会いをきっかけに、自分を取り戻し、新たな一歩を踏み出す姿に心が動かされました。
自分勝手な彼氏や、意地悪な先輩と向き合っていく彼女の姿をみて、これまで以上に自分を大切にしたくなりました。
まとめ
今回は、2022年に発売された小説【19冊】のおすすめを紹介しました。
どれも魅力的な小説ばかりなので、未読のものがあれば、この機会にぜひ読んでください。
今後も追記していくので、ときどきチェックしてもらえると嬉しいです。
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