宇佐美まこと『月の光の届く距離』感想/血のつながりはなくても家族のように愛してくれる人がいる

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『赤毛のアン』はお好きですか?

私は子どもの頃にアニメでよく見ていましたが、今思い返すと、孤児であるアンを実の娘のように育てるマシューとマリラの優しさに驚きます。

二人ともはじめからアンに対して好意的だったわけではありませんが、それでも他人を我が子のように愛する優しさに心が動かされます。

宇佐美まことさんの小説『月の光の届く距離』も、血のつながりはなくても、子どもたちを家族のように愛する人たちの姿に心動かされる物語です。

たとえ家族から愛されなくても、心から愛してくれる人と出会えれば、人生は大きく変わることがわかる、感動の物語です。

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『月の光の届く距離』の情報

タイトル 月の光の届く距離 
著者 宇佐美まこと 
おすすめ度 4.5 
ジャンル ヒューマンドラマ 
出版 光文社 (2022/1/18) 
ページ数 340ページ (単行本) 

おすすめポイント

  • 血のつながりに悩み苦しむ人たちの姿に心が痛む
  • 家族から愛されていない子どもは嘘の愛情でも求めてしまうことがわかる
  • 血のつながりよりも大切なものがあることを教えてくれる

『月の光の届く距離』のあらすじ

平凡な女子高生の柳田美優は、軽い気持ちで付き合った同級生と深く考えずに体を重ねた結果、子どもを身籠ります。

しかし、そのことを知った交際相手からは捨てられ、両親からも責められて、家を追い出されました。

こうして一人で生きていくことになった美優は、想像していた以上に厳しい現実に打ちのめされ、ビルの屋上から飛び降りようとします。

ところが、そこに「何か食べ物を持ってない?」と尋ねてきた5歳くらいの女の子が現れたことがきっかけとなって…。

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『月の光の届く距離』の感想

血のつながりに悩み苦しむ人たちの姿に心が痛む

血のつながりがあれば家族になれると思っていませんか?

しかし、現実には、血のつながった家族に愛されずに、悩み苦しんでいる人たちがいます。

『月の光の届く距離』の主人公・柳田美優を助けた女性・野中千沙もその一人。

彼女は、幼い頃に家族から愛されなかっただけでなく、性的暴行を受けていました。

だからこそ、30代になった今では、ODORIBAというNPO団体を運営して、家庭の事情で居場所や生活費を得る手立てを失った子どもたちを支援していました。

親がご飯を食べさせてくれないので、自分の体を売って、妹と二人で暮らしている中学生の女の子など、大人に利用されやすい子どもたちを一人でも多く助けようとしていたのです。

千沙の他にも、美優が子どもを産むまで里親として彼女を受け入れた、40代の井川明良とその妹の西村華南子も、思春期には家族に愛されていないことで悩んでいました。

明良は、次々と女性を変えて引っ越しを繰り返す父親に嫌気がさしていました。身勝手な理由で誠実な人たちの気持ちを踏みにじる父が許せなかったからです。

一方の華南子も、ある事情があって、シングルマザーとして彼女を育ててくれた母親を信じられなくなっていました。

そんな家族の愛情に恵まれなかった人たちの姿に心が痛み、血のつながりだけでは本当の家族にはなれないのではないかと考えさせられる物語でした。

家族から愛されていない子どもは嘘の愛情でも求めてしまう

お金に困っていなくても、体を売っている女の子が多いことをご存知ですか?

もちろん、お金が欲しくてやっている女の子もいますが、多くの女の子たちは、自分は何をやっているのだろうと思いながら体を売っているそうです。

ブランドものが欲しいわけでもないのに、お金がないと、まわりと同じことをしていないと不安になるからだそうです。

もっと言えば、家族の愛情に飢えているからです。

他人から愛されたいと願う彼女たちは、一人でいるのは寂しいので、嘘だとわかっていても、優しくしてくれる男性についていき、体を売っています。

そうして稼いだお金で、まわりと同じことをして、寂しさを紛らわせているのです。

とはいえ、どれだけ体を売っても、手に入るのは嘘の愛情なので、魂が削られ、30代まで生きられたらいい…と思うようになります。

そんなつらい現実を受け入れられずに、自殺をする女の子が多いという事実に心が痛み、またそうした女の子を利用する大人たちに怒りが湧く物語でした。

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血のつながりよりも大切なものがあることを教えてくれる

『月の光の届く距離』では、血のつながりのない家族の姿が描かれています。

子どもを産むまで里親として美優を預かった井川明良と西村華南子は、ゲストハウスを経営しながら、小中学生の3人の子どもを育てていました。

養子ではないので、ずっと一緒にいられるわけではありませんが、子どもたちの未来を思って面倒をみていました。

そんな彼らの信条は、血のつながった家族を包む愛が「太陽の光」みたいなものだとしたら、自分たちがやっているのは「月の光」のような優しくはかないものだけれど、家族としてのつながりを持ち続けようというものです。

血のつながりがなければ、必要以上に遠慮したり、反発したり、愛し合ったりしてお互いの距離を見出していくしかありません。

しかし、そうして信頼関係が築ければ、いつか遠く離れることになっても、子どもたちは自分のことを愛してくれる人がいると心から思えるはずです。

だからこそ、決して心が離れてしまわない関係を築こうと、子どもたちを真剣に愛していたのです。

このように、たとえ血のつながりはなくても、悩み苦しむ子どもたちのために、人生をかけて一生懸命になる彼らの姿に、感動で涙がこぼれ落ちそうになる物語です。

また、血のつながりで家族かどうかが決まるわけではなく、心から愛してくれる人こそが本当の家族だとわかる物語でした。

まとめ

今回は、宇佐美まことさんの小説『月の光の届く距離』のあらすじと感想を紹介してきました。

家族の愛情を求めて、自分で自分を傷つける子どもたちの姿に心が痛む物語です。

しかし、そんな子どもたちのことを本気で想い、まともな道を歩ませようとする大人たちの姿に感動で涙がこぼれ落ちそうになる物語でもありました。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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