2022年に文庫化された小説の中から、個人的におすすめの小説【10作品】をランキング形式で紹介します。
とはいえ、趣味嗜好は人それぞれ違うので、ランキングから外れた小説も、ジャンル別に紹介します。
幅広いジャンルの小説を、「あらすじ」や「感想」、「おすすめ度」と共に紹介していくので、本選びの参考になれば嬉しいです。
【2022年文庫化】おすすめ小説10作品をランキング形式でご紹介
では早速、2022年に文庫化されたおすすめの小説【10作品】をランキング形式で紹介します。
第1位 青山美智子『ただいま神様当番』
おすすめ度:
弟がバカにしか思えない小学生や、リア充になりたいと願う高校生など、悩みを抱える人たちが、欲しいと願っていたものを手に入れる代わりに、神様当番になり、「本当に欲しいもの」を見つけていく物語です。
ハンドメイド教室に申し込みたい、SNSで知り合った異性に会いたいなど、やりたいと思っているのに躊躇していた行動が、神様によって強制的に実行されることで、変わっていく主人公たちの姿に心が動かされました。
たとえ失敗して傷つくことになったとしても、新たな一歩踏み出してみようという勇気が湧いてくる感動の物語でした。
第2位 東野圭吾『希望の糸』
おすすめ度:
地震で子どもを失った夫婦、面識のない刑事の名前が父の遺言に書かれていた女将、喫茶店を経営する女性が殺された事件の謎に迫る松宮脩平…という3つの物語が、ある結末へとつながっていくミステリーです。
何よりも子どものことを想う親たちそれぞれの物語に心が動かされ、ラストは感動で涙が止まらなくなりました。
また、タイトルに込められた意味に気づいたとき、多くの親にとって「子ども」の存在があまりにも大きいことに改めて驚き、心が揺さぶられました。
第3位 伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』
おすすめ度:
お客様サポートをしていた岸くんが、新商品のマシュマロに画鋲が入っていたという苦情を担当することで知り合った二人と、夢の世界で巨大な生物を倒し、現実にもその結果が影響する物語です。
問題を起こした張本人が責任を取らずに逃げ出し、正直者や有能な人ばかりが損をする姿に怒りが込み上げてきましたが、真面目な彼らがほんの少しだけ報われる展開に心が動かされました。
また、夢と現実がリンクする物語に引き込まれ、未来は占いやジンクス、夢の世界の行動で決まるわけではなく、今の自分の行動で決まるというメッセージに励まされました。
第4位 岩井圭也『永遠についての証明』
おすすめ度:
数学の天才・三ツ矢暸司が、特別推薦で入学した熊沢と佐那と共に未解決問題を解き、論文を書き上げるまでと、彼らのその後を取り上げた物語です。
何よりも数学が好きな暸司に対して、数学は選択肢のひとつだと言い切る佐那と、暸司に負けたくない一心で苦行のように数学に向き合う熊沢が、協力して論文を書き上げた後に、それぞれ別の道を歩む姿に心が揺さぶられました。
また、年をとった彼らが、数学が好きだという一点でつながり、再び同じ景色を眺めるラストに心が動かされました。
第5位 町田そのこ『うつくしが丘の不幸の家』
おすすめ度:
うつくしが丘にある「不幸の家」と呼ばれる一軒家で暮らす5つの家族が、自分なりの幸せを見つけていく短編集です。
遅れて反抗期になった高校生の息子と、浮気をする夫に悩まされる主婦の物語や、不妊治療がうまくいかず、妻の身体がこれ以上ボロボロになるのを見てられないと離婚届を渡す夫の物語など、不幸な境遇にいる人たちが、悩み苦しむ姿に心が痛みました。
一方で、「幸せは人から貰ったり汚されたりするものじゃないわよ。自分で作り上げたものを壊すのも汚すのも、自分にしかできないの。他人に左右されて駄目にしちゃうなんてもったいないわ」といった言葉が心に突き刺さり、自分なりの幸せを見つけていく家族の姿に感動しました。
第6位 新川帆立『倒産続きの彼女』
おすすめ度:
おばあちゃんと二人暮らしをしている美馬玉子と、先輩の剣持麗子が、入社した会社が次々と倒産していく近藤まりあの正体に迫る物語です。
おばあちゃんの世話をするために、できるだけお金を使わないように節約したり、必死になって働いてきた玉子が、正反対の麗子に嫉妬心を抱きながらも、徐々に打ち解け、協力して事件の謎に迫る展開に引き込まれました。
また、おばあちゃんと自分を守るために、お金や権力などの序列を大切にしてきた玉子が、そんなものに捉われずに、自分の好きに生きようと変わっていく姿に励まされました。
第7位 湊かなえ『落日』
おすすめ度:
15年前に引きこもりの男性が高校生の妹・沙良を殺し、さらに放火して両親も殺した「笹塚町一家殺人事件」の真相に迫る物語です。
映画監督の長谷部香から脚本を依頼された甲斐千尋は、香がこの事件を通して何を撮りたいのか悩みますが、現実から目を背けない香に突き動かされて、たとえ望まないものだとしても、現実を受け入れようと変わっていく姿に心が動かされました。
また、複数の絡み合った事件がひとつにつながっていく展開が気持ちよく、ラストは驚きと感動が味わえました。
第8位 今村昌弘『魔眼の匣の殺人』
おすすめ度:
葉村譲と剣崎比留子のコンビが、ゾンビ事件を予言した超能力者に会いに向かった村で、またしても殺人事件に巻き込まれるミステリーです。
「男女が二人ずつ、四人死ぬ」という予言を絶対的なものにすることで、その制約の中で殺人事件が展開していくという、他とは一味違うミステリーが楽しめました。
また、ラストは「まさか!」のどんでん返しに驚かされました。
第9位 城山真一『看守の流儀』
おすすめ度:
加賀刑務所で印刷を請け負っていた大学の入試問題を、誰がどうやって外部に持ち出したのか?なぜ受刑者の健康診断記録とレントゲンフィルムが突然なくなったのか?など、刑務所内で起こった5つの事件に、敏腕刑務官・火石司が挑むミステリーです。
刑務所では、受刑者による暴動や逃走、事故死は絶対に防ぐ必要があり、なかでも事故死は、受刑者を社会復帰させることができないので、最大の失敗とみなされるなど、受刑者のために奮闘する刑務官たちの姿に驚かされました。
また、「火石マジック」と呼ばれるなど、驚きの方法で事件を解決していく火石司の魅力に引き込まれる一方で、顔に傷があり、刑務官たちが決して口にしないタブーがある火石の正体が気になって、ページをめくる手が止まらなくなりました。
第10位 潮谷験『スイッチ 悪意の実験』
おすすめ度:
高額報酬のアルバイトに参加した6人の誰かが、赤字のパン屋を破滅させるスイッチを押した理由に迫る物語です。
心理コンサルタントのスポンサーが、「理由がない悪意」を調査するために、参加者に大金を払ってまで、パン屋を破滅させるスイッチを押すかどうかを実験する理由が気になり、ページをめくる手が止まらなくなりました。
また、スイッチを押しても何のメリットもないのに、参加者の誰かがスイッチを押した理由と、誰がスイッチを押したのかを知りたくて、最後まで一気に読みました。
他にも、「理由もなく人を傷つけるのが一番恐ろしい悪だというなら、根拠もないのに自分を傷つけるのも同じくらい罪深い」というメッセージに共感し、意外なラストに驚かされました。
宗教をめぐる「理由がない悪意」と「中途半端な善意」がもたらす罪を描いた物語に興味がある方におすすめの小説です。
2022年に文庫化された小説をジャンル別にご紹介
引き続き、2022年に文庫化された小説をジャンル別に紹介します。ジャンルは次のように分類しています。
ヒューマンドラマ
宇佐美まこと『展望塔のラプンツェル』
おすすめ度:
荒んだ街で生きる子どもたちの日常を、児童養護施設の職員、虐待されて育った子ども、子どもが欲しくて仕方がない主婦という3つの視点で描く物語です。
食事がもらえなかったり、家族に暴力を振るわれたり、犯されたりする子どもたちの姿に心が痛む一方で、酷い目に遭わされても家族と一緒に居たいと願う子どもたちの姿に心がかき乱されました。
また、そんな子どもたちを救うために、児童相談所の職員が、両親に罵声を浴びせられたり、殴られたりしながらも、問題と向き合う姿に、心が動かされました。
他にも、簡単に子どもを虐待する親と、子どもが欲しくて仕方がない不妊治療をする主婦の対比に、うまくいかない現実を突きつけられ、ラストは想像を上回る展開に驚かされました。
虐待される子どもたちの悲惨さと、大人たちの酷さと優しさに心が揺さぶられる物語に興味がある方におすすめの小説です。
椰月美智子『純喫茶パオーン』
おすすめ度:
創業50年の純喫茶パオーンを舞台に、店主の孫である主人公が、小学五年と中学一年、大学一年のときに出会った不思議な日常の謎に迫る物語です。
嘘が見破れる鏡や夜中の3時にやってくるのっぺらぼう、殺人予告にしか思えないメモなど、少し不思議な日常の謎が気になって一気に読みました。
また、個性的な登場人物たちが魅力的で、純喫茶パオーンに訪れてみたくなりました。
柚木麻子『マジカルグランマ』
おすすめ度:
世間が憧れるおばあさん像を演じた主人公が、夫と不仲だったことを公表したことで大バッシングを受けるも、周りを撒き込んで次々と新たな挑戦をしていく物語です。
「いつも優しくて、会えばお小遣いをくれて、老いの醜さや賢さを持たないキュートなおばあさん」というステレオタイプをなぞることは、おばあさんとはこういうものだと押し付けて、そこからこぼれた人たちを追いやっているのではないか?という指摘にハッとしました。
また、誰かの犠牲や献身で生まれた幸せは、ある日突然終わってしまうので、自分の未来や生活を真剣に考えて、自分のために行動することは決して悪いことではないというメッセージに心が動かされました。
まとめ
今回は、2022年に文庫化された小説【13作品】のおすすめを紹介しました。
どれも魅力的な小説ばかりなので、未読のものがあれば、この機会にぜひ読んでください。
今後も追記していくので、ときどきチェックしてもらえると嬉しいです。
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