40歳を過ぎたあたりから、「このままでいいのかなぁ…」とモヤモヤしていたので、似たような悩みを抱える主人公に、共感しながら読み終えました。
いつの間にか、あまり自分から動き出さなくなっていたことに思い当たり、これでは仕事もつまらなくなるよねーと納得しました。
積極的に手足を動かさないと、いいアイデアは浮かんでこないと気づかされる物語でした。
『オオルリ流星群』の情報
おすすめポイント
『オオルリ流星群』のあらすじ
父から受け継いだ薬局を経営する45歳の種村久志は、この先どう生きたいのかわからなくなっていました。
近所にできたドラッグストアの影響で、経営は悪化の一途を辿っていましたが、行動する気が起きませんでした。
そんな久志の前に高校時代の同級生・山際慧子が現れます。
彼女は国立天文台の研究員をクビになり、自ら天文台を作るために、この町に戻ってきたと言いました。
この話を聞いた同級生たちは、高校時代にみんなで協力して作った巨大なタペストリーを思い出し、自主的に手伝い始めますが…。
『オオルリ流星群』の感想
未来に希望がもてなくなった主人公が天文台作りを手伝う展開が熱い
40歳を過ぎたあたりから、「人生このままでいいのかな?」と不安になったり、鬱っぽくなることを、「ミドルエイジ・クライシス」と呼ぶことをご存知ですか?
種村久志もその一人でしたが、他の同級生たちも似たような症状を抱えていました。
45歳定年説をとなえて、勤めていた会社を辞め、弁護士を目指している同級生もいましたが、多くの同級生は何のために仕事をしているのかわからなくなったり、仕事を辞めて家に引きこもったりしていました。
そんな中、国立天文台の研究員をクビになった慧子だけが、今だからこそ出来ることがあると言って、動き始めます。
知識と経験を積んできた今だからこそ、物事にはいろいろなやり方があることを知っていると言い、自らの手で天文台を作り、国立天文台でも実現できない研究をやると言うんですよね。
そこで、高校生の頃から彼女は特別だと感じていた久志たちが、進み出て天文台作りを手伝い、その過程で第二の人生を歩む意義を見出していく展開に心が動きました。
画期的な研究を実現しようとする、慧子の研究手法にも引き込まれました。
特別だと思っている人たちも手足を動かして行動していることがわかる
とはいえ、個人的にいちばん心が動いたのは、「特別な人なんて存在しない」というメッセージです。
高校3年生の文化祭で、クラスで巨大なオオルリのタペストリーを出店することを決めたとき、そのすべてを慧子が設計しました。
空き缶の並べ方を決めたのも、荷重に耐える針金の太さや、屋上に固定する方法を考えたのも、すべて慧子でした。
だからこそ、同級生たちは慧子に感謝の気持ちを込めて、天文台作りを手伝い始めたのですが、久志は、上下関係を作っているように思えて、モヤモヤしていました。
その根っこには、彼女への嫉妬と羨望があるように思えて、嫌気が差していました。
ところが、高校時代のある出来事の真相が明らかになったとき、実は慧子は皆が思っていたような特別な存在ではなかったことに気づきます。
ときに衝動に駆られ、予想外のことに戸惑い、悩み傷ついてきた、ごく普通の人間だということに気づいたのです。
そんな普通な慧子が、自ら手足を動かすことで、アイデアを生み出し、多くの人たちを巻き込み、天文台作りを実現していく姿に、久志も励まされるんですよね。
彼女の姿を通して、手の届くところからでも、実際に手足を動かしていけば、現実は少しずつ変わっていくことに気づいたのです。
私も、久志のように、あの人は運がいいから、特別だから…と言い訳をしてきたように思いますが、これからはそんな言い訳をせずに手足を動かしていこうと思います。
ミドルエイジ・クライシスから卒業するためにも、もう一度技術を勉強しようと思います。
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