自ら可能性を閉ざす必要はない!/大谷朝子『がらんどう』感想

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興味がないのに、諦めきれないことってありませんか?

大谷朝子さんの小説『がらんどう』の主人公は、結婚にも出産にもまったく興味がありませんでしたが、諦めきれずにいました。

そんな自分に罪悪感を抱きながらも、諦めきれずにいる主人公の気持ちが痛いほど伝わってくる、共感できる物語でした。

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『がらんどう』のおすすめポイントとあらすじ

おすすめ度:3.9

  • 40歳前後で一人暮らしをする寂しさが痛いほど伝わってくる
  • 結婚や出産を諦めるなど、人と違う道を歩む難しさがわかる
  • 興味がなくても可能性を閉ざす必要がないことがわかり、気持ちが楽になる
あらすじ
38歳の平井佐和子は、42歳の菅原とルームシェアを始めました。二人とも女性でしたが、佐和子は誰に対しても恋愛感情が抱けず、菅原は両親が泥沼離婚をしていたので、絶対に結婚したくないと考えていたからです。二人の生きがいは、男性二人組のアイドルグループでした。とはいえ、佐和子は、結婚や出産をする将来がイメージできないにも関わらず、諦めきれずにいたので、婚活アプリに登録し、何度かメッセージのやり取りをした男性と会いますが…。

『がらんどう』の感想

誰にでも興味がなくても手放せないものが一つや二つはあると思います。

私でいえば、昇進がそうです。

私は昇進にあまり興味がありませんが、勧められるとその気になり、罪悪感を抱きつつも簡単に手放せなくなります。

『がらんどう』の主人公・平井佐和子も、まったく興味がないのに、結婚や出産を諦めきれずにいました。

佐和子の母が、髪の毛が薄く、ズボンの上にたるんだお腹が乗っているおじさんと再婚したことで、そんな男性に恋愛感情を抱いた母に猛烈な嫌悪感を抱き、男性に恋心を抱けなくなったにも関わらず、結婚や出産という多くの人が歩む道を諦めきれずにいました。

だからこそ、一度は結婚や出産を諦めて、菅原とルームシェアをすることを決めたのに、婚活アプリに登録して、何人かの男性とメッセージのやり取りをしていたのですが、ある出来事があり、勢いに任せて菅原に相談したところ、可能性を閉ざす必要はないと言われます。

諦めないことが正解ではないように、諦めることが正解でもないと言われ、チャンスがあるのに自ら可能性を閉ざす必要がないことに気づきました。

さらに、別の出来事がきっかけで、結婚や出産から解放されていく佐和子の姿を通して、興味がないからといって、可能性を残しておくことに罪悪感を覚える必要も、焦って諦める必要もないことがわかり、気持ちが楽になりました。

40歳前後の女性二人が将来を悩みながらルームシェアをする物語に興味がある方におすすめの小説です。

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