悩みとどう向き合っていますか?
私は他人のせいにして終わらせることもありますが、畠中恵さんの小説『おまけのこ』を読んで、
悩みとの向き合い方を見直したくなりました。
悩みを抱えながらも前向きに行動する登場人物たちに、励まされる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 『しゃばけ』シリーズが好きな人
- 悩みとの向き合い方を教えてくれる物語に興味がある人
- 魅力的な妖怪が登場する物語が好きな人
- 畠中恵さんの小説が好きな人
あらすじ:かわいい小鬼が活躍する物語
火事になると全財産が一瞬で消えてしまう…。
子供にそんな心配をさせたくないと考えていた天城屋の主人は、長崎屋に高額な珊瑚玉を注文しました。
その大粒の玉を櫛につけて、火事になっても持って逃げられるようにしたかったのです。
ところが、珊瑚玉を櫛職人の八介に渡したところ、八介は殴られ、珊瑚玉はどこかに消えてしまいました。
容疑者は小間物屋の直次、髪結いのおてい、三沢屋の手代・磯吉の3人。
珊瑚玉を欲しがっていた小鬼・鳴家が大活躍する!?という物語が楽しめます。
優しさと哀しさに満ち溢れた短編集
『おまけのこ』は先ほど紹介した物語も含めて全5篇で構成された短編集です。
これまでの作品に比べて、登場人物たちの優しさや哀しみが丁寧に描かれているので、心に響くんですよね。
なかでもおすすめなのが、『こわい』『畳紙』『ありんすこく』。
それぞれ簡単に紹介していきます。
『こわい』
病弱な一太郎が幼馴染の栄吉と喧嘩!?
栄吉の作った菓子があまりにも不味く、吐き出してしまったのが原因でした。
一太郎は、栄吉と仲直りをしたいと思いますが、これまで喧嘩をしたことがないので、その方法がわかりません。
そこに現れたのが、孤者異(こわい)と呼ばれる妖。彼は職人の腕が上がる薬を持っていると言います。
一太郎は、その薬を手に入れて栄吉と仲直りしようとしますが…。
栄吉の決断と孤者異の哀しみに心揺さぶられる物語です。
『畳紙』
前作『ねこのばば』に登場したお雛ちゃんが再登場!?

お雛ちゃんは、心優しく賢い女性でしたが、誰もが驚くほどの厚化粧をしていました。
早くに両親を亡くし、厳しい祖父母に育てられた彼女は、化粧を濃くすることで祖父母から自分を守っていたのです。
しかし、婚約者もいるのに、このまま化粧をしていいのか気になるようになりました。
そこで一太郎に相談しようとしたところ…。
屏風のぞきが大活躍する物語です。
『ありんすこく』
一太郎が吉原の禿を足抜けさせる!?
父親の藤兵衛と吉原に行った一太郎は、そこで出会ったかえでという禿を足抜けさせると約束しました。
彼女は心臓が弱く、長く生きられなかったからです。
しかし、足抜け当日。かえでは言い寄られていた三之助に連れさられてしまいます。
三之助に足抜けをバラした犯人は…。
最後に放った一太郎のセリフが共感できる物語です。
悩みとの向き合い方を教えてくれる物語
『おまけのこ』に登場する人たちの多くは悩みを抱えていました。
孤者異は、誰も自分のことを大切にしてくれないと悩み、
栄吉は菓子職人なのに美味しい菓子が作れないと悩んでいました。
一太郎は、病弱で自由に外出できないことを、お雛ちゃんは厚化粧をやめられないことを悩み、
かえでは心臓が弱く育ててもらった恩が返せないことを悩んでいました。
このように多くの登場人物が悩みを抱えていましたが、その対応はそれぞれ違っていました。
孤者異は悩みを人のせいにしますが、一太郎や栄吉、お雛ちゃんたちは自分の悩みとゆるく向き合っていきます。
その向き合い方ひとつで、物語の結末が大きく変わっていくんですよね。
そんな一太郎たちの姿を通して、悩みとの向き合い方を見直したくなる物語です。
まとめ
今回は、悩みとの向き合い方を教えてくれる畠中恵さんの小説『おまけのこ』を紹介してきました。
一味変わった時代ミステリーが楽しめるだけでなく、優しさと哀しさに満ち溢れた短編集としても楽しめるので、
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
コメント