横山秀夫『ノースライト』は仕事を家族を大切にしたくなる物語

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仕事を家族を大切にしていますか?

私は大切にしているつもりでしたが、横山秀夫さんの小説『ノースライト』を読んで、その真価が問われるのは逆境に陥ったときだと気づきました。

逆境にあっても、家族を仕事を大切にできるかどうかで、その後の人生が大きく変わることがわかる物語なんですよね。

おすすめ度:4.5

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こんな人におすすめ

  • 謎が気になってページをめくる手がとまらなくなる物語が好きな人
  • 仕事を家族を大切にしたくなる物語に興味がある人
  • 感動できる物語が好きな人
  • 横山秀夫さんの小説が好きな人

あらすじ:住みたい家を建てて欲しいと依頼された建築士の物語

物語の主人公は、一級建築士の青瀬稔。

彼には日向子という中学一年生の娘がいましたが、ある理由で妻と離婚をしており、月に一度しか会えませんでした。

バブルが弾けたときに、勤めていた設計事務所を自ら辞め、次の仕事を見つけられずに、お酒ばかり飲むようになったからです。

とはいえ、それはあくまでも離婚の原因のひとつであり、根本的には妻のゆかりが、彼の建築プランを否定して、自らの建築プランを優先したことに原因がありました。

「コンクリートと人生を共にするなんて考えられないの」と、プロとして誇りを持っていた青葉の提案を全否定していたんですよね。

その日から、青瀬家では「我が家」のプランニングは宙に浮き、ギクシャクするようになりました。そして、ついに離婚に至ったのです。

こうして青瀬は、一人暮らしを始め、今では大学の同期である岡嶋昭彦の設計事務所で働いていましたが、

「すべてお任せします。青瀬さん、あなた自身が住みたい家を建ててください」

という建築士にとって夢のような依頼が舞い込みます。

青瀬は、時間を忘れてこの仕事に打ち込み、自信の家を完成させましたが、

家を引き渡して4ヶ月経った今でも、なぜか持ち主である吉野淘汰は、その家に住んでいませんでした。

引っ越した形跡もなく、彼自身の行方もわからず、その家に持ち込まれていたのは、ドイツの建築家・タウトの椅子ただひとつだけでした。

その理由は…。という物語が楽しめる小説です。

感想①:謎が気になってページをめくる手が止まらなくなる

この物語最大の謎は、なぜ大金を払って建てた家に、依頼者である吉野淘汰が住んでいなかったのかです。

もちろん、家を引き渡す際にも、吉野は心から喜んでいました。

また、青瀬が建てた家にも文句のつけようがありませんでした。

大手出版社が出した『平成すまい200選』に選ばれるほどの出来栄えだったからです。

しかも、その本を見た人たちが、青瀬に同じ家をつくって欲しいと依頼してくるほど、魅力的な家でした。

それにも関わらず、吉野はこの家に引っ越さず、ドイツの建築家・タウトがつくった椅子ひとつだけを持ち込み、放置していたんですよね。

青瀬が吉野に電話を入れても、応答がなく、まるで行方をくらませているかのようでした。

一体、なぜ…という謎が気になって、ページをめくる手が止まらなくなります。

知念実希人さんの小説『仮面病棟』でもそうでしたが、

知念実希人『仮面病棟』はどんでん返しが楽しめる医療ミステリー
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ありえない謎が提示されると、続きが気になって、一気に物語に惹き込まれます。

感想②:家は家族の象徴なのかもしれない

あらすじで、青瀬夫婦は「我が家」のプランがすれ違い、それが原因で離婚に至ったと紹介しましたが、

では、なぜ夫婦関係がギクシャクするほど、彼らは家にこだわりを持っていたのでしょうか。

もちろん、建築士という職業も関係していましたが、それ以上に幼少期の影響がこだわりをもつ原因になっていました。

青瀬の父は、ダムを建設する仕事をしており、各地を転々と渡り歩いていました。

もちろん、青瀬も父と一緒に次々と家を変えていき、28回も転居していました。

そのせいで友達が一人も出来なかった青瀬は、家にこだわりを持つようになり、父の仕事の影響もあって、コンクリートの家を建てようと考えていたのです。

一方、妻のゆかりは、子供の頃にだだっ広い木の家に住んでいたという理由で、コンクリートなんて考えられない…と青瀬の提案を拒否しました。

こうして、二人の関係は悪化していくわけですが、『WHO YOU ARE』の感想に、文化が子供の行動に大きな影響を与えていると書いたように、

「部下の行動」も「子供の行動」も文化で決まる
会社や家族の文化を大切にしていますか?「文化なんて考えたことがないよ」と思われる方も多いかもしれませんが、私たちの日々の行動の積み重ねが文化となり、部下や子供たちに大きな影響を与えています。「徳とは信条ではなく行動に基づくべきだ」とは武士道...

その文化を築き上げてきた家にこだわりを持つのは、ごく自然なことだと思います。

この物語を通して、家という存在の大きさを再認識させられました。

感想③:家族を、そして仕事を大切にしたくなる物語

さて、この物語では、青瀬家族の他に、家の建築を依頼してきた吉野家族や、青瀬が勤める事務所の所長・岡嶋昭彦が抱える家庭問題が描かれていきます。

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、彼らが抱えていた闇は深く、救いようのないものでしたが、

青瀬が人生のすべてをかけて生み出した家がきっかけとなり、彼らが抱えていた闇に光があたっていきます。

『ノースライト』というタイトルは、冷たくて厳しさのある「北」からの光であっても、闇を晴らして光を注ぐことができる、

つまり、青瀬のように闇を抱えていても、真剣に仕事をすれば多くの人たちに光を注ぎ込むことができる…という想いが込められているように思えてきます。

また、原田マハさんの小説『本日は、お日柄もよく』でも、仕事を通して自分を、そして周りの人たちを幸せな気持ちにしていく姿が描かれていましたが、

原田マハ『本日は、お日柄もよく』は言葉の力を信じたくなる物語
 言葉には世界を変える力があります。 たとえば、2008年のアメリカ合衆国大統領選挙で、バラク・オバマが民主党の候補者に選ばれたのは、言葉の力を使ったからでした。 当時、次の大統領候補として最も呼び声が高かったのは、ヒラリー・クリントン。オ...

このような物語を読むと、私も多くの人たちに光を注ぎ込めるような仕事をしたいと思え、さらに家族も大切にしたくなりました。

ラストは感動で胸がいっぱいになる物語です。

まとめ

今回は、横山秀夫さんの小説『ノースライト』のあらすじと感想を紹介してきました。

2020年本屋大賞で4位になった小説で、ラストは感動で胸がいっぱいになる物語でもあるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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