海堂尊『ナイチンゲールの沈黙』は小児医療の大変さがわかるミステリー小説

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子育てしていますか?

私には二人の子供がいますが、突然、高熱が出たり、吐いたりすることがあるので、病気になると慌ててしまいがちです。

しかし、海堂尊さんの小説『ナイチンゲールの沈黙』を読んで、もう少しどっしりと構える必要があるかも…と思えたんですよね。

小児医療の大変さが伝わってくる物語だったからです。

おすすめ度:3.5

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こんな人におすすめ

  • 小児医療の大変さを知りたい人
  • 歌に秘められた力をテーマにしたミステリーを読んでみたい人
  • 田口・白鳥シリーズが好きな人
  • 海堂尊さんの小説が好きな人

あらすじ:歌をテーマに繰り広げられるミステリー

物語の主人公は、東城大学医学部附属病院で患者の愚痴を聞き続ける仕事をする田口公平。

彼は、高階病院長から呼び出され、不定愁訴外来を週三日から毎日に増やして欲しいと要望されました。

病院長への直訴箱に投書があったからです。

この要望を何とか断った田口先生でしたが、忘年会当日の当直で、水落冴子という女性歌手が救急で運ばれてきたことで、次々と難題に巻き込まれることになりました。

彼女は今話題の歌姫でしたが、アルコール依存症で、残された時間はそれほど多くありませんでした。

そんな歌姫を運んできたのは、小児科病棟の看護師・浜田小夜と同期の看護師・如月翔子です。

彼女たちは、忘年会終わりの飲みに向かう途中で、冴子のマネージャーからライブに来ないかと誘われ、彼女が血を吐いて倒れる瞬間を目撃したので、救急車を呼んだのです。

こうして冴子は東城大学医学部附属病院の「ドア・トゥ・ヘブン」と呼ばれるVIP室に入院することになりましたが、

その直後、小夜が担当していた子供の父親が何者かによって殺害されます。

田口先生は、水落冴子の主治医となり、子供相手に不定愁訴外来を行い、さらには警察庁も加わって犯人探しをするハメになりましたが…。

という物語が楽しめるミステリー小説です。

感想①:前作に続いて白鳥の登場で物語が一気に盛り上がる

前作『チーム・バチスタの栄光』に続いて、この物語でも後半に厚生労働省の役人・白鳥が登場します。

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はちゃめちゃな彼の登場で物語が一気に盛り上がるんですよね。

では、なぜ彼が登場したかというと、あらすじでも紹介したように浜田小夜が担当していた牧村瑞人の父親が何者かによって殺害されたからです。

しかも、殺人現場では、丁寧に刻まれた臓器が部屋の四隅に置かれていました。まるで解剖したかのように…。

この謎に迫ることになったのは、警視庁から桜宮署に出向してきた加納達也です。

彼は白鳥の天敵というだけあって個性あふれる人物でしたが、デジタル・ムービー・アナリシスという手法を使って犯人探しを始めます。

すべての捜査情報をデジタル画像処理化した後に、コンピュータ推理にて未知の情報を仮想空間に再構築してから引き戻すという技術を使って犯人を追い詰めます。

このように、白鳥や加納といった個性あふれるキャラクターたちが、最先端の技術を駆使しながら犯人逮捕に向かって邁進していく姿が楽しめる物語です。

感想②:小児医療は大変すぎる

この物語では、小児医療を舞台に描かれていますが、医師や看護師にとって小児医療がどれほど大変な仕事かがわかります。

たとえば、熱が出てぐったりしていた子供が今は平熱に戻っていても、「でも、もし熱が出たら…」と心配して診察して欲しいという親が多いと言います。

たしかに、子供を心配する気持ちはわかりますが、医師は「あなたのお子さんだけが患者じゃないの」という罵りを心の中に閉じ込めて黙々と対応しているそうです。

もちろん、子供は大人の予想を裏切る行動ばかりとり、泣いたり、喚いたりとコントロールできません。

このように、子供と親という次元の違う生き物を同時に扱う必要があるので大変だというのです。

牧村瑞人もそうです。彼はレティノブラストーマという眼球に発生する癌の一種にかかっていましたが、生きる希望を見出せずにいたので、手術はしないと言い切っていました。

また、彼の父親は無職で酒浸りだったので、カネがかかる息子の手術は認めないと言います。

こうした親子共にケアが必要なのが小児医療なのですが、

南杏子さんの小説『いのちの停車場』では終末医療の大変さが描かれていたように、人生のはじまりと終わりに関わる医療は大変なのだと改めて認識できました。

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国としては、どちらの医療費も削減する方向で進めていますが…。

感想③:歌には秘められた力がある!?

さて、この物語では「歌には秘められた力がある」をテーマに描かれています。

水落冴子の『ラプソディ』という曲には、悪意や恐怖を増幅させる作用があり、

浜田小夜の歌にもある秘密がありました。

砥上裕將さんの小説『線は、僕を描く』の感想で、芸術の奥深さに衝撃を受けたと書きましたが、

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この物語では、歌には人の感情や五感をコントロールできる力があることを知り、驚きました。

歌の力を医療的な視点で眺める…という面白い切り口で描かれているので、一気読みすること間違いなしです。

まとめ

今回は、海堂尊さんの小説『ナイチンゲールの沈黙』のあらすじと感想を紹介してきました。

小児医療の大変さがわかる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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