匂いがどの程度の影響力を持っているかご存知ですか?
私は匂いにはそれほど影響力はないと思っていましたが、千早茜さんの小説『透明な夜の香り』を読んで、永遠に脳に記憶されることを知り、驚きました。
そのため、匂いによって過去の記憶を蘇らせたり、特定の行動を促すことができるなど、その可能性に興味が湧きました。
『透明な夜の香り』のおすすめポイントとあらすじ
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『透明な夜の香り』の感想
匂いがどの程度の影響力を持っているかご存じですか?
私はそれほど匂いには影響力はないと思っていましたが、『透明な夜の香り』を読んで、その影響力に驚きました。
匂いは脳の海馬に直接届いて永遠に記憶されるそうです。
だからこそ、『透明な夜の香り』に出てくる調香師・小川朔のもとには、亡くなった夫の匂いを再現してほしいとか、病気になった息子のために生きる力を呼び覚ます匂いを作ってほしいといった依頼が次々と舞い込みます。
それだけでなく、朔は匂いを嗅ぎ分けることができたので、行方不明になった娘を探して欲しいといった依頼までこなしていました。
とはいえ、朔は嘘をついている匂いまで嗅ぎ分けることができたので、幼い頃は嘘を指摘したせいで周りから嫌われ、不登校に追い込まれていました。
だからこそ、人間不信になり、人に興味を示さなくなって、不幸になることがわかっていても、望まれた匂いを調香していたのですが、新たに家政婦として雇った一香に少しずつ興味を抱くようになり、変わっていきます。
一香も朔と同じような暗い過去をもち、しかも嘘をつかずに、朔の言うことを受け入れてくれたからです。
匂いを通して人間不信に陥った朔が、同じ匂いを通して人に興味を持ち、愛着と執着の違いはなんだ?と真剣に考え込むようになるまで、彼女に引かれていく展開に、同じ能力でも、使う相手によって結果は大きく変わるのだと心を動かされました。
このように、匂いの影響力に驚かされるだけでなく、匂いを通して繰り広げられるドラマティックな物語に興味がある方におすすめの小説です。
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