夏目漱石『こころ』感想/「夏目漱石ってなんだか難しそう…」と敬遠している人に読んでほしい物語

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夏目漱石さんの小説を読んでいますか?

私は学生の頃に国語が苦手だったので、敬遠してきましたが、

この前、「古典を読もう」という記事を書いたので、思い切って『こころ』を読み始めたところ、もっと早くに読んでおけばよかったと後悔しました。

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ミステリー要素と恋愛要素に惹きつけられて、一気読みしてしまったんですよね。

おすすめ度:4.0

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こんな人におすすめ

  • ミステリー要素と恋愛要素が楽しめる物語が好きな人
  • 気になる謎が次々と提示される物語が好きな人
  • 読み終わった後にあれこれ考えたい人
  • 夏目漱石さんの小説が好きな人

作品の簡単な紹介

今回は、夏目漱石さんの小説『こころ』を紹介します。

まず、何よりもお伝えしたいのは、「夏目漱石の小説ってなんだか難しそう…」と思っている人に、ぜひ読んでほしいということです。

学校の授業で習って、苦い記憶がこびりついている方もおられると思いますが、

堅苦しい物語ではなく、ミステリー要素も恋愛要素も楽しめるので、読み始めれば一気に惹き込まれます。

とはいえ、ラストは「なんで!?」という終わり方をするので、自分なりに考察しないとつまらなく感じるかもしれません。

しかし、心に響くシーンやセリフも多いので、あまり意気込まなくても、いろいろ考えたくなる物語です。

あらすじ:ある男性と仲良くなろうと奮闘する主人公の物語

物語の主人公は、学生である私。

私は夏休みに鎌倉で海水浴をしていたときに、眼鏡をかけたある人物のことが気になり、仲良くなりたいと思うようになりました。

そこで、私は何度も海水浴場に出かけ、その年上の男性と話すきっかけを掴み、「先生」と呼んで会話をするようになりましたが、

先生は、友人が少なく孤独で寂しい思いをしていたにも関わらず、私が東京の自宅に何度押し掛けても、私に対して一定の距離をとっているように思えました。

それだけでなく、美人の奥さんに対しても距離を取っているように思えます。

しかし、その理由を先生に尋ねても、「自分が信用できないから他人も信用できない」「恋は罪悪だ」「天罰で子供ができない」などと、表面的な答えしか与えてくれませんでした。

それでも尋ね続けたところ、先生は真面目に聞くならと言って…。

という物語が楽しめる小説です。

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感想①:ミステリー要素と恋愛要素が楽しめる

先ほどあらすじでも紹介したように、先生は他人に対して距離をとっているように思えました。

その理由を尋ねても、「自分が信用できないから他人も信用できない」「恋は罪悪だ」「天罰で子供ができない」などと表面的な答えしか与えてくれませんでした。

また、先生は大学を卒業しており、学問を極め、独自の思想をもっていましたが、

「私のようなものが世の中へ出て、口をきいてはすまない」と言って、世間と関わりを持とうとしませんでした。

先生が外出するのは、雑司ヶ谷にある友人の墓参りくらいです。

しかも、その墓参りも誰も一緒に連れて行こうとはしませんでした。

このように、なぜ先生は他人と距離を取るようになったのかが気になってページをめくる手が止まらなくなったのですが、

さらに恋愛要素が絡んでくるので、一気読みしてしまったんですよね。

知念実希人さんの小説『崩れる脳を抱きしめて』でも、ミステリー要素と恋愛要素が楽しめる物語が描かれていましたが、

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この小説では、心に痛みを与えるミステリー要素と恋愛要素のある物語が楽しめました。

感想②:真面目すぎると生きづらくなる

では、なぜ先生は、他人と距離をとっていたのでしょうか。

出来るだけネタバレにならないように書いていくと、過去に先生は心から信じていた相手に裏切られた経験がありました。

このとき、先生は「人は金を前にすると悪人に変わる」のだと気づき、相手のことを憎んでいましたが、

先生自身もあることがきっかけとなって、友人を裏切ってしまいます。

それから、先生は憎んでいた相手と同じような振る舞いをした自分が許せなくなり、他人だけでなく自分も信じられなくなりました。

先生自身が「自分は完璧でなければいけない」という信念をもっていたからでしょう。

また、他人を裏切っても、相手のせいにできるほど心が穢れておらず、頭も悪くなかったので客観的に自分を眺めることができ、苦しんだのだと思います。

とはいえ、過去に縛られていては現実は何も変わりません。

むしろ、まわりの人たちまで傷つけてしまいます。

そこで先生は、他人を遠ざけ、自分で自分を痛め続けることで償い続けようとしたのです。そんな不器用な人でした。

坂木司さんの小説『ワーキング・ホリデー』では、不器用だけれど子供とコミュニケーションを取ろうと奮闘する主人公の物語が楽しめましたが、

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この小説では、不器用だからこそ、自分を追い詰めていく先生の姿に胸が苦しくなりました。

感想③:時代が変われば大切なものも変わる

さて、この小説のタイトルにもなっている『こころ』には、どのような意味が込められているのでしょうか。

私には、いくつか意味があるように思えたので、その中から二つ紹介したいと思います。

まずひとつ目は、先ほども紹介したように、先生は裏切られた相手を憎みながらも、その相手と同じような振る舞いをしてしまいました。

つまり、誰の『こころ』にも良い面と悪い面の両方があり、何らかの縁でどちらの心も現れるという意味が込められているように思えます。

もうひとつは、私は先生と親子ほど年齢が離れていましたが、分かり合えない壁みたいなものがありました。

私と父の関係でも、その壁が描かれています。

たとえば、明治天皇が崩御したとき、父は「おれも…」と言い、乃木大将が明治天皇に続いて殉死したときには、

「乃木大将にすまない。実に面目次第がない。いえ私もすぐあとから」

と言いました。

一方の先生も、明治天皇が崩御したとき、その後に生き残っているのは時代遅れのような感じがすると言っています。

しかし、私は明治天皇の崩御にも、乃木大将の殉職にも、特に何も感じていないようでした。

つまり、親子ほど年齢が離れると、時代が変わると、大切に思うものが大きく変わる、『こころ』が大きく変わるという意味が込められているように思うんですよね。

東野圭吾さんの小説『素敵な日本人』でも、タイトルに込められた意味を考える楽しさが味わえましたが、この小説でも、タイトルに込められた意味をあれこれ考える楽しさが味わえました。

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まとめ

今回は、夏目漱石さんの小説『こころ』のあらすじと感想を紹介してきました。

「夏目漱石の小説ってなんだか難しそう…」と敬遠している人に読んでほしい物語です。気になった方は、ぜひ。

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