過去にとらわれていませんか?
私は何度か過去にとらわれてしまったことがありますが、
滝口悠生さんの小説『茄子の輝き』を読んで、つらい過去も乗り越えていけることがわかりました。
どれだけつらい過去があっても、いつかは希望がもてる出来事に巡り会えるんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- つらい出来事があってもいつか乗り越えていけると思える物語を読んでみたい人
- 妻を大切にしようと思える物語に興味がある人
- 日常を描いた物語が好きな人
- 滝口悠生さんの小説が好きな人
あらすじ:妻と離婚した主人公が過去に想いを馳せる物語
物語の主人公は、カルタ企画という業務用機器の説明書をデザイン、制作する会社に勤めていた市瀬。
彼は数年前に妻の伊知子から離婚を言い渡されましたが、その理由がまったく思い当たりませんでした。
伊知子に未練があったので、生きる気力を失い、彼女と一緒に島根に出かけた貧乏旅行の思い出に毎晩浸っていました。
ところが、一年遅れてカルタ企画に入ってきた7歳年下の千枝ちゃんと出会い、生きる力を取り戻していきます。
彼女に恋をしたからです。
とはいえ、千枝ちゃんはバンド活動をしている恋人と同棲中でした。
それでも、市瀬は付き合いたいわけではないからと、千枝ちゃんに想いを馳せますが…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:今が満たされないと過去に救いを求めてしまう
あらすじでも紹介しましたが、市瀬は元妻である伊知子との思い出に毎晩浸っていました。
それは離婚した現実を受け止めきれずにいたからです。
そこで伊知子の写真を旅ごとに編集したり、日記を読み直したりして、思い出に浸っていたんですよね。
千枝ちゃんという好意を寄せる相手が見つかっても、その行為は止まりませんでした。
千枝ちゃんにどれだけ好意を寄せても、その思いが成就することはなかったからです。
小川糸さんの小説『キラキラ共和国』では、今が充実すれば、嫌いだった過去も意味あるものへと変わっていく物語が描かれていましたが、

この小説では、今が満たされないと、どれだけ過去に救いを求めても、何も解決しないことがわかりました。
感想②:妻を大切にしようと思える
とはいえ、市瀬は、伊知子との思い出が写真や日記の中のものだけになっていったので困惑していました。
千枝ちゃんの表情や言動は明確に思い出せるのに、あれだけ近くで過ごした伊知子との日々が思い出せなくなっていたのです。
その一方で、千枝ちゃんの言動は明確に思い出せても、そのときの自分の感情はよみがえりませんでしたが、
伊知子との思い出はどんどん失っていくのに、そのときの自分の感情は明確によみがえってきました。
顔や声は空白なのに、元妻と向き合っていた自分の感情は手にとるように思い出せたんですよね。
原田マハさんの小説『星守る犬』の感想で、夫婦円満の秘訣は同じ方向に向かって行動することだと書きましたが、

この小説では、離婚した後の悲しみやつらさが描かれていたので、今まで以上に妻を大切にしたくなりました。
感想③:つらい過去もいつかは乗り越えていける
さて、この物語では、つらい過去があっても、いつかは乗り越えていけるをテーマに描かれているように思います。
ここまで紹介してきたように、市瀬は妻と離婚し、好きな人が出来ても恋人がいるため、現実を変えられず、元妻との思い出に浸っていましたが、
居酒屋で出会った女性と再会したことで、一歩踏み出していきます。
震災や離婚などでつらい状況に陥っても、いつか立ち直ることができる、希望を持つことができると励ましてくれる物語なんですよね。
伊坂幸太郎『フィッシュストーリー』はムダに思える努力もいつか誰かの役に立つかもしれないと希望が持てる物語が描かれていましたが、

この小説では市瀬の再生物語が描かれていたので、前を向いて歩んでいこうというポジティブな気持ちになれました。
まとめ
今回は、滝口悠生さんの小説『茄子の輝き』のあらすじと感想を紹介してきました。
つらい過去があってもいつかは乗り越えていけると思える物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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