血のつながりを大切にしていますか?
私は大切にしてきたつもりですが、谷瑞恵さんの小説『めぐり逢いサンドイッチ』を読んで、血のつながり以上に大切なものがあることに気づきました。
相手のことを思いやる気持ちがお互いにあれば、血のつながり以上の絆が生まれることがわかる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 血のつながりよりも大切なものがあることに気づける物語に興味がある人
- 優しい気持ちになれる物語が好きな人
- サンドイッチをテーマにした物語に興味がある人
- 谷瑞恵さんの小説が好きな人
あらすじ:人気のタマゴサンドがゴミ箱に捨てられた物語
物語の主人公は、姉が経営するサンドイッチ専門店「ピクニック・バスケット」で働く清水蕗子。
彼女は、お店で人気のタマゴサンドが、一口も食べられずに公園のゴミ箱に捨てられていたという話を聞いて驚きました。
捨てたのはOL風の若い女性でしたが、店に文句も言わずに捨てたので、異物が混入していたとは考えられず、嫌いなタマゴサンドをわざわざ買って捨てたとしか思えませんでした。
しかし、一緒にこの話を聞いていた姉の笹子は、東京のタマゴサンドはゆで卵をマヨネーズで和えたものだけれど、
お店で出しているのは関西でも主流じゃなくなった卵焼きのサンドイッチだからかも…と言って、ゆで卵のサンドイッチを作ることにします。
そこで蕗子は、捨てたと思われる女性に目星をつけ、タマゴサンドが苦手なことを聞き出し、ゆで卵のサンドイッチを勧めます。
こうして、その女性にタマゴサンドの美味しさをわかってもらえたと喜んでいた蕗子でしたが、
実はその女性は、タマゴサンドを捨てた女性とは別人でした。
タマゴサンドが嫌いな女性が、二人もこのお店に通っていたのは偶然なのか?という物語が楽しめる小説です。
感想①:サンドイッチが食べたくなる短編集
この小説は、あらすじで紹介した物語も含めて、全部で5つの短編から構成されています。
どの短編にも美味しそうなサンドイッチが登場するので、実際に食べてみたくなるんですよね。
ここで、残り4つの短編について簡単に紹介していくと、
- 幼い頃に母を交通事故で亡くした女子高生が、思い出のキャベツ炒めを再現しようと奮闘する物語
- 一斤王子と呼ばれるイケメンパン屋・川端さんの大叔母さんが、亡くなった夫との約束を空想の世界で実現しようとする物語
- 常連の小野寺さんの父親が、なぜかコロッケを「はんぶんこ」しようと言って衣だけ渡してきた謎に迫る物語
- 親戚の通夜で両親が出かけたときに、黄色いカレーを作った笹子でしたが、なぜか二度とそのカレーを作らなくなった理由を解き明かそうとする物語
です。
坂木司さんの小説『和菓子のアン』では、今すぐ和菓子が食べてみたくなる物語でしたが、

この物語では、ハムキャベツ炒めサンドやローストチキンサンド、コロッケサンドなど、美味しそうなサンドイッチが多数登場するので実際に食べてみたくなりました。
感想②:夢をみて生きていこうと思える
先ほど紹介した「一斤王子と呼ばれるイケメンパン屋・川端さんの大叔母さんが、亡くなった夫との約束を空想の世界で実現しようとする物語」では、今すぐ夢を描きたくなる物語が語られます。
「ピクニック・バスケット」で飼っていたネコのコゲは、もともとは大叔母さんである徹子に飼われていましたが、
身体が悪くなって病院に入院するときに、笹子にお店の場所とネコを譲り、夫と約束していたけれど実現できなかったクイーンズエリザベス号に乗ると言って出ていったのです。
川端さんは、徹子に世話になっていたので、何度もお見舞いにいきましたが、「次に港に着くまで来なくていいよ」などと言われて困惑していました。
徹子がこのような妄想を膨らませるようになったのは、夫がイタリアンのシェフで腕は良かったものの、友達に騙されて失敗し、病気で亡くなっていたことが関係していました。
夫と実現できなかった夢を空想の世界で実現するために、入院をクイーンズ号に乗ることに置き換えて、現実逃避していたんですよね。
ところが、この話を聞いた常連の小野寺さんは、
「失敗したり後悔したり、人生波乱万丈でも、クイーンエリザベス号に乗って旅ができるなんて、うらやましいなあ。徹子さんは無敵や」
と言います。
『死ぬときに後悔すること25』の感想にも書きましたが、
死ぬ直前に後悔するのは、夢がかなわなかったこと、かなえられなかったことではなく、夢をかなえるために全力を尽くさなかったことだそうです。

大叔母さんのように、どのような状況になっても、夢を抱けば、楽しく生きることができると教えてくれる物語です。
感想③:血の繋がりよりも大切なものがある
さて、ここまで笹子と蕗子は姉妹だと紹介してきましたが、実は血の繋がりはありませんでした。
蕗子の母は幼い頃に亡くなっており、父が再婚した相手が笹子の母だったのです。
蕗子がこの事実を知ったのは、笹子が高校を卒業して専門学校に通うために家を出た後でした。
このとき、蕗子は笹子とおそろいの服を着たことがなかったことに気づきます。
唯一おそろいだったのは、黄色いリボンだけ。なぜなら…。
この続きは実際に読んで涙して欲しいと思いますが、
瀬尾まいこさんの小説『そして、バトンは渡された』と同じように、血のつながりよりもお互いを思う気持ちが大切だと教えてくれる物語でした。

まとめ
今回は、谷瑞恵さんの小説『めぐり逢いサンドイッチ』のあらすじと感想を紹介してきました。
続編の『語らいサンドイッチ』と同じように優しい気持ちになれる物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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