何も行動を起こさないのに、調子の良いことばかり言っていませんか?
私は口にしたことは出来るだけ行動するようにしていますが、
知り合いのなかにも調子の良いことばかり言っている人たちがいます。
それだけでなく、自分を正当化するために、他人を陥れる人までいるんですよね。
東野圭吾さんの小説『悪意』は、そんな人たちの言動に惑わされないようにしようと思える物語です。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 加賀恭一郎シリーズが好きな人
- 悪意の恐ろしさがわかる物語を読んでみたい人
- どんでん返しがある物語が好きな人
- 東野圭吾さんの小説が好きな人
あらすじ:殺人を犯した売れない作家の物語
物語は、中学校の教師を経て、児童向けの作家をしている野々口修の手記で始まります。
彼の手記によると…。
野々口の友人である日高邦彦は人気作家でしたが、『禁猟地』という小説を描いたことで、藤尾美代子という女性から抗議されていました。
美代子の兄である藤尾正哉がその小説の主人公のモデルになっており、
彼が中学生の頃に犯したいじめの数々が克明に描かれていたからです。
日高はそんな彼女のことを面倒に思っていましたが、それだけでなく、近所に住む猫好きのおばさんにも嫌気がさしていました。
彼の家によくおばさんの猫がやって来て、糞をしていたからです。
もうすぐカナダで暮らす予定の日高は、誰かに家を貸そうとしていましたが、猫除けがあるせいで借り手がつきませんでした。
そこで日高は毒団子を作って庭に置いておき、その猫を殺そうとします。
…と、野々口の手記に描かれていた日高が、何者かに殺されました。
犯人はその日彼の家にやって来た藤尾美代子か、
この手記を書いた売れない作家である野々口に絞られましたが、どちらにもアリバイがありました。
このアリバイを崩したのが加賀恭一郎です。それだけでなく、加賀は…。
という物語が楽しめる小説です。
感想①:手記から犯人を推理するミステリー
あらすじでも紹介しましたが、『悪意』は殺された日高の親友である野々口の手記から犯人を推理するミステリーです。
これは、湊かなえさんがよく使われている手法で、
たとえば『母性』では、母の手記と娘の回想によって娘が自殺をするまでの物語が描かれていますが、
これが読者をミスリードさせる大きな仕掛けになっています。

一方の『悪意』では、野々口が犯人であることは早い段階で明らかになりますが、
真犯人は別にいた…というわけではなく、彼がなぜ日高を殺したのか?という動機を解き明かしていく構成をとっています。
どちらにしても、手記には書き手の思いが色濃く反映されているので、
そこから真実をたどり寄せる面白さが味わえます。
感想②:悪意があれば「白」を「黒」と言い切ることができる
先ほども紹介したように、野々口の手記には彼の悪意が込められていましたが、
その悪意は「白」を「黒」だと言い切るほどのものでした。
突然ですが、9.11のアメリカ同時多発テロは、アラブ人のグループが実行したという報道がされてきましたが、本当だと思いますか?
この質問に多くの日本人は、その通りだと答えると思いますが、
イスラム諸国で暮らす人たちは、20%以下の人しか「本当だと思う」と答えませんでした。
彼らは、アメリカ政府やイスラム教徒以外のテロリストが実行したと思い込んでいたのです。

このように、私たちはある一定の情報を与え続けられると、それが真実だと錯覚してしまいますが、
言い換えると、情報を発信する側に悪意があれば簡単に洗脳されてしまうということです。
この物語は、そんな悪意ある情報の恐ろしさが実体験できる構成になっています。
感想③:自分の意見を検証し続けることが大切だとわかる
さて、ここまで紹介してきた悪意のある手記に、加賀恭一郎が立ち向かうわけですが、
彼は野々口の動機を解き明かした後も、自分の推理に見落としがないか考え続けました。
こうした彼の粘り強さが事件の真相を明らかにしていくんですよね。
『勉強の哲学』でも紹介しましたが、私たちはある言語環境で洗脳されているため、
勉強して「特定の環境との癒着」から脱していく必要があります。

言葉の世界では、「リンゴはクジラ」と言った現実とは異なる世界がいくらでも描けるため、
他人の意見だけでなく、自分の意見が正しいかどうかを検証し続ける必要があるんですよね。
この物語でも、加賀恭一郎の姿を通して、自分の意見が本当に正しいのか?と考え続けることが、
真相にたどりつくためには必要なプロセスだと教えてくれます。
まとめ
今回は、東野圭吾さんの小説『悪意』のあらすじと感想を紹介してきました。
加賀恭一郎が、犯人の悪意に騙されずに真相を見抜く面白さが味わえるミステリーなので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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