余命宣告を受ける前に自分を甘やかせよう/小川糸『ライオンのおやつ』感想

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人生最後のおやつは何が食べたいですか?

私は「ドーナツかな?」なんて気楽に考えていましたが、小川糸さんの小説『ライオンのおやつ』を読んで、いざとなったら食べられないことがわかり、胸が苦しくなりました。

少し考えればわかることですが、死が近づいてくると、自分を甘やかせることさえ難しくなるんですよね。

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もっと自分らしく振る舞おうと思える

数ヶ月後に人生が終わると告げられたら、どうしますか?

私なら、とりあえず仕事をやめて、自然豊かなところでのんびり暮らしたいと思いますが、この物語の主人公である33歳の海野雫もそうでした。

余命宣告を受けた彼女は、毎日海が眺められる場所で過ごしたいといって、瀬戸内海に面した「ライオンの家」という隠れ家ホテルのようなホスピスで過ごすことに決めます。

そして、これまで周りの人たちを優先して生きてきた自分を解き放ち、自分らしく生きていく決意をしますが…。

そんな彼女の姿に胸が締め付けられました。

自分を犠牲にして日々を過ごしてきた結果、末期癌になり、いざ自分らしく振る舞おうと思っても、日に日に出来ることが減っていったからです。

私も必要以上に他人に気を使う性格なので、よくわかりますが、どこかで「本当はこんなことはやりたくない」と思いながら日々を過ごしてきたはずです。

それは、「他人には優しく接するべきだ」とか、「他人に嫌われたくない」という思いが無意識に働いているからですが、

そうやって他人を優先して末期癌になった彼女の姿を見ていると、余命宣告を受けてから自分を解き放っているようでは遅いことに気づき、今すぐ自分らしく振る舞いたくなりました。

もちろん、仕事などで自分を押し殺すしかない場面もありますが、それ以外では、もっと自分らしく振舞おうと思える物語です。

どんな境遇になっても楽しく生きられると励まされる

とはいえ、ライオンの家で過ごすようになった雫は、出来ることが日に日に減っていっても、毎日を楽しく過ごしていきました。

ライオンの家にいた犬のロッカと一緒に過ごしたり、隣の部屋の住人であるアワトリスと名乗るオッサンの下品な言動に顔をしかめたり、葡萄畑で働くタヒチ君とデートをしたりと、毎日を精一杯楽しみます。

もちろん、不安になって叫び出したくなることもありましたが、

朝のお粥とか、お昼のバイキングとか、夜の一汁三菜とか、日曜のおやつとか、そういった人参がぶら下がっていたので、それ欲しさに前を向いて日々を過ごしていくんですよね。

さらに、雫はタヒチ君に、

「私が死んだらさ、ここに来て、空に向かって手を振ってもらいたいの。」

といって、死んだ後のお楽しみをつくり、死さえも前向きに捉えようとします。

今の私が死を突きつけられたら、パニックになって夜も眠れない日々を過ごすことになりそうですが、どんな境遇になっても前を向いて楽しみながら生きようとする雫に勇気がもらえる物語です。

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ラストは感動で涙が溢れ落ちそうになる

この物語を読み終えたとき、私は感動で涙がこぼれ落ちそうになりました。

雫とその周りの人たちの温かさと優しさに触れて、心が揺さぶられたからです。

それだけでなく、今目の前にある日常を大切にしたくなりました。

癌になって気づけたことは、健康であること、お金があること、友人たちが周りにいてサポートしてくれることのありがたみだった。あって当たり前だと思っていたものが、いかに貴重な存在かがわかった。

という雫の言葉が胸に突き刺さったからかもしれません。

また、

「おやつは体には必要のないものかもしれませんが、おやつがあることで、人生が豊かになるのは事実です。おやつは、心の栄養、人生へのご褒美だと思っています。」

というライオンの家の管理人であるマドンナの言葉も心に残りました。

私は、幼い頃に貧乏だったこともあり、お金にならないことや誰の役にも立たないこと(読書やブログ、ゲームなど)をしていると、後ろめたい気持ちになっていましたが、そういった行為も人生のご褒美だと思って、もう少し自分を甘やかせてみようと思えました。

また、人生はいつか終わりを迎えるので、仕事でも趣味でも子育てでも、今を精一杯楽しもうと思える物語でもありました。

まとめ

今回は、小川糸さんの小説『ライオンのおやつ』を紹介してきました。

  • もっと自分らしく振る舞おうと思える
  • どんな境遇になっても楽しく生きられると励まされる
  • ラストは感動で涙が溢れ落ちそうになる

以上、3つの魅力がある物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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