詐欺は身近に溢れている!/辻村深月『嘘つきジェンガ』感想

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詐欺なんて自分には関係のないことだと思っていませんか?

私はそう思っていましたが、『嘘つきジェンガ』を読んで、詐欺は身近なところにも溢れていることに気づきました。

欲望をくすぐるような甘い言葉には、相当注意しないと、気づいたときには手遅れになっているかもしれません。

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『嘘つきジェンガ』のおすすめポイントとあらすじ

おすすめ度:4.0

  • 詐欺をテーマにした物語に引き込まれ、ハラハラ&ドキドキが止まらない
  • 詐欺をする&詐欺にひっかかる人たちの心理が理解できる
  • ラストは想像を上回る展開に驚かされる
あらすじ
加賀耀太ようたは、大学進学を機に東京に出てきましたが、コロナのせいで4月になっても大学は始まりませんでした。しかも、山形で定食屋を営む両親も営業を休むことになったので、仕送りを半分に減らされ、またバイトを探しても採用されずに困っていました。そんなとき、幼馴染の奥田甲斐斗かいとからオンラインでできるアルバイトを紹介されます。送られてきたリストにメールを送るだけで大金がもらえるとあって、耀太は早速はじめますが、詐欺だとわかったので…。

『嘘つきジェンガ』の感想

誰もが何らかの弱みを抱えて生きています。

『嘘つきジェンガ』では、コロナがきっかけでお金に困った大学生や、息子を何としてでも中学受験に合格させたい専業主婦、人気漫画家のフリをして挫折した夢を取り戻そうとするニートたちが、詐欺に加担したり、騙されたりします。

彼らは何とかして自分の弱みを克服したいと考えていましたが、現実は簡単には変わりませんでした。

だからこそ、心のどこかで詐欺だとわかっていても、欲望をくすぶるような甘い誘惑にのめり込み、深みにハマっていきます。

たとえば、金持ちの男性や美しい女性のフリをしてメールを送るだけで大金が振り込まれるアルバイトなんて、簡単に詐欺だと見抜けます。

100万円を振り込めば、中学受験に合格できる可能性が高くなるという話も、裏口入学の斡旋としか思えません。

人気漫画家を騙って、オンラインサロンをやるなんて、詐欺以外の何物でもありません。

それでも、お金を稼ぐ方法が他にない、このままでは中学受験に合格できない、一生ニートとして生きていくしかない…といった現状への焦りから、それらの行為を詐欺ではないと思い込もうとします。

もちろん、遠くから眺めていれば、詐欺に決まっている!と思うのですが、少しずつ深みにハマっていき、引き返せなくなる彼らの姿を見て、明日は我が身だと恐ろしくなりました。

実際、私たちのまわりには、情報商材・副業詐欺やワンクリック詐欺、オークション詐欺など、さまざまな詐欺が溢れています。

これさえ買えば受験に合格できる、ブログで儲けられる、彼氏・彼女ができる、生活が楽になる…なんて、怪しげな誘惑に惑わされがちな方は、『嘘つきジェンガ』を読んで、冷静な目で自分を眺めてみるのもいいかもしれません。

私は疑い深い性格なので、詐欺には騙されないと思っていますが、これまで以上に甘い誘惑には惑わされないようにしていこうと思いました。

幸せが欲しくて嘘に縋りついてしまう3人の主人公が、詐欺に巻き込まれ、驚きの結末へとたどり着く物語に興味がある方におすすめの小説です。

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