何か問題が起きたとき、反省していますか?
私は真面目な性格なので反省しすぎるところがありますが、
東野圭吾さんの小説『麒麟の翼』を読んで、反省しないと同じ過ちを繰り返すことに気づきました。
それだけでなく、いつか取り返しのつかない過ちを犯すことがわかる物語なんですよね。
おすすめ度:
こんな人におすすめ
- 加賀恭一郎シリーズが好きな人
- 人は反省しないと同じ過ちを繰り返すことがわかる物語に興味がある人
- 加賀恭一郎が心底怒る物語を読んでみたい人
- 東野圭吾さんの小説が好きな人
あらすじ:被害者が麒麟の翼像まで歩いた謎に迫る物語
物語は、カネセキ金属の製造本部長である青柳武明が、刺殺されるところから始まります。
ところが、武明は、なぜかナイフで刺されてから、麒麟の翼像がある日本橋までかなりの距離を歩いてから亡くなりました。
近くに交番があったにも関わらず、武明は脇目もふらずに麒麟の翼像を目指したことから、
警察では何かメッセージがあるのではと考えましたが、何かはわかりませんでした。
そんなとき、武明の財布を所持していた不審者が見つかります。
しかし、彼は警察官に声をかけられ、逃げようとして交通事故に遭い、生死をさまよっていました。
その不審者は八島冬樹と言い、派遣切りにあっていたことがわかります。
さらに、派遣切りにあった工場は、武明が勤めていたカネセキ金属だったのです。
八島は工場で怪我をしており、労災認定される前に派遣切りにあっていました。
そのため、警察は八島が再雇用を武明に頼んだけれど、断られたので刺殺したのではと考えましたが、
加賀恭一郎は、この事件の裏には別の何かがあると考えていました。
その何かとは…。という物語が楽しめるミステリーです。
感想①:派遣切りが重要なキーワードになっている物語
先ほどあらすじでも紹介したように、武明を刺殺したと思われる八島は、
労災隠しにあっていただけでなく、その事実を隠したいために派遣切りにまであっていました。
仕事の事故で首を痛めたのに、さらに生きるために必要な収入源まで奪われたんですよね。
だからこそ、警察は八島が犯人だと確信して捜査を進めていたわけですが、
たとえば、垣谷美雨さんの小説『農ガール、農ライフ』でも、
主人公の水沢久美子が派遣切りにあった日に、同棲相手から別れを告げられるところから物語が始まります。

だからこそ、久美子は生き延びるために農家を目指すわけですが、
どちらの物語でも、派遣というのは、働く側にとっては不安定で、一方の雇用主側にとっては圧倒的に有利な仕組みである事実が描かれています。
東野圭吾さんがこの物語で派遣切りを取り上げたのも、
そういった事実を明らかにして、この問題について考える人が一人でも増えれば…という思いが込められているのかもしれませんね。
感想②:関係なさそうな謎が事件の真相につながるミステリー
今回も加賀恭一郎は、親戚である松宮と組んで事件の謎に迫ります。
前作『新参者』と同様に、日本橋署の刑事として、事件そのものではなく、周辺の小さな謎から本質に迫ろうとするんですよね。

武明が眼鏡ケースを買った店を探したり、彼が食べ歩きをしていた蕎麦屋を訪れたり、神社を訪れたりします。
その結果、武明が七福神巡りをしていたことがわかります。
なかでも、水天宮に百羽鶴を折って何度も訪れていたことがわかりました。
これが事件を解く鍵になるのですが、ここから驚きの事実が明かされていきます。
最後までページをめくる手が止まらなくなるミステリーです。
感想③:反省しないと同じ過ちを繰り返す
さて、この物語では、「人は反省をしないと同じ過ちを繰り返す」をテーマに描かれています。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、犯人は過去に犯した過ちを誤魔化せたので、
もう一度同じ過ちを繰り返したんですよね。
たとえば、『赤い指』では、子供を甘やかせ続けたせいで、些細な理由で殺人に至る息子の姿が描かれていますが、
親が子供と向き合って来なかった結果として殺人に手を染めたことがわかります。

この物語でも同じように、責任ある大人が誤魔化したせいで、犯人が殺人に手を染めたのです。
この事実を明らかにした加賀は、
「それはあんたが間違ったことを教えたからだ。過ちを犯しても、ごまかせば何とかなる。だから同じ過ちを繰り返した。あんたに人を教育する資格なんてない」
と言うんですよね。ちなみに、ネタバレになるので、セリフは抜粋しています。
このように、自分が犯した過ちは自分で責任を取る…この当たり前のことが出来るかどうかで、未来は大きく変わるのだと教えてくれる物語でした。
まとめ
今回は、東野圭吾さんの小説『麒麟の翼』のあらすじと感想を紹介してきました。
すでに映画化もされている人気の物語ですが、読めば心に響くミステリーです。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
あわせて読みたい

コメント