伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』感想/未来を切り拓くのは他の誰でもない自分だ!

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占いやジンクス、夢などで未来が決まると思っていませんか?

私はジンクスにこだわってしまうことがありますが、伊坂幸太郎さんの小説『クジラアタマの王様』を読んで、未来を切り拓くのは他の誰でもない自分だと気づきました。

夢の世界と現実世界がリンクする物語に惹きつけられ、怒りが湧いてきたり、クスッと笑えたりする展開にページをめくる手が止まらなくなる小説です。

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あらすじと内容紹介

「未来を切り拓くのは誰だ?」

お菓子メーカーでお客様サポートをしていた岸くんが、新商品のマシュマロに画鋲が入っていたという苦情を担当することになったところから物語が始まります。

この苦情をきっかけに、岸くんは、都議会議員の池内征爾と、人気ダンスグループに所属する小沢ヒジリと知り合いました。

池内議員が、夢の中で三人で協力して巨大な生物を倒したことがあると言い出したからです。

しかも、夢の世界で巨大な生物を倒せば、現実で起こる問題も解決していくと言うんですよね。

そんな話を聞かされた岸くんは、さまざまな難問にぶつかりながら、「未来を切り拓くのは誰なのか?」と考えていきます。

ラストは岸くんが出した結論に胸が熱くなる小説です。

『クジラアタマの王様』の感想(ネタバレあり)

ここからは多少のネタバレありで感想を書いていきます。

物語の核心を突くようなネタバレは避けていますが、それでも気になる方は、本書を読み終わった後に再び訪れてください。

正直者や有能な人ほど報われない現実に怒りが湧く

正直者や有能な人ほど、他人の尻拭いをさせられて、苦労していると思いませんか?

この物語の主人公である岸くんも、他人の尻拭いをさせられて苦労していたので、読んでいて怒りが湧きました。

彼は念願が叶って、お客様サポートから新商品の開発チームに異動になりましたが、

岸くんの代わりにやってきた一年先輩の鮫岡が問題を起こして逃げ出したので、再びお客様サポートに戻ることになりました。

鮫岡は、「クレーム処理なんて謝っておけばいいんだろう?」とバカにしていましたが、

新商品のマシュマロに画鋲が入っていたというクレームを受けたときに、ひどい対応をしたので、SNSに拡散されて収集がつかなくなったのです。

こうして逃げ出した鮫岡の代わりに、岸くんが問題に立ち向かうことになったわけですが、

それだけでなく、「マニュアル通りにやればいいんだろう?」と言って記者会見に臨んだ広報部長が、「画鋲なんて入るわけないんですよ」と発言してしまい、大炎上するんですよね。

しかも、大炎上の原因をつくった広報部長は、頭痛がするといって早退したので、残された岸くんが今後の対応を考えることになりました。

このように、現実と同じく正直者が馬鹿を見る、有能な人ばかりが苦労する姿が描かれていたので、怒りが湧きましたが、

そんな正直者たちがほんの少しだけ報われていく展開に、ニヤッとしてしまう物語です。

「夢と現実」2つの物語のつながりが気になる

映画『マトリックス』を観たことがありますか?

仮想現実の世界を現実だと思い込んで生きていた主人公が、ある出来事をきっかけに今いる世界が仮想現実だと気づき、現実世界に戻ろうと奮闘する姿が描かれているSF映画です。

一方、『クジラアタマの王様』は、夢の世界で巨大な生物を倒せば現実が好転し、負ければ恐ろしい現実が待っているという物語が描かれています。

岸くんは、夢のことをまったく覚えていなかったので、夢の世界と現実がリンクしているなんて思ってもみませんでしたが、

マシュマロ事件をきっかけに知り合った都議会議員の池内征爾から、ハシビロコウという鳥に見え覚えがありませんか?と聞かれて思い当たるところがありました。

その後、人気ダンスグループに所属する小沢ヒジリと会い、三人とも8年前に金沢のホテルで起きた火事に遭遇していたことがわかり、

しかも、夢の中でオオトカゲを倒したので助かったと聞かされて、その記憶をぼんやりと思い出したので、本当かもしれないと思い始めます。

さらに、夢と現実がリンクする事態に何度も遭遇した岸くんは、夢の世界で巨大生物を倒せば、現実も好転していくかもしれないと信じていくんですよね。

映画『マトリックス』では、仮想現実から現実世界に目を向ける物語が楽しめましたが、

『クジラアタマの王様』では、反対に現実から夢の世界に目を向けていく展開に、惹き込まれました。

未来を切り拓くのは他の誰でもない自分だと励まされる

さて、夢の世界で巨大な生物を倒せば現実が好転すると信じた岸くんでしたが、どうにもならない現実に直面します。

まるで現在のコロナウィルスが蔓延したような事態に遭遇した岸くんは、夢の中で巨大生物を倒そうと躍起になりました。

しかし、これまでの記憶を振り返ってあることに気づきます。

それは、これまで問題に立ち向かってきたのは、他の誰でもない自分だということです。

いじめに立ち向かったのも、マシュマロ問題に立ち向かったのも、夢の世界の人間ではなく、自分だということに気づきます。

だからこそ、今目の前にある問題に勇気を出して立ち向かっていくんですよね。

そんな岸くんの姿を見て、未来は占いやジンクス、夢の世界の行動で決まるわけではなく、今の自分の行動で決まるのだと励まされました。

勇気を出して一歩踏み出してみようと思える物語です。

まとめ

今回は、伊坂幸太郎さんの小説『クジラアタマの王様』のあらすじと感想を紹介してきました。

  • 正直者や有能な人ほど報われない現実に怒りが湧く
  • 「夢と現実」2つの物語のつながりが気になる
  • 未来を切り拓くのは他の誰でもない自分だと励まされる

以上、3つの魅力がある物語なので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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