千早茜『神様の暇つぶし』感想/人の目を気にして傷つくよりも自分に正直に生きて傷つきたい

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年の差カップルの恋物語はお好きですか?

私は恋愛小説があまり好きではありませんが、千早茜さんの小説『神様の暇つぶし』は、文章の上手さに惹きつけられて最後まで楽しく読めました。

それだけでなく、年上の男性と恋に落ちて傷つきながらも成長していく主人公の姿を通して、

人の目を気にして傷つくよりも、自分に正直に生きて傷つきたいと思えたんですよね。

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おすすめ度

おすすめ度:3.5

  • 年の差カップルの生々しい恋物語が楽しめる
  • 少しずつ自己主張できるように変わっていく主人公の成長物語が楽しめる
  • 文章の上手さに惹きつけられる
  • 「年の差カップルの生々しい恋物語」という印象が強すぎる
  • 作品の簡単な紹介

    今回は、千早茜さんの小説『神様の暇つぶし』を紹介します。

    自分に自信が持てない女性が、自信満々の年上の男性と出会い、恋をして、そして別れる物語です。

    簡単に言えばこれだけの内容ですが、文章の上手さに惹きつけられたんですよね。

    恋愛小説でありながらも、ミステリーのように多くの情報が削ぎ落とされていたので、続きが気になり、

    さらに、登場人物のセリフから想いがダイレクトに伝わってきたので、惹きつけられたのだと思います。

    それだけでなく、誰かに必要とされることで、自信が持てる気がしていた主人公に共感できたからかもしれません。

    とはいえ、あくまでも恋愛が中心の物語だったので、読み終わったあとは、「年の差カップルの生々しい恋物語」という印象が強く、他の要素はそれほど記憶に残りませんでした。

    あらすじ:まわりから男性のように扱われてきた主人公の物語

    物語の主人公は、大学生の柏木藤子。

    彼女は、父が交通事故で亡くなってから、自宅に引きこもり、何もせずに、ひたすら眠り続けていました。

    そんな彼女のもとに、左腕を誰かに刺されて血を流している男性が尋ねてきます。

    その男性は、父が慕っていた全さんという人物で、近所にある廣瀬写真館の不良息子でした。

    とはいえ、全さんは、すでに50代後半か60代のジジイでしたが、藤子は父のように優しく、そして時には突き放すように荒々しく接してくる彼に気を許すようになり…。

    という物語が楽しめる小説です。

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    感想①:まわりの目を気にして自信が持てない主人公に心が痛む

    藤子は背が高く、まわりからは男性のように扱われていました。

    幼い頃は、女性のように振る舞おうとしていましたが、

    小学生の頃にスカートを履くと、同級生の男子たちから「フージコちゃん」と囃し立てられ、笑われました。

    それは女性性の塊みたいな峰不二子とかけ離れていたからでしたが、このとき女の子らしくすると笑われるという恐怖が彼女の心に根深く刻み込まれたのです。

    だからこそ、藤子は大学に入ってからも男子とうまく接することができず、まわりの女性から求められる「さばさばした男みたいな女」を演じていました。

    しかし、本当は人目をはばからず二人の世界をつくるような恋愛に憧れていたんですよね。

    カツセマサヒコさんの小説『明け方の若者たち』では、人目をはばからず二人の世界をつくるような恋物語が描かれていましたが、

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    この小説では、そんな恋愛に憧れながらも、自分はブスだから恋愛には縁がないと自信が持てずにいる主人公に心が痛みました。

    感想②:年の差カップルの恋愛に生々しさを感じる

    そんな恋愛に憧れながらも、相手がいないから…と諦めていた藤子の前に現れたのが、全さんです。

    全さんは、藤子の父よりも歳をとっていましたが、写真家としては有名な人物だったので、多くの女性からモテていました。

    左腕から血を流していたのも、女性に刺されたからだと言います。

    では、なぜ女性に刺されたのかといえば、全さんが女性を冷めた目で見ていたからでした。

    付き合っていた女性に、承認欲求、媚態、甘え、自尊心、独占欲、自己愛…といった見慣れたものしかなければ、興味を失い、突然会わなくなったからです。

    藤子は、そんな全さんに父親のように優しく声をかけられ、またどこか突き放したような荒々しい接し方に、魅力を感じていくんですよね。

    矢部太郎さんの漫画『大家さんと僕』では、年齢が離れている大家さんと矢部さんのやりとりにほっこりできる物語が楽しめましたが、

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    この小説では、年が離れた二人が恋に落ちていく生々しさが描かれていたので、最後まで目が離せなくなりました。

    感想③:自分に正直に生きて傷つきたくなる

    さて、この小説では、自分に正直に生きて傷つきたくなる物語が描かれています。

    先ほども紹介したように、藤子はまわりの目を意識して「男みたいな女」を演じて傷ついていましたが、全さんとイケメンの里見と出会って変わっていきました。

    藤子は自分から何かしたいと強く思ったことがなく、他人が作る流れに乗って生きてきました。

    しかし、父親のように優しく接してくれる全さんに振り回されることで、少しずつ自分がどうしたいのかを口にするようになります。

    また、里見の核心をつく言葉を聞いて、藤子の心は解放されていきました。

    たとえば、里見は学校に行けなくなったけれど休学するのは怖いという藤子に対して、

    「休学って、留年と一緒じゃない」「休むと決めてしまえば、行けないんじゃなくて、行かない、になる。自分で選んだって思えばぜんぜん違うよ」

    と言います。他にも、

    「別に、いい人間でいようとしなくてもいいんじゃないの」

    と言うんですよね。

    加藤シゲアキさんの小説『オルタネート』では、自分がなければ人に振り回されてしまうことがわかる物語が描かれていましたが、

    加藤シゲアキ『オルタネート』は自分がなければ振り回されてしまうことがわかる物語
    自分を持っていますか? 私は他人の影響を受けやすい性格なので、自分を持つように心がけていますが、 加藤シゲアキさんの小説『オルタネート』を読んで、世の中が便利になるほど他人に振り回されやすくなることに気づきました。 それだ...

    この小説では、全さんと里見と接することで、自己主張できるように変わっていく藤子の姿が描かれていたので、

    どうせ傷つくなら人の目を気にして傷つくよりも、自分に正直に生きて傷つきたいと思えました。

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    まとめ

    今回は、千早茜さんの小説『神様の暇つぶし』のあらすじと感想を紹介してきました。

    年上の男性と恋に落ちて傷つきながらも成長していく主人公の姿を通して、

    人の目を気にして傷つくよりも、自分に正直に生きて傷つきたいと思える物語が楽しめるので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。

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