他人の不幸を望んでいませんか?
私も他人の不幸を望んでしまうことがありますが、もしそうだとしたら、心が傷だらけの証拠。今すぐ何かで癒されるべきです。
たとえば、木皿泉さんの小説『カゲロボ』などはいかがでしょうか。
手触り感がないので他人を攻撃してしまう主人公
では、あらすじから。
人間そっくりのロボットが、虐待やイジメがないかを監視しているらしい…と噂される社会で、カゲロボと呼ばれるさまざまな形をしたロボットが学校や病院、自宅などに現れます。
小学生のチカダの前に現れたネコもカゲロボのひとり。チカダは賢という同級生のことが気に入らず、何かにつけてイチャモンをつけていました。
そしてある日。チカダはいつものように賢にイチャモンをつけて、ネコの足を切ったら許してやると言います。
それに対して、賢も後に引けなくなって…。ネコの足を切りました。
それだけでなく、賢はそのネコの足をチカダの筆箱の中に入れ、写真を撮り、SNSにアップするんですよね。
その日からチカダは変質者として扱われるようになりました。
ところが、チカダには実感がありませんでした。イジメをしていたことも、変出者として扱われていることも、そしてその後、同級生の足を切りつけたことも、すべて手触り感がなかったのです。
だからこそ、チカダは簡単に他人を傷つけることができたんですよね。そんなチカダは…。
他人の不幸をみて安心したい!?
この続きは実際に本書を読んでもらうとして、チカダだけでなく、私たちは誰もが他人の不幸をみて安心したいという心の闇を抱えています。
たとえば、いつも姉と比べられて育てられた人は、姉が不幸にならなければ自分の存在価値がないと思い込んでいます。
物語に登場するマナミもそのひとり。彼女はいつも姉と比べられて育ち、小説家として成功しそうな姉の邪魔をしようと考えていました。
しかし、出版社で働く彼女は、担当する作家からこんな言葉をかけられます。
自分を傷つけられるのは自分だけよ。
どれだけ酷い言葉を浴びせられようが、自分をしっかり持っていれば傷つかずにすむと言われるんですよね。
とはいえ、そんなふうに生きるのは難しいですよね。だからこそチカダのように誰かを不幸にすることで優越感を得ようとする人がいるわけですが…。
実は、カゲロボのようにいつも見守ってくれる存在があれば、他人の不幸を望まずにいられます。なぜなら…。
見守ってくれる人の存在が不幸から救ってくれる
「自分は存在していいんだ」と心から思えるからです。自分の存在を認めてくれる人がいれば、他人の不幸を望まなくても安心して生きていけるんですよね。
そんな優しさがたくさん詰まった小説が木皿泉さんの『カゲロボ』。他人の不幸を望むのはやめ、自分も誰かの役に立てる存在でありたいと思える物語です。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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