『名探偵コナン』はお好きですか?
私は大好きなので、漫画だけでなくアニメも観ていますが、ときどきコナン君のわざとらしさに嫌気がさすときがあります。
犯人も証拠も掴んでいるのに、「あれれぇ〜」とか言い出して、犯人を追い詰める姿に嫌悪感を抱くときがあります。
今回紹介する相沢沙呼さんの小説『invert 城塚翡翠倒叙集』は、そんなコナン君のやらしさが詰まった振る舞いをする主人公が探偵役なので、あまり好きになれませんでした。
とはいえ、前作同様に驚きのある物語が楽しめるので、一気読みしてしまうミステリーです。
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』のその後を描いたミステリー
では、早速感想を書こうと思いますが、前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』をまだ読まれていない方は、まず読んでから再び訪れてください。
ネタバレは出来るだけ避けていますが、前作の結末がある程度予測できるからです。

では、ここからは前作を読んだ方に向けて感想を書いていきます。
『medium 霊媒探偵城塚翡翠』では、ラストに衝撃のどんでん返しがありました。
あの衝撃の後にどのように物語が続くのかな?と楽しみにしていましたが、『invert 城塚翡翠倒叙集』では主人公・城塚翡翠のあざとらしさが目について仕方ありませんでした。
全三話で構成されていますが、たとえば、第一話『雲上の晴れ間』では、小学校時代からの同級生を殺した狛木繁人に対して、翡翠は好意があるかのように接していきます。
出会ったときは、リンゴをわざと落として胸元を見せたり、偶然を装ってカフェで一緒に食事をしたり、「うっかりさんです」「はわわ」などと言って、ドジなぶりっ子を演じ、狛木の心を鷲掴みにします。
その一方で、狛木に対して殺人トリックの核心をつくような発言をして追い詰めながらも、彼の言葉に誤魔化されたフリをするなど、嫌がらせのような行動をとっていきました。
もちろん、状況証拠だけで逮捕できない狛木にボロを出させるためなのですが、それでも翡翠が好きになれなかったんですよね。
事件を解決した後は、後悔するような素振りも見せますが、それまでのあざとらしさが強すぎて、少し胸焼けしたような感覚を味わいました。
ラストはどんでん返しに驚かされる
とはいえ、探偵役の翡翠があまり好きになれない物語にも関わらず、ミステリーとしては驚きがあったので、一気読みしてしまいました。
先ほども書いたように、全三編で構成されていますが、どの物語も犯人目線で物語が展開していきます。
しかも、翡翠が推理をする前に、犯行の一部始終が明かされるので、物的証拠が見つからない状況で、翡翠がどうやって犯人を追い詰めるのか推理する楽しみが味わえます。
むしろ、推理小説を読んでも多くの読者が謎解きをせず、当てずっぽうで犯人を推理していることを作中で何度も翡翠が批判しているので、「きちんと自分の頭で考えてね」という作者の想いが伝わってきて、「翡翠の推理を推理してやるぞ!」という意欲が湧いてきたんですよね。
これから読む方は、ぜひ作者の挑戦を受け取って、自分の頭で考えて翡翠の謎解きを推理してください。
また、前作同様に、ラストはどんでん返しに驚かされるミステリーなので、気になった方は、ぜひ読んでみてください。
ちなみに、私は翡翠のことはあまり好きになれませんでしたが、驚きのあるミステリーは大好きなので、続編が出るのを楽しみにしています。

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