自分の意思や価値観を誰かに支配されていませんか?
もちろん、ある程度はまわりの影響を受けますが、『教誨』を読んで、意思や価値観を誰かに支配されてしまうと、次々と不幸が押し寄せてくることがわかりました。
特に、両親の影響は大きく、毒親の支配からはすぐにでも抜け出すべきですが、簡単には逃れられないのかもしれないと思えてきました。
『教誨』のおすすめポイントとあらすじ
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『教誨』の感想
自己肯定感が低いと、何をしても上手くいきません。
『教誨』に登場する死刑囚・三原響子も、自己肯定感が低く、次々と不幸が押し寄せてきました。
彼女は娘を心から愛していましたが、毒親に支配されており、またある出来事が重なったせいで、気づけば娘を殺していました。
もちろん、娘を殺した罪は響子にありますが、そこに至るまでの経緯を知ると、違う一面が浮かび上がってきます。
響子は、幼い頃から父親に「どうしてお前はなにもできないんだ」「俺に恥をかかせるな」「馬鹿、低脳」と言われ、何度も殴られてきました。
運動や勉強が苦手で、人付き合いも苦手だったので、父親が怒るのは自分が馬鹿だからだ、母親が困るのは自分が悪いからだと思い込んでいました。
一方で、旧習深い田舎町に住んでいたこともあり、自己肯定感が低い彼女は、幼い頃からいじめられ、大人になってからも変な男ばかりが寄ってきました。
こうして、ずっと誰かに蔑まれ、疎まれてきた響子でしたが、ようやく愛し愛される相手が見つかります。
その相手こそが娘でしたが、ある出来事が重なり、殺してしまいました。
このように、『教誨』は胸が張り裂けそうになるほど悲しい物語ですが、自己肯定感が低いと、次々と不幸が押し寄せてくることがわかります。
特に、親の影響は大きく、「悪いのは自分だ」という洗脳を解かないかぎり、幸せにはなれないことが痛いほど伝わってきました。
親から離れたところで、別の誰かが親の役割を演じるからです。
とはいえ、毒親の洗脳を解くのは簡単ではありませんが、『教誨』を読んで、自分のすべてを受け入れてくれる人と出会えるかどうかで、その後の人生は大きく変わるように思えてきました。
ある意味、運次第なところはありますが、それほど毒親の支配から逃れるのは難しいことなのかもしれません。
二人の少女を殺し、死刑を執行された女性が言い遺した、「約束は守ったよ、褒めて」という言葉に込められた真意に迫る物語に興味がある方におすすめの小説です。
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