傷ついたり、失敗することを極端に怖れていませんか?
私も怖れていましたが、青山美智子さんの小説『ただいま神様当番』を読んで、今すぐ新たな一歩を踏み出したくなりました。
他人と比べる必要なんてなく、本当にやりたいことを行動に移せば、未来は大きく変わると励まされる物語が描かれていたからです。
『ただいま神様当番』の情報

おすすめ度の理由
『ただいま神様当番』のあらすじ
OLの水原咲良は、楽しいことはいつでも自分の前を素通りしていくと嘆いていました。
彼氏からも振られ、合コンに行っても頭数合わせで、心の拠り所になっているアイドルグループのコンサートチケットは当たらず、ニューアルバムの初回限定盤でさえ手に入りませんでした。
そんな咲良が、いつも通勤に使っているバス停に着くと、欲しかったニューアルバムの初回限定盤が「おとしもの」という付箋つきで置かれているのを目撃します。
まわりに誰もいなかったこともあり、咲良はそのアルバムを家に持ち帰って堪能しましたが、次の日に目が覚めると、手首から肘にかけて大きく「神様当番」と書かれていました。
それだけでなく、見知らぬおじいさんが座っており、「お当番さん、みーつけた!」と言い出します。
そのおじいさんは自分のことを神様だと言い、「わしのこと、楽しませて」と言いました。そして、勾玉みたいな形になって、左の手のひらに入り込みました。
こうして、神様の願いを叶えるべく行動することになった咲良でしたが、突然、左手が勝手に動き出し、薬局でもらったちょっと派手だと思った口紅のサンプルを唇に塗ったり、バスに乗ると優先座席に座って寝たふりをするおじさんを引きずり降ろして、妊婦さんに席を譲ったりします。
さらに、「チョコビーズ・ピアスを作りませんか?」という駅前のカフェで開催されるワークショップのお知らせ記事が目に入ると、神様がやりたいと言い出して、いうことを聞かなくなりました。
咲良は、以前からハンドメイドに興味をもっていたものの、知らない人ばかりの中で一人で参加する勇気がありませんでしたが、思い切って申し込んでみたところ、合コンで一緒だった女性が参加しており…。という物語が楽しめる小説です。
『ただいま神様当番』の感想
この小説では、あらすじで紹介した物語を含めて、全部で5つの短編が楽しめます。
通勤や通学のために、毎朝同じバスに乗り合わせていたOLや小学生、高校生に大学非常勤講師、零細企業社長の5人が、落とし物として置かれていたものを自分のものにしたことで、神様当番になる物語が描かれていきます。
どの物語の主人公も、「これさえあれば幸せになれる」と思っていたものと関連するものを拾うことで神様当番になり、最後はその欲しかったものよりも大切なものを見つけていく姿が描かれていたので心が動かされました。
何かを手に入れたから幸せになれるわけではなく、どのような状況でも自分次第で楽しめるのだと励まされます。
たとえば、あらすじで紹介した物語では、咲良と同じワークショップに参加していた女性が、壊滅的に下手な作品を作ったにも関わらず、誰よりも楽しんでいました。
そんな女性の姿をみた咲良が、「私ってダメだなあ…」というと、次のように言われました。
「大げさかもしれないけれど、人生って、単に楽しいからやるって、それが一番の決め手だよ。意味があるとか、お金になるとかはその次でさ。自分自身に何かの取柄や才能があるかどうかもあまり関係なくて、この世をおもしろがれる力のほうがうんと大事だと思う。そんなふうに過ごしているうち、本当にやりたいことがわかってくるんじゃないかな」
他人と比べてランク付けする必要なんてなく、なんでも楽しんでみようという気持ちが湧いてきます。
他にも、リア充になりたいと願っていた高校生が、カッコつけすぎて彼女にフラれてしまい、会えるかどうかもわからないときに、花屋のお姉さんに次のように言われます。
「思い通りにならない恋にすったもんだするって、究極のリア充だよ。きれいなことしかない世界なんて不自然なんだから」
もちろん、恋愛だけではありません。仕事でも、勉強でも、スポーツでも、スマートにやることが幸せだとは限らないことに気づかせてくれます。
こうして、5人の主人公たちが、神様当番になり、強制的に新たな一歩を踏み出したことで、本当にやってみたかったことに気づき、世界が大きく変わる姿が描かれていたので、今すぐ新たな一歩を踏み出してみたくなりました。
失敗して傷ついても、それでも一歩前に踏み出してみようと励まされる小説です。
まとめ
今回は、青山美智子さんの小説『ただいま神様当番』のあらすじと感想を紹介してきました。
他人と比べる必要なんてなく、本当にやりたいことを行動に移せば、未来は大きく変わると励まされる物語が楽しめます。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
コメント